渾身のモテ講座①
あれから隆史さんは、サークルに全く来なくなった。
サブレとはよく遊んでいるらしい。
何をしているんだか。
……まったく。
◇
私たちは二年生になった。
サブレは何故か坊主頭だ。
意味が分からない。
「なんで?」
新学期、最初の練習で聞くと、サブレは短く刈られた自分の頭を撫でた。
「去年、チャラく見えないように黒染めしてきたのにダメだったからな。今年は坊主にしてみた」
「何が?」
「新歓。美咲ちゃんに怖いって言われただろ」
「ピアスは?」
「あるよ」
「外せば?」
「それは話が変わってくるだろう」
「そうなの?」
左耳には相変わらず三つ並んでいる。
茶色い坊主。
三連ピアス。
顔だけは無駄にいい。
服装は別に派手でもない。
むしろ毎回、どこにでも売っていそうなTシャツやパーカーを着ている。
ゲームで言ったら無課金の初期アバターに、顔とピアスだけ課金したような男である。
「どうだ?今年はいけそうか?」
「何が?」
「新入生に怖がられない」
「無理じゃない?」
「なんでだよ!」
髪型の問題ではないと思う。
いや。
ピアスを外したところで、今度は違う何かがこいつをちゃらくするのだろう。
このサークルには、無駄に顔の良いアフロと、無駄に顔の良いピアスの坊主がいた。
新入生には気の毒な話である。
◇
リプトンテニスクラブの新歓は、四月いっぱいから五月の連休あたりまで続く。
私たちが入ったのは、そのかなり終盤だったみたいだ。
そのため私は去年まで知らなかったのだが、リプトンは新歓期だけ、随分とまともなサークルに擬態する。
テニスをする。
新入生に優しくする。
飲み会では静かに話す。
無理に酒を飲ませない。
下ネタも控える。
どんちゃん卓も存在しない。
初めて参加した一年生からすれば、明るくて、テニスもできて、飲み会も程々で、先輩も優しい。
随分と健全なサークルに見えるらしい。
詐欺である。
去年、私やカズヤ、サブレが練習会に参加した頃には、その仮面が剥がれ始めていた。
だから私は、新歓というものはブルーシートの上でぬるいビールを飲み、アフロが服を脱ぎ、誰かが吐くものだと思っていた。
違った。
あれはリプトンだった。
新歓ではない。
今年の新入生たちは、何も知らずに楽しそうにしている。
可哀想に。
もっとも、最初から全部見せれば誰も入らないので、合理的ではある。
来る者は大体受け入れる。
ただし、来る前に逃げられては困る。




