酔っ払い小話「スポンサー」
「いやー、今年の新歓もなかなか盛り上がったな」
「4月に吐くやつがいるとはね」
「小野ちゃんも今年はちゃんとゲロ掃除してたな」
「成長だよ」
「ヒロには期待したいところだな」
「大物になるといいね♪」
「アフロ先輩、小野ちゃんの意志を引き継ぐ者だからな」
「最悪の世代だね♪」
「美咲ちゃんも成長したな」
「最近はアプリで週刊誌の方を追ってるよ♪」
「えらいぞ」
「よしよししてくれる?」
「今度な」
「ふんふん」
「相変わらず『リプトン』はしょーもねーな!」
「そのしょーもねーサークルで『後輩を食い散らかそうとしていた男』がよく言ったものだな」
「お前はいつも人に文句を言いながらハーレムを作るからタチ悪いよな〜」
「ふっ。なんのことやら」
「なんもないよ」
「なんもないよ♪」
「これに関してはタカシさんが正しいだろ」
「ふっ。童貞には仲良しの男女は全ていやらしく見えてしまうようだな」
「クソがっ!」
「そろそろあれやろうぜ」
「あれ?」
「ポーカー」
「あぁ」
「サブレ、最近は隆史さんとばっか遊んでると思ったらこれか」
「ポーカーはなかなか奥が深くて面白いぞ」
「テキサスホールデムだよな?」
「ルールは覚えてきたな?」
「何回かネットで遊んできたよ♪」
「さすが美咲ちゃんだな」
「私はいつでも全力だもん」
「えらい」
「よしよし?」
「今度な」
「ふんふん」
◇【ポーカー開始】
「タカシが親か」
「おう」
小野ちゃんがSBの$100、カズヤがBBの$200を出す。
「フォールド」
美咲ちゃんが早々にカードを伏せる。
「フォールド」
サブレもおりた。
俺の手札は……。
『♠A』『♠Q』
「$600」
こんなもんか。
「コール」
小野ちゃんが乗ってきた。
「俺もコール」
「カズヤ、お前さっきからほとんど参加してないか?」
「参加しないと勝てないだろ」
「降りないと負けるぞ」
「うるせえ」
カズヤも$400を追加する。
俺、小野ちゃん、カズヤ。
三人でフロップへ。
【フロップ】
『♣Q』『♦7』『♠2』
「チェック」
「チェック」
「$1,200」
なかなか良い。
「コール」
「コール」
「ついてくるなあ」
「さすがにね」
「さすがにな」
【ターン】
『♣Q』『♦7』『♠2』『♣9』
「チェック」
小野ちゃんがテーブルを軽く叩く。
「$2,500」
カズヤがベットしているが……。
「お?」
「なんすか?」
「いや?」
「コール」
「私も」
「コール」
「小野ちゃんも来るのか……」
「うん」
【リバー】
『♣Q』『♦7』『♠2』『♣9』『♦A』
「チェック」
「……」
カズヤが自分のチップを弄る。
「$4,000」
「おお」
「カズヤ、大きく出たね」
「まあな」
ンンンー。
これはブラフだよな。
「コール」
「……」
小野ちゃんの手が止まる。
場のカードを見て、カズヤを見て、最後に俺を見る。
「んーーー」
「小野ちゃん?」
「フォールド」
手札を伏せる。
「硬いねえ」
「嫌な感じが……」
「じゃあ、見せるか」
『♠A』『♠Q』
「ツーペア」
「うわ」
「カズヤは?」
「……」
「早く出せよ」
「……」
『♣8』『♣7』
「セブンのワンペア」
「カズヤ……それで$4,000打ったのか?」
「フラッシュが来る予定だったんだよ!」
「もうリバー終わってるだろ!」
「だからブラフしたんだよ!」
「ギャハハハ!残念だったな!」
カッカッカ!甘い甘い!
