酔っ払い小話「誕生日」
「そういえば小野ちゃんは誕生日はいつなんだ?」
「4月だね」
「おぉ!だから名前が朝霞なのか」
「季語とかわかるんだね」
「古文は好きだからな」
「なんで?」
「昔のお偉いさんたちのバカ話が現代まで受け継がれていることに趣を感じる」
「たしかに」
「サブレは?」
「11月だな。冬生まれだ」
「名前とはあまり関係がなさそうだね」
「あぁ。雪の降っている日に生まれていればまた話は変わったかもしれんがな」
「そうなんだ」
「カズヤはどうなんだ?」
「俺も4月だな」
「となると、祝う必要があるな」
「祝ってくれるの?」
「当たり前だろう。何か食いたいものはあるか?」
「焼肉」
「寿司」
「どっちかにしろというところだが、生憎俺は寿司を握ることはできん」
「自分で作るつもりだったんだ」
「大体のものは作れるな」
「焼肉は?」
「肉を切るところから始めるとなると、3人で食うにはコスパが悪いな」
「お!お前らいつも仲良くやってんな!」
「アフロ先輩!ちょうどいいところに」
「ん?どうした?」
「アフロ先輩は誕生日はいつですか?」
「俺か?俺は4月だな」
「アフロ先輩も4月なんですか!ならば誕生日を一緒に祝いましょう」
「一緒にっていうと、他にも4月誕生日のやつがいるの?」
「小野ちゃんとカズヤです」
「おー!そうだったな!」
「だから、一緒に誕生日を祝いましょう」
「お!いいのか!せんきゅーーー!」
「いつもお世話になってますからね」
「いつ?」
「来週の土曜日などどうでしょうか。新歓もありませんし」
「いいねー!」
「では、俺の部屋に18時ごろ集合しましょう。食材の準備はしておきます」
「おお!悪いな!」
「よかったら彼女さんも連れてきて一緒に祝いましょう」
「おお!聞いてみる!ありがとな!」
「サブレの新しい家、そんなに人入れるの?」
「そんなに広いわけじゃないが、物がないんだ」
「物がないの?」
「冷蔵庫と電子レンジとベッドしかない」
「テレビは?」
「無いな。俺はテレビを見ない派だ」
「そうなんだ」
「うむ。もう少し入れるから美咲ちゃんも呼ぼう」
「わたしがどうしたって?」
「美咲ちゃん」
「わたしが来た!」
「オール◯イトだ」
「どうしたの?」
「来週の土曜日にうちでカズヤと小野ちゃんとアフロ先輩の誕生日パーティをするんだが来るか?」
「行きたい♪みんな誕生日なの?」
「あぁ。どうやら4月生まれが多いらしい」
「私も4月生まれだよ♪」
「そうなのか!?」
「偶然だね!」
「うむ。そしたら美咲ちゃんも祝われる側だな」
「やったー!」
「サブレだけじゃねーか主催側は」
「そうなってくると懐が痛むな」
「割り勘で良いよ」
「それならば、みんなはお互いを祝うということで、二千円だけ徴収しよう」
「そんだけでいいの?」
「あぁ。おうち焼肉なんてのはさほど金のかかる物でもないからな」
「そっかー。ありがと」
「サンキュー!」
「ありがと!サブレ!」
「ハハハ!お言葉に甘えるかー!」
「ふっ。俺の誕生日は11月だ。覚えておけよ」
「わかった」
◇
「やっさんか?頼みがあるんだが」
「お前は俺に頼み事ばかりするな」
「頼りになる男だからな」
「土曜日に家で焼肉パーティをするんだが、ツテはあるか?」
「何が必要なんだ?あと予算」
「六人か七人の予定なんだが、タン・カルビ・ロース・ハラミあたりを合わせて千六百グラムくらいかな」
「なるほど」
「大体食材は全部で二万くらいの予算だ」
「んー、若者の焼肉だろ?肉は足りるのか?」
「女子が多いんだ」
「なるほど、そしたらまぁ、どうにかなりそうだな」
「さすがやっさん」
「知り合いの肉屋に伝えておく。何時に必要なんだ?」
「18時に開始予定だ」
「わかった。お前今馬場だっけ?」
「あぁ。最近一人暮らしを始めたんだ」
「なら16:30くらいに取りに行け。白金高輪の駅の近くだ」
「おお!サンキューやっさん」
「可愛い子はいるのか?その中に」
「あぁ。美咲ちゃんも小野ちゃんも可愛い子だぞ」
「そうか。肉屋にはよく伝えておくよ」
「ありがとうなやっさん!」
「頑張れよ」
◇
「いらっしゃい!準備はしておいたぞ」
「「「「「おじゃましまーす」」」」」
「意外と綺麗だね」
「寝るだけだからな」
「初めましてー」
「アフロ先輩の彼女さんですか!いつもお世話になってます!」
「今日はありがとうございます。部外者なのに」
「いいえいいえ!アフロ先輩の彼女なら、俺の彼女であることと同義ですので!」
