↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

『ドライブ』

ドライブってのはね。走ってなんぼなんですよ。当たり前ですけど。


車って大抵の場合は手段じゃないですか。移動手段。昔の人は良い足を生み出したものです。


まあ、街中を走るのもいいですよ。多くの人は走ることよりも目的地、せいぜい同乗者との時間を過ごすことが楽しみでしょうけど。


でも広い道路を気持ちよく走れるのって最高じゃないですか。歩行者とか、飛び出してくる頭おかしい車のことを心配しなくていいし。


まっすぐの道は好きですね。車線変更をしないで、目線は前に、都度アクセルを踏む。


何の話かって? 

嫌だなあ、ドライブの話ですよ。


ドライブにまつわる怪談って沢山ありますよね。例えば知らない人を乗せるとか、突然見知らぬところに迷い込むとか、あとは車と同じスピードで追いかけてくる怪異とか。


私、思うんですよね。

あれって、車というある種の隔離空間に対するもろもろの恐怖なんじゃないかって。


車は薄いですけど壁がありますし、それそのものが人よりも速いスピードで走れますし。ある意味で安全な場所であり、守ってくれる相棒なわけですよ。


でも、私たちって安全が破壊された時に恐怖を感じません? 絶対的な安全地帯が破壊された時ほど、私たちは恐怖を覚える。


あー、嫌ですね、それ。車がガソリン切れになったり、タイヤがパンクしたり。車から降りざるを得ないですもんね。しかも、大事な相棒をおいて、逃げるわけです。


車も意外と個人情報が詰まってますからね。痕跡を追ってくる相手に残すことになります。


ん、どうされました?

寒いんですか?


温かい飲み物でも飲まれます?

そうですよね。最近はだんだんと肌寒くなってきて。冬も近いなって感じます。


でも夏みたいな時間帯もあって。服装に困りますよね。重ね着するしかないんでしょうね。


あー、続きですね。分かりました。


よく怖い話を見てて思うんですけど、今時見知らぬ人間を乗せるものですかね。ほら、一人で立っている子供がいて、心配になって声をかけた、みたいなのあるじゃないですか。


どっちが不審者なんでしょうね。

考えてもみてくださいよ。


あなたが子供の立場だったとして、親か友達を待っているとするじゃないですか。


たまたま、待っている人が遅くなって。でも連絡手段がないから、あなたには分からなくて。一人で待ってて怖いなー、心細いなーと思っている時に突然、見知らぬナンバーの車かトラックが停まるわけです。


窓がゆっくりと開き、中の男か女が言ってくるわけです。

「こんなところでどうしたの?」


そりゃあ、見知らぬ人に尋ねられたら、咄嗟に反応なんてできないわけですよ。当然、あなたは無視をすることにします。


そしたら、そいつ何をしてくると思います?


ドアをガチャっと開けて、降りてくるんです。

優しげな声を出しながら一歩ずつ近づいてくるんです。悪い時は走ってきます。


で、あなたの肩を掴んで揺さぶるんです。


「君、迷子か? 大丈夫か? 親は?」

なんて、息つく暇もなく。


あなたは困り果て、笑顔を見せるんです。

大丈夫、待ってるだけですって。


運転手はね、叫び出すんです。

そっから一目散に走って、運転席に駆け込み、逃げ出すんですよ。


何の話だ、って?

だから、ドライブにまつわる怪談ですって。


随分と顔色が悪いですね。

体調は大丈夫ですか?


あ、そう。続けますね。


私、どうやったらドライブの怪談を一番怖いものにできるか考えてたんですよ。そしたら気がついたわけです。全部やればいいんだと。


場所は相手の領域にします。こうすることで、車から降りられなくなるので。


高速で走ってくる怪異を追加します。よくある感じですけど、最初は普通に会話できているとなお、いいですね。


車は途中で動かなくします。安全地帯を奪い取るわけです。


それから、途中で現実に接続させるんです。そうしたら怪異がその世界だけのものじゃなくて、あなたの身近まで追ってこれますから。


あー、素晴らしいですね。

これを語れたら、相手は震え上がって、しばらく飲み食いすら出来なくなりますよ。


そうそう。手が震えちゃってね。

歯をガチガチいわせて。



……ねえ、何であの時話しかけたんですか?


私はただ友達を待ってるだけだったんです。

なのにあなたが突然話しかけてきたんですよ。


怖かったんです。純粋に。


あなたは私を見て、叫びましたよね。

それで車に急いで逃げ込んだ。


あなたはアクセルをめいいっぱいに踏み込んで、道路を突っ切ろうとした。


あそこは一本道ですから。

普通ならあなたは正しいですよ。


ねえ。忠告されませんでした?

森の入り口にいる、子供に話しかけるなって。


私、怖かったんです。

すごく。


あなたはすごく震えていて。

怒ってもいましたね。


私に呼びかけたくせに。

自分から話しかけたくせに。


安心してください。

車には手を触れてませんよ。もう二度と回収はできないと思いますけど。


あはは。

相棒に見捨てられて。

あなたは自分の足で走らざるを得なかった。


何キロあったんでしょうね。

でもあなたは森を抜けることができた。


そこから近くのコンビニに駆け込んで。

タクシーを拾いましたね。


ダメですよ。

逃げられたなんて、思うのは。


安心するのは早いですよ。子供にだけ警戒すればいいと思ってましたよね?


あれは子供の怪異だと。

違いますよ。


あなたが子供に見えただけなんです。

私はあなたが呼び寄せたんですよ。


ねえ、やっとですよ。


見つけました。


もう逃げられませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。