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『相談』

すみません。どうしても誰かに聞いて欲しくて仕方がなかったんです。でも、知り合いに話すこともできないし。


ここなら、匿名で話すことができると聞きました。私はあまり文章が得意ではないので、読みづらかったら申し訳ないです。


ちょうど一年前の出来事です。

私には弟が一人います。4歳離れた弟で、別にそんなに仲は良くなかったけど、仲が悪いというわけでもなくて。そんな関係の弟でした。


弟はその年の春に高校生になったばかりでした。受験勉強を頑張って、地元の公立高校に行きました。県内でも3位以内に入る学校で、本人もすごく喜んでました。


異変が起こったのは夏休みに入ってからです。

ある日突然、弟が部屋から出てこなくなりました。私とは一言も口を聞かず、親の言葉に耳を貸そうともしませんでした。何かあったのかと聞いても返答はありません。


ああ、すみません。この書き方だと私がその場に居たみたいですよね。私は大学があったので、まだ実家に帰省していませんでした。ただ、たまに弟とは連絡を取り合っていたので、それがぷつりと途切れてしまい、疑問に思って親に確認したことで分かりました。


流石に心配になりましたけど、私もテストがあったし、数日のうちに実家に帰るからその時でいいと思い、放置することにしたんです。


私が帰るまでの間、特に親や弟本人から連絡が来ることはありませんでした。私もテストに追われていたので、そのことを考える余裕もありませんでした。


やっとテストが終わり、夏休みだと思ってすぐに実家に帰りました。私の実家は少し田舎の方にあって、駅から家まで少し時間がかかるんですよね。バスもあるんですけど、重い荷物を持って遠回りして帰るのは少し億劫だったので、親に迎えを頼んでいました。


ちゃんと実家に帰る約束をした日に迎えに来るようにお願いしたはずでした。ちゃんと履歴を確認しても残っています。


でも、迎えは来ませんでした。もう一度、連絡してみたり、電話をかけてもみたのですが、どれ一つとして繋がらず。気がつけば結局、1時間近く駅で待っていました。


流石に日も暮れかかってきていたので、仕方なくバスで帰ることにしました。バスに乗り込み、スーツケースを抱えながら、迎えは要らない旨を伝えておきました。


バスはやや遅れて、実家近くのバス停に着きました。運転手さんも乗客もいい人達ばかりで、私が荷物を運ぶのに手こずって中々降りられないところに優しい言葉をかけてくれました。


バスが去り、実家の方に向かおうと思いました。その時、何気なくスマホを見たんですね。

流石に既読の一つくらいついているだろうと。


電話がかかってきていました。知らない番号で5回ほどかけてきたようです。私は普段からマナーモードにしているので、気がつかなかったのですが、まさかそんなにもかかってくるとは思っていませんでした。


まあ、一回なら間違い電話かと思いますけど、流石に同じ電話が何回もかかってきてますし。多分知り合いだろうと見当をつけて、私はその番号を確認しました。


携帯電話でした。でも、知っている番号ではありませんでした。


で、ここで私は失敗しました。その場で掛け直せば良かったんです。なのに、私はもうすぐ着くからそこで掛け直せばいいやと思ってしまったんですよね。まあ、普通に考えれば、あんなに荷物を持って、歩道で立ち往生していた方が良くないとは思いますけど。


15分程度かけて実家に到着しました。

やっぱり久しぶりの帰省なので、すごく懐かしい雰囲気がして、道中も楽しかったです。まあ、荷物は重かったですけどw


家の前には家族の車が二台とも停車していました。母と父両方のですね。私が実家にいた頃は父は大体8時くらいに帰ってきていたので、今日は早いなとは思いました。というか、だったら尚更、なんで迎えに来なかったんだと少しイラッとしました。


玄関の前に立ち、私は鍵を持っていないことに気がつきました。引っ越す前に実家に置いてきてしまっていたのです。


仕方なくインターホンのところに向かって、チャイムを鳴らしました。


誰も出ません。

もう一度鳴らしましたが、返事はありません。


私は困り、もしかすると玄関の鍵が開いているかもと、淡い期待にかけました。


玄関の前に戻り、優しく扉に手をかけました。すると、ゆっくりと扉が開きました。


家族の不用心に内心呆れつつも、ほっとして私は中に入りました。


部屋の中は電気が付いておらず、真っ暗でした。

流石にびっくりしましたよ。靴も一つも置いてないんですから。


私は呆気に取られて、外の方を振り向きました。別にちゃんと私の家です。知らない家ではありません。


どこか後ろめたさがあり、私はそっと玄関の扉を閉め、荷物を空いたスペースに置きました。靴を脱ぎ、きちんと揃えようと思いましたが、嫌な予感がして。すぐに履けるように外に向けて置いておきました。


