第六話 壁の向こうの来訪者
今回は森の村をぶらぶら探索回です。
ジェイルとはまったく違う景色や文化を、ノアたちと一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです!
それでは本編をどうぞ!
「おぉ〜ここが村か!」
「村というより街だな。」
森では珍しい石畳の道が広がり、木と石で造られた建物がずらりと並んでいる。
木々の隙間から差し込む陽光が街を照らし、黒煙に覆われたジェイルでは味わえない穏やかな温もりを感じた。
「早速見て回ろうぜ!」
「お、おい!まてよ!」
ルフトの声には耳を貸さずキラキラとした目で駆け出した。
店にはジェイルでは見かけない珍しいものが沢山並んでいる。
森特産の果実や、この森にしか生息しない生き物たちの肉や毛皮、どこで見つけてきたか分からない機械生物の残骸などが並べられている。
「あの店いってみようぜ!」
「おっちゃん!これなんだ?」
「お、見る目があるね!これは森の北側でしか取れないボンゴの実ってんだ!」
「甘くてうめぇぞ!一個食ってみな!」
そう言うと店主はボンゴの実を一つサービスしてくれた。
「うめぇ!!ルフトも食ってみろよ!」
ルフトは勢いよくかぶりつく。
シャクッ。
薄い皮が弾けた瞬間、たっぷりの果汁が口いっぱいに広がった。
みずみずしい果肉がトロリととろけ、濃厚な甘みが舌を包み込み、あとから爽やかな酸味がふわりと追いかけてくる。
「う、うまい!」
ルフトの手にあったボンゴの実はあっという間に無くなってしまった。
「な!うめぇだろ!」
「見る目があるにぃちゃんには、一個銅貨一枚だ!どうだい?」
「買った!これで!」
ノアは迷うことなく財布から銅貨を取り出した。
「通貨も一緒なんだな。」
「元々この森には通貨なんてなかったんだ。」
店主は銅貨を指先で弾きながら笑う。
「でも、時々お前さんたちみたいに迷い込んでくる連中がいてな。そいつらとのやり取りをきっかけに使うようになったんだよ。」
「俺らの他にも人が来たことあるのか?!」
「ああ、俺も親父から聞いた話だけど90年前くらいに一度見たことがあるらしい。」
「そん時の連中はえらく疲れてたみたいで数日滞在したらしいけどその後のことはよく知らねぇ。」
店主は村の奥を指差した。
「あぁーあそこに紫の屋根の店見えるだろ?あの店の婆さんなら知ってるんじゃないかな?」
「ありがとう!」
店主は手をひらひらと振り、再び客の相手を始めた。
「ルフトいってみようぜ!」
「そうだな!行ってみるか!」
しばらく歩くと、一軒だけ異様な店が姿を現した。
庭一面に赤い彼岸花が咲き乱れ、その奥には紫色の屋根をした雑貨屋が静かに佇んでいる。
村の賑わいが嘘のように、この場所だけ空気が張り詰めていた。
「お…お邪魔しまぁす」
「だ、誰もいない?」
「おーい!誰かいませんかー!」
ルフトが声を張り上げる。
シン……。
が、返事はない。
「ヒッヒッヒ……いらっしゃい。」
突然、背後からしわがれた声が響いた。
「うわぁっ!!」
「ヒッヒッヒお客さんかい?」
「は、はい。」
「そうかいそうかい、ゆっくり見ていきな。ヒヒヒヒ……。」
「と、とりあえず見てみるか…。」
二人は店を見て回る。
「色々あるな、雑貨屋というよりなんでも屋みたいだ。」
「お!アークギアも置いてある!」
「まじか!何があるんだ?」
「貯水筒に、万能コンロ……無油鍋まである!」
棚には古びた機械部品の隣に食器や薬草が並び、その横には見たこともないアークギアが無造作に積まれている。
「統一感の欠片もねぇ店だな。」
「逆に何でも揃いそうだけどな。」
「よいしょっと!」
ノアは腕いっぱいにアークギアを抱え老婆の元へむかう。
「そんなに買うのか?」
「ああ、ちょうどジェイルには無くてな、欲しかったんだよ。」
「おばちゃん、これお願い!」
ドゴンッ!
