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酔っ払い小話「化け物」


ピコン



ピコン



ピコン



「小野ちゃん」


「ん?」


「めっちゃLINE来てるぞ」


「いつもだよ」


「すごいな」


「サブレはそんなにLINE来ないの?」


「流石にここまでは来ないな」


「そうなんだ。モテそうなのに」


「モテるはずなんだが、ここまではなかなか……」


「やっぱり特殊な状況なんだ」


ピコン


「マメな営業LINEをしているキャバ嬢くらいじゃないか?この水準は」


「あー。普通は好きでもない人にそんな返事しないらしいね」


「そんなこともないと思うんだが」


「そうなの?」


ピコン


「とはいえ、可愛い子から返事が来たら浮かれてしまう童貞が多いのも事実ではある」


「そうなんだ」


「俺だって可愛い子から返事が来たら浮かれてしまうこともある」


「サブレも?」


「男なんてみんな一緒だ」


「そうかな」


「サブレも返事がこない女子に毎日メッセージ送ったりするの?」


「え?」


「?」


「そ、それは、しないかな」


「そうなんだ」


「返事しなくても来るのか?」


「うん」


「なんてくるんだ?」


「『今日暇?』って」


「なんて返すんだ?」


「返さないよ」


「そしたら?」


ピコン


「ほら」


「うわ……」


「BOTじゃないのか?」


「一応人間みたい」


「危ない目にはあってないか?」


「あー」


「心当たりがあるのか」


「リプトンにくる前、いくつか新歓に行ったんだけど」


「ほう」


「毎回ついてくる友人Aがいて」


「おお、愛だな」


「サブカル系サークルの新歓に行ったんだけどさ」


「なんてサークルだ?」


「ジャパンサブカルチャー研究会」


「俺も行ったぞ」


「え?」


「姫がいるサークルだったな」


ピコン


「あぁ……」


「なんだ?」


「なんでもない」


「四畳半神◯大系の話をしたんだが、あまり人気のアニメではなかったらしい」


「四畳半神◯大系が問題だったのだろうか」


「まあいい。続けてくれ」


「飲みのテーブルで周りがチェックシャツの男しかいなかったんだけど」


「みんなチェックシャツを着ていたな」


「帰り道に友人Aが怒り出した」


「なんで?」


「『男しかいない席に座りやがって』って」


「姫以外は男だったじゃないか」


「そうなんだよね」


ピコン


「そんで?」


「『小野さんはもっと純粋だと思ってた』」


「おぉ……」


「『処女なの?』」


「セクハラじゃないか」


「『ただのビッチじゃん』」


「えぇ……」


「『じゃあホテル行こうよ』」


ピコン


「もはや女性を誘うマナー違反どころの話ではなくなってきたな」


「『俺以外とは行くのに!?』」


「なるほど……そいつは童貞病のさらに向こう側の生き物みたいだ」


「さらに向こう側?」


「処女厨だ」


「処女厨……」


「俺にも救えない者だ」


「サブレでも救えないんだ」


「あぁ。俺は所詮、料理が少しうまいだけの大学生だ」


「処女厨って処女が好きな人のことだよね?」


「大枠はな」


「大枠は?」


「処女以外は人間ではないと思っている化け物だ」


「それは化け物だね」


「小野ちゃんは……化け物に狙われやすいみたいだな……」


「そうみたい」


ピコン


「この着信音は化け物の呻き声と言ったところか……」


「サブレ」


「なんだ?」


「『男なんてみんな一緒だ』」


「……」


「そうなの?」


「すまん。俺が間違っていた」


「そうだよね」


「厳密には間違っていないんだが」


「そうなの?」


「世の中には、男と女と化け物がいる」


「あぁ」


「問題は、その化け物が人間の形をしているということだな」


「どうしよう」


ピコン


「小野ちゃん、この化け物たちと連絡を取る予定はあるのか?」


「学部が一緒のやつ以外はないかな」


「そしたら、ブロックしてしまえばいいんじゃないか?」


「ブロック?」


「本来だったら逆上とかも怖いが、現時点で返事もしていないし既読もつけていないわけだから、変わらんだろう」


「そうなんだ」


ピコン


「ちょっとスマホを貸してもらってもいいか?」


「はい」


「メッセージを開いてもいいか?」


「いいよ」


「失礼する。こうして、こうして、こうだ」


「ほう」


「これで、向こうからはメッセージを送れていても、こっちには届かなくなった」


「おおお!こんな便利な機能があったとは」


「とりあえずこれで化け物の鳴き声を聞かずに済む」


「すごい」


ピコン


「……後の設定は自分でできるな?」


「うん」


「それならいい」


「ありがと」


「うむ」


「小野ちゃん」


「ん?」


「自分から化け物の群れに突っ込むようなことはするなよ?」


「しないと思う」


「そうか」


「サブレは化け物に狙われないの?」


「その話は長くなるぞ……」


「おお」


「みんなを集めよう」


そうしてサブレの語り出した『2人の多重人格の女には合わせて11人の人格がいた』話は、私の知っている化け物のレベルを遥かに超えていた。


化け物には近寄らないほうがいい。


ピコン


「サブレ」


ピコン


「ん?」


ピコン


「サブレのスマホから化け物の鳴き声が聞こえるよ」


ピコン


「……ブロック機能も無敵ではないみたいだな」


ピコン



ピコン



ピコン





※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。



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