「小野ちゃんは?」
「キングとクイーン」
『♥K』『♥Q』
「おー、これで降りれたのか」
「エース出たし、隆史さんがコールしたから」
「やるじゃん」
「見せなくてよかったんだぞ」
「もう終わったからいいの」
「カズヤ」
「なんスカ」
「小野ちゃんを見習え」
「ブラフしないポーカーなんてつまんねえっすよ!」
「童貞はポーカーでも先走り汁を垂れ流すのだな」
「カズヤはまずブラフじゃない時に勝たないとな!」
「ぐぬぬぬ」
◇
……。
カズヤは相変わらずほとんどのゲームに参加している。
勝ったり負けたりを繰り返しているが、順調にチップは減っていた。
サブレは……まあ、悪くない。
俺ほどではないが。
「タカシ、何を見ていやがる」
「いや、別に見ていないが」
「チンチンみたいな顔しやがって」
「してねえよ!」
美咲ちゃんはよくわからんが、妙なところで勝っている。
「ふんふん♪」
本人も楽しそうなのでいいだろう。
そして――。
「小野ちゃん、だいぶ減ったな」
「減りましたね」
最初に$20,000あったチップは、もう$11,000ほどまで減っている。
無茶な勝負をしているわけではない。
むしろ逆だ。
弱ければ降りる。
強ければ乗る。
わかりやすい。
わかりやすいのだが……。
「私のカード弱くない?」
「それがポーカーだ」
「困りものだね」
そんな小野ちゃんがカードを覗き込む。
「……」
お。
珍しく目が止まった。
だが、俺の手札は――。
『♠A』『♥A』
……。
カッカッカ。
「$600」
「コール」
「レイズ。$1,800」
小野ちゃんからレイズ。
これは何か持ってるな。
「フォールド♪」
「フォールド」
「コール」
まだ釣り上げる必要はない。
勝手に向こうから乗ってきてくれるわけだからな。
「……コール」
「カズヤ?」
「なんすか」
「来るのか?」
「$1,200くらい出しますよ!」
「タカシ。かつての自分を思い出せ。童貞は前に進む以外のことができないんだ」
「なるほどな。敗北を経て大人になっていくわけだ」
「まだ負けてねえっすよ!」
「もう負けてるよ♪」
「美咲ちゃんまで!?」
三人でフロップへ。
【フロップ】
『♣3』『♥8』『♦J』
悪くない。
「チェック」
「チェック」
「$3,000」
小野ちゃんが迷わずチップを出す。
ほう。
「コール」
「……」
カズヤがカードと場を交互に見る。
「フォールド」
「$1,200をシンプルに無駄にしたな」
「ぐぬぬ」
「人の言うことを聞かんからそうなるんだ」
「うるせえ!」
「カッカッカ!」
小野ちゃんと二人か。
【ターン】
『♣3』『♥8』『♦J』『♠5』
「チェック」
「……」
「小野ちゃん?」
「んー」
残っているチップを確認している。
それから――。
「オールイン」
おお。
小野ちゃんから来たか。
残りは……$6,000ちょっと。
この打ち方。
さっきから見ている限り、小野ちゃんがここでハッタリをかますとは思えない。
かなり強い。
だが。
こっちはエースのポケットだ。
「コール」
「おおー!」
「小野ちゃん勝負に出たね♪」
「これは勝っただろ」
小野ちゃんが手札を表にする。
『♣K』『♦K』
「キング!」
「おお!」
「強え!」
やっぱりな。
俺もカードを返す。
『♠A』『♥A』
「エース」
「うわ」
「あ」
「まだリバーがある」
「キング来い!キング!」
「なんでカズヤが応援してんだよ」
「タカシさんに一人勝ちさせてたまるか!」
「それもそうだな」
「キング♪キング♪」
【リバー】
『♣3』『♥8』『♦J』『♠5』『♣10』
「……」
「終わったな」
「終わったねえ」
中央のチップをこちらへ寄せる。
小野ちゃんの前には――何もない。
「……」
「小野ちゃん?」
「ん?」
「大丈夫か?」
「うん」
財布を取り出す。
「リバイ」
「早えよ!」
「$20,000追加で」
「迷いがねえ!」
「早く銀行を開けろ!」
「急かさないでくれ小野ちゃん!」
「まだ戦るよね??」
「戦るけれども」
「勝ち逃げは許しませんよ」
「小野ちゃん、ギャンブラーだね♪」
「負けっぱなしで帰れるかってんだ」
「それギャンブラーが一番言っちゃいけないやつだぞ」
「タカシ諦めろ、小野ちゃんは負けず嫌いなんだ」
新しいチップを受け取った小野ちゃんが、何事もなかったようにカードを待つ。
……。
◇
……。
ん〜。
ちょっと勝ちすぎてるなあ。
学生相手から金を巻き上げるってのも大人としてどうなんだ?
