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親友③

ふっ。


よほど飲んだのだろう。


小野ちゃんはおねむのようだ。


机に突っ伏してしまっている。


可愛いおべべが汚れてしまうぞ。


まったく。


「タカシ」


「ん?」


「覚えてるか?俺が二周年記念日に真帆にあげようとして買ったネックレス」


「あぁ、結局二周年前にフラれて渡せなかった奴だろ?」


「それだ」


「お前が泣きながら俺にくれた奴な」


「それだ」


「それがどうした?」


「いや、真帆にこの話をしたら『取り返してこい』と言われてな」


「はは!そんなんもうナオちゃんにあげちまったよ!」


「ナオちゃんって、チンチン女か!」


「あぁ。俺の童貞を奪い去っていった、あのチンチン女だ」


「俺の思い出のネックレスはチンチン女に持ってかれたのか」


「あぁ。喜んでたぞ」


「クソガァっ!」


まったく。


あんな高価なアクセサリーを、まさかチンチン女に渡すとはな。


まぁ、タカシはタカシであの女とは仲良くやってたわけだし。


別におかしな話でもないが。


「しかし久しぶりだな」


「何年ぶりだろうな」


「三年くらい?」


「そんな経つのか」


「経つだろ。お前、大学入ってから会ってねえじゃん」


「あー、そうだな」


「飲もうって言ってたのにな」


タカシも酔っているのだろう。


何回かこのくだりはやった気がするが、まあいい。


……。


小野ちゃんは……。


寝てるのか。


———ピコン


まったく。


まだ、チェックシャツの呪いは小野ちゃんを蝕んでいるのか……。


……。


『LINEの通知が、私を抱こうとするチェックシャツの順番争いの音みたいでキモくてさ』


……。


『良い漢《おとこ》か?』


『それなりに』


……。


『サブレって喧嘩したことある?』


『それなりにな』


『強い?』


『それなりにな』


……。


『そしたら殴られた』


……。


『サブレもよしよししてくれる?』


……。


ふむ。


「なあタカシ」


「ん?」


「今、大学がめちゃくちゃ楽しいんだ」


「へえ」


「特にリプトンが好きだな」


「よかったじゃん」


「あぁ」


「だから、タカシには結構感謝している」


「俺?」


「ふっ。お前が俺を偽物の大学生にしたおかげだからな」


「ああ、新歓?」


「そう。あれで大学って面白そうだなって思ったのも、大学入ろうと思ったきっかけの一個だ」


「新歓で先輩に手のひら出させてゲロ吐いたの、伝説になってたぞ」


「覚えてないな」


「嘘つけ。わざとだったろあれ」


「覚えてないな」


「しょーもねー奴だな」


「覚えてるか?」


「何をだよ」


「『俺にも勉強できるかな?』って聞いた時、お前が当たり前の顔して『できるだろ』なんて言い出したの」


「覚えてないな」


「記憶力のないやつはこれだから困るな」


「でもまぁ、できたじゃん。俺の言った通りだったわけだろ?」


「まぁ、そうなんだがな」


「あの頃の俺を見て、そんなことを言うのは、タカシと、真帆と、やっさんと、両親と、マサシと——」


「結構いるじゃねーか!希少価値がねえなあ!?」


まったく。


しょーもない奴だなあタカシは。


しょーーーもない奴だなあ。


……。


でも、この三年ぶりに再会した、しょーもない男の前でなら、


俺の格好悪いところを見せたって良いだろう。


「で、何が言いたいんだ?」


「む?」


「何か、言いづらいことがあるんだろ?」


相変わらず、人のことをよく見ているバカだな。


ふむ。


「俺が言えたことではないし、タカシには悪いと思っているんだが」


「うん」


「俺の同期とは、もし付き合うなら、ちゃんとしてもらうってできるか?」


「小野ちゃんのこと?」


「うむ」


「小野ちゃんに気があんの?」


「小野ちゃんだけではないさ」


「まったく」


「真面目に付き合う気があるならいい」


「ん?」


「だがな、ちんちんでチャンバラしたいだけなら」


「あぁ」


「別のコミュニティの子にしてもらえると俺は嬉しい」


「信用ないな」


「貴様は童貞を卒業してからおちんちんチャンバラの味を覚えてしまったからなあ」


「まぁ、お前の言うとおりだけどな」


「……」


「お願い?」


「お願いだな」


友達としてのタカシは決して悪い奴ではないんだが……。


こと女性関係においては、しっかりとクズだからな。


俺はこいつとつるみながら、何人も泣いてる女を見てきてしまった。


「なんかサブレらしいな」


「そうか?」


「そうだろ」


「そうかな」


「昔から変なところで線引いてるもんな」


「それが俺だ」


「で、小野ちゃんのこと好きなの?」


「好きじゃないわけがないだろ」


「昔からそういうの隠さないよな」


「小野ちゃんはいい女だからな」


「顔も可愛いしな」


「……うむ」


「なんだよ」


「このすけべめ」


こいつは可愛い女子を見るとすぐこれだ。


しょーもないやつだ。


まったく。


「大学で変な噂立てられて、このバカみたいなやつに土下座されて『筆おろししてください』って言われても、なんだかんだ許してくれてな」


「筆おろし?」


「あぁ。土下座して頼んだらしい」


「カズヤって、そんな面白いやつだったのか」


「あぁ。昔のお前に似ているな」


「流石にそこまでバカじゃねーよ」


やっぱりタカシとカズヤはなんか似ている。


バカなところ、素直なところ、前に進もうとして空回りしてしまうところ。


まぁ、流石のタカシですら、カズヤの愚かさには勝てないだろうが。


「でも、雑に扱っていい子ではないんだ」


小野ちゃんは「雑に扱われるのには慣れている」なんてことを言っている。


それが本当か嘘かはわからない。


だから、これは俺のエゴだ。


俺が勝手に、小野ちゃんを「雑に扱いたくないし、誰にも雑に扱われてほしくない」って思っている。


それだけだ。


「すごくいい子だ」


「まぁ、わかるよ」


「余計なお世話だが、俺は勝手に、いい恋愛して、いい男と付き合って、幸せになってほしいと思っている」


「保護者顔《ほごしゃづら》だな」


「後方彼氏顔《こうほうかれしづら》って奴だな」


「あいかわらずしょーもねーなー!」


「別にタカシが悪い男だとは思ってない。お前はしっかり良い男だ」


「おう」


「小野ちゃん自身が遊びでも良いと思ってるなら、本当は俺が口出すことでもないんだがな」


「そりゃあそうだろ。今日だってお前が来なかったら今頃楽しんでいたさ」


確かにそうだったな。


別に小野ちゃんもタカシも、普通に楽しんで、普通に帰る。


多分、本当にそれだけの日に俺が首を突っ込んでしまったんだろう。


こんなこと、タカシ相手じゃなきゃ言ったりはしないさ。


「ただ、タカシが遊びたいだけだったら、『俺個人としては気を使ってやってほしい』というお願いだ」


「お願い?」


「お願いだな」


「それ、小野ちゃんに言った?」


「言ってないな」


「なんで?」


「ふっ。勝手に人の色恋に口を出すなんてのは傲慢だろう」


「わかってるじゃん」


「残念ながら、俺は傲慢な男だ」


「そうだったな」


小野ちゃんは自分の考えを持っている女だ。


俺が裏でこんなことをしていると知ったら、軽蔑されるかもしれない。


俺だって普段は我慢しているし、なるべく変なことを考えないようにしているつもりだ。


だが、久しぶりに会ったタカシを前にしていたら、ついつい本音がこぼれてしまった。





※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。



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