第十二話・フォースアイランドの決断
いよいよ動き始めるフォースアイランド。清二達はこれからどうなっていくのでしょうか?
2009年9月05日
愛媛県庁
大阪の非常事態宣言を受け、近隣の自治体は対策をとらなければならなかった。
松山市の中心街にひときは目を引く建築物。まるで、国会議事堂の上にドームを乗せたような建物に黒塗りのセダンが数台到着する。
この日、四国四県の知事、市長等が愛媛県庁に集められた。
集められた人々はその重厚なコンクリート建築の中へと入っていった。
各人が集まると、会議は直ぐに開始された。主な内容は一つだけ。"今後、どうするか"だ。
「いいですか? 大阪の次は四国がやられるんです。もう少し考えたらどうですか香川さん」と徳島県知事。
「それはあなたの県も同じでしょ徳島さん。そちらだって明石海峡大橋で繋がっているじゃないですか。しかも、大阪の直ぐ隣の兵庫県と!」
香川県知事は身を乗り出して反論した。
「愛媛県さんはどうなんですか? そちらだって"しまなみ海道"で繋がってるでしょ?」と徳島県知事。
「いやぁ、うちの所はつながっとる言っても広島県やけんね」
「そんな、いい加減な」と呆れる高知県知事。
彼らが話し合っているのは、本州四国横断ルートの事である。
現在、四国と本州を陸路で移動出来るルートが三つ存在した。
一つ目は、岡山県と香川県を瀬戸大橋で結ぶ"児島・坂出ルート"。二つ目は、兵庫県と徳島県を大鳴門橋と明石海峡大橋で結ぶ"神戸・鳴門ルート"。そして三つ目は、広島県と愛媛県をしまなみ海道で結ぶ"尾道・今治ルート"だ。
四国四県の中で、陸路で繋がっていないのは、太平洋に面した高知県だけであった。
「そりゃ、高知さんは良いですよ。陸路で本州と繋がっていない訳ですからね」と皮肉混じりに香川県知事が話した。
「みなさん、喧嘩はそれくらいにしましょう。今一番大事な事は、四国の今後です!」
知事達の喧嘩を仲裁したのは、松山市市長の中居分太郎であった。
彼は松山市市長であるが、愛媛県知事を勤めていた過去がある。
「中居市長、すみませんでした」と謝る愛媛県知事。
当然である。現愛媛県知事を推薦したのは中居だったからだ。
「四国は今、危機に瀕しています。ウイルスもさる事ながら、難民も受け入れなければならないでしょう」
「難民?」と意表を突かれ驚く徳島県知事。
中居は話を続けた。
「関西から、やってくる避難民ですよ。こちらで調べたところ、既に避難は始まっている様子です」
腕を組んで眉をはの時に曲げる知事達。
「政府は! 政府の対応はどうなってるんだ!」「ウイルス感染者が来たらどおするんだ!」他の市長らから質問が飛び交う。
「落ち着いてくださいみなさん」と徳島県知事。
中居は、ため息をついて残念そうに話した。
「政府はもはや機能していないでしょうね」
「どういう事だね」と徳島県知事。
中居市長は、席を立ちホワイトボードの前に立った。
「良いですか? 大阪が攻撃されたんですよ。それも自衛隊に!」とホワイトボードを叩く中居市長。
大阪が攻撃を受けた時、近隣の知事や市長等に一切説明が行われなかったのだ。自衛隊が大阪を攻撃する等と言う事は本来あってはいけない事だが、それが起きてしまった。つまり、政府は無能だと言う事なのだ。
「大阪がやられた以上、徳島だっていつ攻撃されるか解らないですよ!」と中村市長。
「そんな! じゃあどうすれば」と焦る徳島県知事。
中居は徳島県知事の方へ歩み寄り「封鎖しましょう」と答えた。
「封鎖?」と不思議そうな顔をする徳島県知事。
確かに、中居市長の意見は的確であった。陸路を遮断してしまえば難民もウイルスも防ぐ事が出来るからだ。しかし、中居は大鳴門橋を封鎖しろと言っているのだろうか。それとも、明石海峡大橋を封鎖しろと言う事なのだろうか。
口笛をきったのは香川県知事であった。
「中居市長、封鎖といっても大鳴門橋を封鎖するには時間がかかりますよ」
その通りである。橋を封鎖するとなれば管理公団だけで無く、近隣自治体や管理団体にも報告が必要である。そう簡単にはいかないのだ。しかし、中居市長の考えは他の知事や市長を凌駕するとてつもない考えであった。
「何も、大鳴門橋だけを封鎖するとは言っていないでしょう」
「どういう事だ」驚く徳島県知事。
「本州四国連絡橋をすべて閉鎖するんですよ」
唖然とする代表達。
橋を一つ封鎖するだけでも苦労すると言うのにこの男ときたら全部封鎖するときたもんだ。こんな暴案は現実的では無いのだ。
「橋を全部? 無茶ですよ」と、呆れる香川県知事。
しかし、中居の言う事は正しかった。このまま何もしないでいれば必ず被害が出る。それに、政府が無能な以上、自分の身は自分で守らなくてはいけないのだ。
数時間に及ぶ議論の結果、四国は陸路での往復を禁止すると言う結論に達した。
これは、事実上の鎖国と言って良いだろう。
そして更に、四国に駐留する自衛隊・海上保安庁の接収を決めた。
四国が鎖国を宣言すれば政府も黙ってはいないであろう事は想像がついた。大阪の様に攻撃される恐れもある為だ。
こうして、四国は独自の道を歩み出す事になったのだ。