新歓期で出費もかさむだろうに……。
さて。
俺の手札は――。
『♠A』『♠J』
悪くない。
とりあえず様子見だな……。
「$600」
「コール」
小野ちゃんも乗ってきた。
「フォールド♪」
「フォールド」
「レイズ。$2,000」
カズヤがレイズ。
「レイズかー」
「俺だって考えてるんすよ」
「本当か?」
「サブレはもう降りただろ! 死体が喋るんじゃねえ!」
$2,000……。
$2,000かぁ。
「んー、コール」
「コール」
小野ちゃんもコールかぁ。
手堅そうだな。
……。
俺、小野ちゃん、カズヤ。
またこの三人か。
【フロップ】
『♥A』『♣J』『♦7』
……。
カッカッカ。
エースとジャックのツーペア。
幸先いいな。
「$4,000」
カズヤが迷いなくチップを出す。
「だいぶ強気じゃないか?」
「強いんで」
「ほう?」
「サッ。タカシサン。コナインデスカ?」
「煽るじゃん」
「コール」
どっちかが、セットをツモってるくらいしか、俺の負け筋は無い。
さすがにこれで降りるのはどうかしてるだろう。
「……コール」
ほう。
小野ちゃんも来るか。
【ターン】
『♥A』『♣J』『♦7』『♠3』
「……」
さっきまで威勢のよかったカズヤの手が止まる。
「どうした?」
「考えてるんすよ」
「ほう」
「……チェック」
「チェック」
「チェック」
三人ともチェック。
【リバー】
『♥A』『♣J』『♦7』『♠3』『♣8』
……。
特に何も変わらない。
俺のツーペアはそのまま。
さて。
「チェック」
カズヤがテーブルを叩く。
「チェック」
「……」
小野ちゃんが自分のチップに手を伸ばす。
一度止まる。
俺を見る。
カズヤを見る。
もう一度、場のカードを見る。
「オールイン」
お。
来たか。
「おおー!」
「マジ?」
「マジ」
リバイしてから取り戻した分まで含めて、全部。
なかなかの額だ。
カズヤが頭を抱える。
「うわー……」
「来ないの?」
「今考えてんの!」
「まだ?」
「急かさないで!」
「普段は先走り汁ばかり垂れ流しているというのに」
「まったくだ」
「ちょっと集中させてくれ!」
「カモーン」
「くそっ!コール!」
……こいつは何も学習していないのだろうか。
小野ちゃんは今日かなり硬い手を打っている。
無駄なブラフはまだ見ていない。
おそらく、セットをツモったのだろう。
んー。
俺の手はツーペア。
シンプルに強い。
ふむ。
頃合いだな。
「コール」
「……」
サブレが俺を見る。
「なんだよ」
「いや?」
「なんだその顔」
「別に」
ニヤニヤしやがって。
「じゃあ、開けるよ」
「おう!」
小野ちゃんのカード。
『♠7』『♥7』
……。
ふむ。
セブンのスリーカードか。
「おおー!さすがに硬いな!」
「これは強いね♪」
「待て待て!俺も強い!」
「お?」
カズヤが勢いよくカードを返す。
『♦A』『♠K』
エースのワンペア。
「ワンペアじゃねーか」
「トップペア!キングキッカー!」
「AKと心中するのもポーカーの醍醐味だな」
「カズヤが一番楽しんでるね♪」
「タカシさんは?」
俺もカードを開く。
『♠A』『♠J』
「ツーペア」
「隆史さんも負けてるね♪」
「負けたかー!」
「小野ちゃんの勝ちだな」
「やったね」
「やるなあ!」
小野ちゃんがテーブル中央のチップをかき集める。
俺のチップも。
カズヤのチップも。
まとめて小野ちゃんの前へ消えていく。
「♪」
……。
嬉しそうだ。
◇
【最終結果】
サブレ →
小野ちゃん ↑↑↑
タカシ ↓↓
カズヤ ↓↓
美咲ちゃん ↑
……。
「カズヤは雑魚もいいとこだったな」
「初心者なんだからしゃーねーだろ!」
「お前はベッドでも同じ言い訳をする気か?」
「それはまずいよカズヤ」
「恥ずかしい」
「くそっ! 俺の味方はいねーのか!?」
「ギャハハハ!」
「タカシも、あれはやりすぎだったろー!」
「今日は俺に流れが来てると思ったんだがな」
「隆史さんあざす」
「ウゼェーーー!」
「ふんふん♪」
「まぁ、その金でゲロの後輩でも飲みに連れて行ってやんな」
「それは良い案ですね」
「泡銭はパーっと使うもんだ」
「ヒロは美味しい日本酒を飲んだことがないらしいよ」
「それはもったいないね!」
「そしたら、この店に連れて行ってやったらどうだ?」
「おー! タカシ! やっさんに前連れて行ってもらった店だな!」
「ああ。日本酒のラインナップがよかったよな」
「ブランド酒ばっかだったが、魚もなかなかうまかった」
「ここなら後輩も喜ぶんじゃねーかな」
「お、今度声をかけてみますね」
「俺たちは別で飲んでるから、終わったら合流するといい」
「小野ちゃんに声かけられたらヒロのやつ絶対勘違いするよな!」
「童貞だからな」
「勘違いしちゃうね♪」
「可愛がってやるかー」
「小野ちゃん」
「ん?」
「後輩にえっちなことするなよ」
「しないよ」
「小野ちゃん! えっちなことしちゃダメだよ♪」
「しないよ!」
「飲むかー!」
「飲もう!」
「乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
……。
…………。
………………。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。