「それは違うでしょ」
「そうか」
「ハハハ!今日はお手柔らかに頼むぞー!」
「こちらこそ!彼女さんの前でアフロにゲロをかけるわけには行きませんからね!」
「ゲロ?」
「おい」
「さ!くつろいでください!」
「おー」
「結構余裕あるね」
「あと2~3人ならいけそう」
「小野ちゃん何立ってんだ?」
「ベッドは外着で座ってもいい派?」
「俺がそんなことを気にする男に見えるか?」
「見えないね」
「そういうことだ!くつろいでくれ!俺は肉を持ってくる!」
「ありがと」
◇
「…………」
「なんだこれは」
「おいサブレ……なんだこれは」
「肉だな」
「これ、肉なのか?」
「肉だな」
「なんかめっちゃサシ入ってない?」
「入ってるな」
「俺たち二千円しか払ってないぞ」
「俺もそんなに出した記憶はないな」
「めっちゃいい肉じゃんこれ」
「インスタでバカなインフルエンサーが写真載せてるやつじゃん」
「あぁ。俺たちもバカの仲間入りだ」
「ん?やっさんからだ」
やっさん
『大学の友達に良いもん食わせてやれ』
「やっさん!?」
「チョモランマのやっさん!?」
「あぁ。肉の手配はやっさんに任せたんだが、どうやら一本取られたようだ」
「やっさんが用意してくれたの!?すごい!」
「ふっ。ならばやっさんの男気に感謝していただこうじゃないか!」
「うおおおおおお!」
「サブレがまた変なことしたのかと思ったよ」
「変なこと?」
「鉄◯のジャン」
「美咲ちゃん。そんなものにまで手を出していたのか」
「最近マンガアプリで安くなってたから読んだの」
「えらいぞ。さすが誕生日の女だ」
「ふふーん!」
「だが、食事中に鉄◯のジャンの話をするのはマナーが悪いな」
「確かに」
「鉄◯のジャン?」
「料理漫画だ」
「なのに食事中に話すのはマナ悪なの?」
「そういうこともある」
「うめぇぇぇぇっぇえ!」
「おいカズヤ!いきなりカルビから焼くんじゃない!まずはタンだろ!」
「うるせえ!好きに食わせろ!」
「まったく。これだから童貞は」
「バカ以外の肉は俺が焼いてやろう」
「ありがとう」
「チョモランマのキッチンの実力を見せてやろう」
「肉焼くだけなのに?」
「ふっ。肉を焼ける男はモテる」
「そうなんだ」
「バカが勝手に食い始めたが、乾杯前じゃないか」
「マナーの悪い奴もいたもんだね」
「許せなーい!」
「二人とも、バカを許してやれ。こいつは童貞なんだ」
「それじゃ仕方ないね」
「仕方ないねー!」
「うむ」
「乾杯の準備、しよっか」
「ビールはすでに用意してある」
!?
「ビールサーバーじゃん」
「業務用のやつじゃん」
「あぁ。レンタルがあったから手配しておいた」
「レンタルできるんだね」
「これはタカシからだな」
「タカシっておちんちん侍?」
「あぁ。今日パーティに誘ってみたが、来れない代わりにこれを送ってきた」
「おちんちん侍呼んだのか!?」
「残念ながら仕事だそうです」
「クゥー!悔しいぜ!会ってみたかったなぁ!」
「……タカシさん」
「『俺だと思って飲んでくれ』と言っていたな」
「おちんちん侍タカシって実在するんだな!?」
(……私も同じ感想でした)
「アフロ先輩。奴はすでに百万石の城主ですよ」
「ハハハ!出世したんだな!」
(……アフロ先輩は会ったことありますよ)
「ん?どうした小野ちゃん」
「なんでもない」
「せっかくですので、ありがたくいただきましょう!」
「アフロ先輩の彼女さんは何を飲まれますか?」
「そしたら、私もビールをもらおうかな」
「任せてください。へい!タカシビール一丁!」
「タカシビールって言うな!」
「小野ちゃんはビールだな?」
「うん。チョモランマで」
「へい!タカシチョモランマ一丁!」
「タカシから離れて」
「美咲ちゃんはカシオレだな?」
「うん」
「ちょっとつくってくる」
「カンのやつじゃないの?」
「カシスリキュールは簡単には腐らんからな仕入れておいたぞ」
「わーい!ありがとー!」
「かまわんよ」
「さて、全員の酒は揃ったな?」
「はーい」
「ある」
「早く飲ませろ!」
「ハハハ!」
「あります」
「よーし!誕生日おめでとう!乾杯!」
「「「「「「乾杯」」」」」
ありがとう。
やっさん。タカシ。
誕生日おめでとう。
みんな。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
【酔っ払い小話は箸休めとして楽しんでください。本編とはあまり関係ないことを書きます。】




