酔っ払い小話「喧嘩」
「遅い」
「ごめんって」
「何分遅れたと思ってるの?」
「二十分」
「三十七分」
「細かく覚えてんなあ」
「待たされた側は覚えてるのよ」
「電車ちょっと遅れててさ」
「じゃあ連絡すればいいでしょ」
「しようと思ったんだけど」
「思っただけ?」
「いや、その」
「スマホ持ってるよね?」
「持ってる」
「LINE使えるよね?」
「使える」
「私の連絡先知ってるよね?」
「知ってる」
「じゃあ何で連絡しなかったの?」
「……なんか、もうすぐ着くし良いかなって」
「三十七分のどこが『もうすぐ』なの?」
「最初はそんな遅れると思ってなかったんだよ」
「途中で気づくでしょ」
「気づいた」
「その時連絡すればいいでしょ」
「……はい」
「あと、電車遅れてたって言ったよね」
「うん」
「何分?」
「え?」
「何分遅延してたの?」
「……五分くらい」
「残り三十二分は?」
「……家出るの遅れました」
「最初からそう言いなさいよ」
「はい」
「なんで家出るの遅れたの?」
「寝坊」
「今日十二時待ち合わせだけど」
「寝坊」
「何時に起きたの?」
「十一時十五分」
「間に合うでしょ」
「シャワー浴びてた」
「何分?」
「二十分くらい」
「長い」
「髪セットしてた」
「誰に見せるため?」
「恵美子」
「じゃあ遅刻すんな」
「はい」
「そもそも昨日何時に寝たの?」
「三時」
「なんで?」
「ゲーム」
「……」
「いや、昨日イベント最終日で」
「へえ」
「限定報酬が」
「へえ」
「……」
「私とのデートよりゲームの限定報酬の方が大事だったってこと?」
「そういう話じゃないだろ」
「じゃあどういう話?」
「いや、別に恵美子を軽く見たわけじゃなくて」
「結果として軽く見てるじゃない」
「だから違うって」
「何が違うの?」
「その、俺の中では別の話というか」
「別じゃないでしょ」
「ゲームやって夜更かしして、寝坊して、遅刻して、連絡もしなかった。全部繋がってるじゃない」
「……」
「何か間違ってる?」
「間違ってない」
「でしょ?」
「……ごめん」
「何で謝るの?」
「え?」
「今、何に対して謝ったの?」
「遅刻したこと」
「遅刻したことの何が悪かったと思ってるの?」
「待たせたこと」
「それだけ?」
「連絡しなかったこと」
「他には?」
「……ゲームして夜更かししたこと」
「ゲームしたこと自体は別に悪くないでしょ」
「じゃあ何が悪いんだよ」
「自分で考えてよ!」
「考えてるよ!」
「考えてたら今そんな答えにならないでしょ!」
「じゃあ何て言えばいいんだよ!」
「何て言えばいいかじゃないの!」
「じゃあどうすりゃいいんだよ!」
「だからそれを話してるんでしょ!」
「……」
「……」
「ごめん……」
「だから何で謝るのよ!!」
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
【酔っ払い小話は箸休めとして楽しんでください。本編とはあまり関係ないことを書きます。】