廊下を歩き、居間につながる扉を開きました。ここも電気がついてませんでした。それどころかシャッターまで閉まっていて。


もちろん誰もいませんでした。

いや、親や弟はいるはずなんです。でも、いないと分かるくらい静まりかえってるんです。


私は弟に会うことにしました。もしかすると、親は出かけているだけかもしれない。だけど、弟が引きこもったなら、まだ部屋にいるだろう、そう思ったからです。


階段をゆっくり登り、2階に向かいました。家の階段は踊り場で曲がるようになっていて、1階から2階を直接見ることはできないんです。


ですから、登り切って初めて分かりました。2階が更に異様な光景になっていることを。


階段のすぐ近くに私の使っていた部屋があります。鍵もかからないはずなんですが、なぜか外付けの南京錠っていうんですかね。あれが3つほどかんぬきと共に取り付けられていました。


それだけでもびっくりしたんですが、ドアと壁の隙間にガムテープが貼られていました。空気の逃げ場もないくらいに徹底的に。


もう、びっくりしすぎて、混乱しました。状況が理解できなさすぎて、なんか適当な理由をつけて誤魔化しました。


私は一人でぶつぶつと呟いて、なんか、倉庫か何かに使ってるんだと言い聞かせました。


私の部屋の隣には弟の部屋があります。

彼の部屋も同じ状態でした。


ただ一つだけ。

小さな窓のようなものが取り付けられていました。多分中と外で、物資をやり取りをするためのものです。


あのー。何と言ったらいいんでしょう。もう言葉を失いましたよ。


だって意味がわからないんですもん。弟の部屋の隣にあった親の寝室と空き部屋がなくなって、壁ができてたんですよ。そっち側にトイレもあったのに行けなくなってましたし。


私、その場に座り込んじゃいました。

もう、立てなくなって。


その時、電話がかかってきたんです。

例の知らない番号です。


こんな場所で通話するのは嫌でしたけど、立ち上がる気力もなくて。恐る恐る、通話を許可したんです。


相手は弟でした。

ひどく焦っているみたいで、今どこにいる?とか、何で電話に出なかったとかを矢継ぎ早に聞いてきました。


私もパニックが移ったのか、回らない舌で、今家にいること、内装がおかしくなっていることなどを話しました。


弟は絶句したみたいに黙ったんですが、すぐに今すぐ家から出ろと、怒鳴るように言ってきました。


もちろん、私もそうするつもりでした。

こんな家に居られない。


でも、腰が抜けてしまって。

それでも頑張って階段の前まで来たんです。


何とか立たないと、早くこんな場所から逃げないと、と思って気を奮い立たせました。


そしたら、はい。

背後から足音がしたんです。全てを見回って、誰もいないのを確認したのに、ですよ?


しかも嫌な感じでした。

堂々と、じゃないんです。

絶対にこちらに悟られないようにこっそりと忍び足で近寄ってくるんです。


もう、パニックですよ。

背筋が凍りました。固まってしまって、私は一歩も動けないまま、背後から何者かが近づいてくるのを耐えていました。


それは私のすぐそばまで、近寄ってきました。

鼻音を立てて、何かを匂うようにし、ゆっくりと何かが首元に近づきました。


何を言われたかは覚えてません。

でも、吐息混じりの声でゆっくりと笑いながら、何かを私に言ってきました。


気がつけば私は階段を駆け下りてました。

もう、必死でした。


夢の中で追われるみたいに、全然足が動かないんです。それでも廊下に飛び出して、玄関まで辿り着きました。


私の荷物はそのままに置いてありましたが、回収する余裕なんてありません。


慌てて靴を履き、玄関の扉を開けようとしました。ただ押すだけで良かったんです。


なのに、鍵が閉まってました。

普通の鍵と例のかんぬき。


律儀に全部掛けてました。

私は冷や汗をかきながら、必死に鍵を外し始めました。幸いなことに、南京錠は付いておらず、かんぬきを外すだけで終わりました。


パニックのまま、扉を押し開け、外に飛び出しました。もう、必死に足を動かして。


家から少し離れたところで追っ手がいないか、パッと後ろを振り返ったんです。


そしたら、玄関のところにそいつがいました。

形は人間なんですけど、全身真っ黒で。


影みたいにぼんやりとしたものがそこに立っていました。そいつは手を振ってました。


その後のことは曖昧です。

とにかく走って逃げたことだけは覚えてます。


どこかで急いでやってきた弟に会って、弟と二人で母方の祖父母の家に身を寄せました。


弟に聞いた話によれば、ある日突然、朝起きたら、部屋から出られなくなったそうです。


経緯は省きますが、何とか弟はそこから脱出し、既に祖父母の家に居たそうです。ただ、携帯などを家に置いてきてしまったそうで。


ちなみに私にかかってきた電話は祖母の携帯からかけたものらしいです。


ああ、言うのを忘れてました。


父と母は現在、失踪中です。

未だに見つかっておりません。


でも、もういいんです。

どうせ見つかるわけがないので。


お付き合いいただきありがとうございました。

長文ですみませんでした。

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