勢いよく品物をカウンターへ置くと、ノアは鼻息を荒くして自慢げに腕を組んだ。
「イッヒッヒ〜まいどあり。」
「何を買ったんだ?」
ルフトが覗き込む。
「えっと…さっき言った三つに、機械生物の残骸を少しと、それからナイフにうさぎのぬいぐるみ!」
「おいおい、最後のは要るか?」
「いるよ!ジェイルに戻った時用にノエルにお土産買っていかないとな!」
ルフトは微笑みながら買った商品に目を戻す。
「げっ!機械生物の残骸まで買うのかよ…そんなのなんに使うんだ?」
「ふふふ…後でのお楽しみな!」
「なんだそりゃ。」
話していると老婆が計算を終えた。
「ヒヒヒ…合計で銀貨八枚だよ」
「へぇ意外と安いな。」
そう言いながらルフトは商品をノアのリュックに詰める。
「ここらのは要らなくなったお古ばっかだからねぇ。」
「それに久々の客人だ。少しまけといたよ。」
「はい!銀貨八枚!」
「ありがとおばちゃん!」
「イッヒッヒ、いいんだよ。」
ノアは荷物を抱え、そのまま店を出ようとする。
「……おい。」
「ん?」
「聞き込み。」
「……あ。」
「完全に忘れてただろ。」
「いやぁ、欲しかった物がいっぱいあってつい!」
ノアは額を軽く叩き老婆の方へ向き直る。
「ねぇねぇおばちゃん!」
「ヒヒヒ…なんだい?」
「ボンゴのおっちゃんからおばちゃんがずっと前に迷い込んできた人の事知ってるって聞いたけど、本当?」
「あぁ…知ってるよ。」
「マジか!なあ、おばさんその話詳しく聞かせてくれないか?」
ルフトは驚いた顔で老婆に詰め寄る。
「そこにお座り…聞かせてやろう」
二人は椅子に腰掛けゆっくりと老婆の話に耳を傾ける。
「そうさなぁ……あれは、わしがまだ子供だった頃かのぉ。」
老婆は懐かしむように目を細めた。
「いつものように友達と森で遊んでおったんじゃ。」
「その時じゃった。」
ドォォォンッ!!
「突然、森の壁の向こうから凄まじい爆発音が響いた。」
「何事かと皆で見に行くと、壁に大きな穴が開いておってな……。」
「その穴から、血まみれになった男女が二人、必死に逃げてきたんじゃ。」
「後ろからは機械生物どもが次々と入り込み、村へ襲いかかってきた。」
「家を壊し、人も沢山殺された。」
「わしらはもう終わりじゃと思った……。」
老婆はゆっくり息を吐く。
「じゃが、その時じゃ。」
「穴の奥から、真っ白な毛に覆われた巨大な腕が伸びてきた。」
「その腕は機械生物をまるで玩具でも壊すように、次々となぎ倒していった。」
「みな恐怖で動くことが出来なかった…。」
「しかし機械生物をすべて片付けると、その腕は何事もなかったように穴の奥へ消えていったんじゃ……。」
「わしらはあれが何だったのか、今でもふと思い出すんじゃよ」
老婆は語り終えるとズズッとお茶を飲みホッと一息入れた。
「その後二人はどうしたんだ?」
「数日は村に滞在したけど、帰らなきゃいけない場所があるとか言ってまた穴の方に戻って行ったよ。」
巨大な白い腕に、流れ込む機械生物、血を流し傷ついた二人…なんだ、どこかで聞いた気が。
「なあ!おばちゃん!いまもその穴ってあるのか?!」
ノアは思わず身を乗り出した。
「あぁ、今でも残っとるよ。ただ、今じゃ誰も近寄らん。」
「場所を教えてくれ!」
「……行くつもりかい?」
「もちろん。」
「危険だぞ。」
「行かなきゃ行けないんだ。」
老婆は少し黙り込み、二人をじっと見つめた。
「……本気で行くつもりなんじゃな?」
「ああ。」
「…わかった。」
老婆はゆっくりと立ち上がる。
「案内しよう。」
「ワクワクしてきたな!」
「はぁ…お前だけだ。」
第六話 終
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回は村の探索回でしたが、新たな謎も見えてきましたね。
次回はいよいよその場所へ向かいます。
ノアたちがそこで何を見つけるのか、楽しみにしていただけると嬉しいです!
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それでは、また次回!




