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卒業への第一歩だな②


このバカと二人で飲むのにわざわざ高い店に入ろうとは思わないが、一応個室のあるチェーン店を選んだ。


飲み放題2,000円+二品オーダーだ。


「はーい!ご注文を承《うけたまわ》りまーす」


「生二つと『たこわさ』、『チャンジャ』、『枝豆』、『唐揚げ』お願いします!」


「かーしこまリー!」


俺たちがこの店で飲む時のおつまみセットだ。


腹はさほど膨れないが、ちびちび食っていればつまみとしては継戦能力の高い優秀なラインナップ。


今日のような日にはぴったりだろう。


「生お待ちでーす!」


癖の強い店員が素晴らしい提供速度で生を二つ持ってきてくれた。


「お通しのキャベツでーす!」


ここのキャベツはおかわり無限だ。


ソースをかけて食うと美味い。


「とりあえず乾杯するか」


「あぁ」


「乾杯!」


「乾杯……」


「ったく何をうじうじしてやがるんだ気持ち悪い!」


「サブレぇ」


「なんだ」


「俺、小野ちゃんに嫌われちゃったかもしれん」


「なんだと!何をやらかした!?」


「俺さぁ、昨日小野ちゃんと二人で飲みに行ったんだよ」


「珍しいな」


「お前とこの間行ったバーあるじゃん?」


「あぁ、あのオシャレなところだろ?この間、真帆も連れていったが、好評だった」


「あそこに小野ちゃんを連れていったんだ」


「おお。やるじゃないか。そういう日だったんだな?」


「あぁ」


「しかし、急だな。小野ちゃんのことを好きだとは言っていたが、だいぶ前のめりじゃないか?」


「いやー、やっぱり俺がモタモタしていたせいで、子猿の彼氏に先を越されたわけだからな」


「あぁ。子猿ごときに小野ちゃんを取られた罪は重いぞ」


「そいでな。とある噂を聞いたんだ」


「噂?」


「『小野朝霞は誰とでも寝る』という」


「あぁ。春からずっと流れている噂だな。なんだ、今更知ったのか!?」


「ええ!?お前、知ってたのに俺に教えてくれなかったのか!?」


「いや、しないだろ。友だちの話だぞ」


「そ、そうか」


「何を頭のおかしなことを言っているんだ」


「いや待てよ!お前、『中村和也が美咲ちゃんのチチを揉んだ』という噂が流れた時は嬉々として俺に報告しにきたじゃねーか!」


「それとこれとはまた話が変わってくるだろう」


「そうなのか」


「続けろ」


「もしかしたら知ってるかもしれないけど、俺、童貞なんだ」


「そうだったのか!?」


「あぁ。流石にバレてなかったか」


「つゆにも思わなかったぞ」


「茶番はいいよ」


「お前が始めた物語だろうが!」


「んでな」


「あぁ」


「そろそろ俺たちは二年生になるだろ」


「そうだな」


「先輩というわけだ」


「うむ」


「サブレよ」


「なんだ?」


「童貞の先輩ってどう思う?」


「まぁ、頼もしいかと言われれば、少し疑問は残るな」


「だろ?」


「まさか……」


「サブレ」


「なんだ」


「俺と小野ちゃんは割と仲がいいと思うんだ」


「そうだな」


「小野ちゃんは可愛いよな」


「ああ。可愛いと思うぞ」


「そんな可愛い小野ちゃんが、『誰とでも寝る』ってのを聞いてよ」


「あぁ」


「俺、悔しかったんだ」


「お前も成長したもんだな」


「『なんで俺とは寝ないんだ!』って」


「そっちの悔しいなのか!」


「他にあるのか?」


「『友達が変な噂されてて悔しい』みたいな方かと……」


「……それもあった!」


「そうか……」


恐ろしいものだな……。


童貞とは。


「しかし、いきなりベッドに誘うのはマナー違反だろ?」


「そうだな。親しき仲にも礼儀というものは必要だ」


「ああ。前にも話したが、俺は童貞ではあっても獣ではない。最低限のマナーは持ち合わせているはずだ」


「たしかに、努力の痕跡はうかがえるな」


「だろ?今回だってそうさ。だから小野ちゃんをあのバーに誘ったんだ」


「なるほど。場所選びは最適と言えるかもしれないな」


「だろ?ほんでな、バーで隣に座って、俺は『マティーニ』を頼んだ」


「良いチョイスだな。大人のカクテルだ」


「だろ?小野ちゃんも、ちょっと『おお』みたいな感じになっていたと思う」


「いい反応をするな」


「ほんでな、結構話も盛り上がってよ」


「どんな話をしたんだ?」


「まず、『サブレが俺の手にゲロを吐いた話』だろ」


「滑らんなぁ」


「んで、『アフロ先輩と立ちションしていたら、アフロ先輩の息子に蜂がとまった話』」


「ははは!滑らんなぁ」


「小野ちゃんも爆笑していたよ」


「さすが小野ちゃんだ」


「そんで、『また彼氏に振られて泥酔した恵美子さんが、テキーラ入りの水鉄砲を他サーの男子に乱射して、そのまま戦争が始まった話』」


「あれは酷い事件だったな」


「ああ」


カズヤは別に話が下手ではない。


むしろうまい方だと思う。


そのカズヤがとっておきのネタを披露したわけだ。


ここまでは問題ないだろう。


ここから何が起こったのか……。


正直、あまり聞きたくないな。




※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。



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