スラ◯ムにマダ◯テはどう思う?③
「サブレー」
「ん」
「サブレー」
「誰だ、俺の眠りを妨げるのは」
「俺だ」
「マサシか」
「吸いにいこ」
「俺はタバコを吸わん」
「ハイチュウ食ってろよ」
「お前、タバコあるのか?」
「タカが箱ごとくれた」
「マルメンじゃないか」
「マルメンだ」
「タカは『勃ちが悪くなる』とか言って、メンソールは吸わないはずだがなぜ持ってるんだ」
「生意気なガキがいたから没収したらしい」
「いわく付きのタバコをもらうなよ」
「俺はタバコならなんでもいいんだよ!」
「学校が終わるまで待てんのか」
「待てない」
「寝ておけばすぐだろう」
「そわそわして寝れないんだよ!喫煙所で話そうぜ」
「まったく。しょーがないやつだな」
「行こうぜ」
「タカは?」
「起きねえ」
「田中は?」
「起きねえ」
「ちっ。俺も寝たふりしておけば良かった」
「そんなこと言わずに行こーぜ!」
「うむ」
マサシはそわそわしていたようだ。
俺は友達のブスな彼女には興味がなかった。
ハイチュウなら教室で食えるしな。
しかしまぁ、野良犬が腹を空かせていたから餌をやる。
くらいの感覚で、マサシについていった。
それがいけなかった。
……。
◇
うちの高校には、使われていない教室が一つあった。
扉には鍵がかかっていて、普通なら入れない。
だが、廊下側の足元にある小窓の一つだけ、鍵が壊れていた。
そこから手を突っ込めば、中から扉を開けられる。
誰が最初に発見したのかは知らない。
いつの間にか不良学生たちの溜まり場になっていた。
通称、『喫煙所』。
名前の通り、中ではよくタバコが吸われていた。
タバコを吸う場所としては屋上も人気だったのだが、喫煙所には漫画やゲームも持ち込まれていて、暇つぶしにはちょうど良かった。
いずれにせよ、俺はタバコを吸わない。
臭いし、金もかかる。
俺はただ漫画を読みに行っていただけだ。
ハイチュウなら教室でも食える。
一人じゃ絶対に行かない場所だ。
まったくマサシはしょーもないやつだ。
一人じゃ喫煙所にも来れないのにタバコなんか吸いやがって。
なんてことを考えていたら、喫煙所が見えてきた。
扉の前まで来たところで、中から声が聞こえた。
先客がいるらしい。
この空き教室は俺たち専用の喫煙所ではない。
全校生徒の共有施設だ。
中には気の合わない奴らもいる。
そんな奴らは普段ならタカと田中が威嚇して追い出すのだが、あいにく今日は俺とマサシだ。
「うわー、誰かいるじゃん」
「戻るか?」
「んー」
「俺は別に戻ってもいいんだが」
「いや、一本だけ吸おう」
「めんどうだな」
「頼む!」
「しかたあるまい」
扉に手をかけようとしたところで、中から笑い声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
俺たちとは別のグループの連中だ。
大した奴らではない。
田中やタカには妙に大人しいくせに、マサシみたいな奴には強気になる。
そういう雑魚だった。
なんだか不愉快な話をしている。
しょーもないことばかりしている連中だ。
「うわぁ、高橋かー」
「高橋はキモいな。同じ空間にいるとバカがうつる」
「そうだね」
「屋上にでも行こうじゃないか」
「そっちでいいか」
今日は屋上へ行こう。
屋上の扉にも鍵がかかっていたのだが、誰かがぶち壊してから直してないみたいだ。
田舎の学校の屋上から見る景色は意外と悪くない。
俺は屋上でボケっとするのも好きだった。
進路を変更し、喫煙所を通り過ぎようとする。
「お前、あいつとヤッた!?」
「あぁ」
高橋が笑っている。
年頃の男子というのはヤッタヤラナイの話が出たらとにかく聞くものだ。
だが、今回はそのくだらない好奇心が裏目に出てしまった。
……クソ。
今、話題の中心に上がっているのはマサシの彼女の名前だった。
マサシの動きが止まる。
「マジで!?あのバカみたいな乳揉んだの?」
中からバカの大きな声が聞こえた。
「あぁ」
高橋が笑っている。
「成り行きでな。最初はそんな乗り気じゃなかったみたいだけど、結局は向こうも楽しんでたよ」
「アレってマサシと付き合ってたんじゃねーの?」
「知らねーよ。あんな雑魚」
「マサシは雑魚でも、タカとか田中とか、サブレはやばいだろ」
「何?ビビってんの?」
「いや、ビビるだろ。あんな喧嘩ばっかしてるバカ共と関わりたくねーよ」
「マジでお前何やってんの?俺たちを巻き込むなよ」
「うるせーなあ。せっかく動画見せてやろうと思ったのによ」
「まじ?」
「もう見せねーよ」
あぁ。
この感覚はやばい。
後頭部から背中にかけて、変な汗が出てきた。
体温が下がってきている気がする。
視界がチカチカしてくる。
血の気が引くっていうのかな?
頭に血が昇っているというのかな?
これはマサシの感覚だ。
俺が勝手に作り出したマサシの感情が流れ込んでくる。
何があったのかはわからない。
あのブスが自分の意思で高橋と寝たのか。
嫌がっていたのか。
そいつの話がどこまで本当なのか。
俺には何もわからない。
ただ一つだけ知っていた。
マサシがあのブスを大事にしていたことだ。
三匹の犬と同じくらい。
俺は半分意識を失いかけていた。
そんなことよりマサシは!?
隣を見る。
マサシはいなかった。
バンッ!
大きな音がした。
「おい!」
マサシが喫煙所のボロい扉を蹴り破っていた。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。




