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これは私の"意思"である③

宴会場に戻ると、サブレは美咲ちゃんの卓に呼ばれて行った。


美咲ちゃんはサブレが大好きだし、サブレも美咲ちゃんが大好きだ。


……。


少し経ってまたそちらを見てみる。


いつも通りヘラヘラしているが、少し落ち込んでいるようではある。


まぁ、別に私がどうこうする必要はないだろう。


自分のことは自分で解決できる男だ。


美咲ちゃんだって一緒にいる。


ただ、一つ問題がある。


私は今日なんの活躍もしていないということだ。


バカな一年の戯言を上手く流すことすらできなかった。


その結果、貴重な盛り上げ役を外へ行かせ、


その後の場を盛り上げる時でさえ役には立たなかった。


それは流石にいただけない。


ふむ。


まだ、私にだってできることの一つや二つはあるはずだ。


私のせいで失われた戦力を回復させるくらいはできるだろう。


このバカとは少なくとも一年はつるんできた。


真帆さんやおちんちん侍タカシの実物にだって会ったことがある。


必要なのはジョッキとピッチャー。


それだけだ。


「……そうなんだー!ウケんね」


「だろ」


「先輩ってチャラいですよね」


「チャラいぞ!ほら、耳!ジャラジャラだ!」


「ウケるー」


「ん?」


ちょっと疲れた顔をして、雑なフリに雑な返しをしている柴犬のジョッキに無言でビールを注ぐ。


「小野ちゃん?」


なみなみと。


あふれないギリギリ。


「おおーっとっと。チョモランマだ!」


バカの目に少し光が戻った。


嬉しそうにチョモランマを見つめるサブレ。


その目は自然と私のジョッキに向かう。


そこにあるのは。


ビールが並々に注がれた大ジョッキ。


バカと目があう。


「大丈夫。私もチョモランマだ!!」


普段動かさない頬の筋肉を全力で引き上げて笑ってやった。


「小野ちゃん!」


「はっはっは!飲もうサブレ!」


先ほどまで、目立たない場所にいたチビ女が突然出したチョモランマに驚く新入生たち。


『待て』が我慢できなくなっている柴犬。


「チョモランマ!」


「チョモランマ!」


二つのチョモランマをぶつけ、一気に飲み干す。


「くはー!やるなあ小野ちゃん!」


「んまい!」


ニコニコしている美咲ちゃん。


「それはまだ早い!」


って顔でこっちを見ている田村ちゃん。


自分たちもチョモランマしたくなっている先輩達。


すると、新入生達も。


「なんですかー!チョモランマって!」


「チョモランマというのは……」


チョモランマの起源について熱弁するサブレ。


こいつが元気に何かをすると、どんなくだらないことでも自然と盛り上がる。


卑怯なやつだ。


……柴犬め。


こっちはと言うと、


「先輩、めっちゃ飲むんですね!」


「うむっ!」


「お酒好きなんですか?」


「なんでも飲むよー」


「今度連れてってくださいよ!」


「任せて任せて」


「日本酒以外ならなんでも飲めます!」


「日本酒嫌いなの?」


「イマイチです。なんか発酵したパンみたいな味で……」


「それは美味しい日本酒を飲んだことがないだけかもね」


「そうなんですか」


ふと、ジャラジャラ音を鳴らす耳を見る。


いつものバカに戻っていた。


先輩達がこっちを見て笑っている。


……ふむ。


義理は果たせたようだ。







※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。


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