酔っ払い小話「マッチングアプリ」
「美咲、大学入ったら彼氏作るんでしょ?」
「そんなのまだわかんないよ」
「じゃあ一個だけ覚えときな」
「なに?」
「良い男は、婚活市場に出ない」
「……どういうこと?」
「そのまま。顔が良くて、性格良くて、ちゃんと働いて、女遊びもしなくて、結婚願望もある男」
「理想じゃん」
「そういう男はね、三十歳になってからマッチングアプリに『初めまして!真剣なお付き合いを希望しています!』なんて書かないの」
「なんで?」
「その前に誰かが捕まえるから」
「捕まえるって」
「大学、職場、友達の紹介。二十代前半から周囲の女が放っておかない」
「じゃあマッチングアプリに良い人はいないの?」
「いるよ。そりゃいる」
「いるんじゃん」
「でも考えてみなさい。顔良し、性格良し、収入良し、結婚願望あり。そんな男が三十二歳まで完全フリーで残ってたら、まず『なんで?』って思うでしょ」
「事故物件みたいに言わないでよ」
「中古マンションだって、立地と築年数だけ見て買わないでしょ」
「男の人を不動産にたとえないでよ」
「だから大学で見つけるの」
「え?」
「学生のうちは、将来良い男になる素材が市場に並ぶ前だから」
「素材」
「今はただのテニス馬鹿でも、十年後には立派な会社員かもしれない」
「なるほど……」
「逆に今だけ格好いい男が、十年後どうなってるかは知らない」
「どうやって見分けるの?」
「知らない」
「知らないの!?」
「分かったら私が苦労してないわよ」
「説得力なくなったんだけど」
「でも、見るところくらいはあるでしょ。友達がいるとか、店員さんに横柄じゃないとか、お金にだらしなくないとか」
「顔は?」
「見る」
「見るんだ」
「当たり前でしょ」
「お姉ちゃん面食いだもんね」
「美咲にだけは言われたくない」
「私はそんなことないよ」
「そう思ってるの、美咲だけだから」
「……」
「とにかく。大学四年間、ぼーっとしてたら一瞬よ」
「まだ私、高校生なんだけど」
「だから今言ってるの」
「彼氏もできたことないのに」
「だから今言ってるの」
「早くない?」
「遅くなってから言っても遅いでしょ」
「……それはそうかも」
「大学には男なんていくらでもいるんだから、ちゃんと見なさい」
「わかった」
「何が?」
「入学したら、生涯の伴侶を探すね!」
「そこまで言ってない」
「でも良い男は早い者勝ちなんでしょ?」
「そんな話もしてない」
「大学で捕まえろって言ったじゃん」
「言ったけど」
「じゃあ頑張る!」
「……なんか変なところだけ素直なのよね、あんた」
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
【酔っ払い小話は箸休めとして楽しんでください。本編とはあまり関係ないことを書きます。】




