第七話 鉄の墓場
皆さんこんにちは!
今回は洞窟のさらに奥へ。
老婆ですら足を踏み入れたことのない未知の場所を、ノアとルフトが進んでいきます。
一体割れ目の先に何が待ち受けているのか…。
それでは、第七話をお楽しみください!
「ここじゃ…。」
目の前に広がるのは、巨大な一本の割れ目。
中からは冷たい風が吹き荒れ、一寸先は暗闇に閉ざされていた。
「この先には何があるのかワシにもわからん。それでも行くのか?」
「あの白毛の化け物がいるかも知れんのだぞ。」
「ああ、もしかしたらこの先に何かヒントが見つかるかも知れねぇんだ。」
ノアは覚悟を決めたようにまっすぐな目で、真っ暗な割れ目に目を向ける。
「安心しなよおばあさん何か見つかったら帰るからさ!」
「分かった。お前さんたちの無事をアルテミス様に祈っておこう。」
そう言うと老婆は地面に膝をつき天へと祈りを込めた。
「ありがとな!」
「じゃ。行ってきます。」
ルフトがランプを灯すと、ゆっくりと割れ目の中へ入って行った。
割れ目の中は森よりも冷たく壁や、天井からは水滴が滴り落ちていた。
「ここ俺らの通った洞窟より寒くないか?」
ノアは震える体を抑えるが、ガタガタと震えている。
「水滴が落ちてくるってことはそこらじゅうを地下水でも通ってるんじゃないかな?」
「おそらくだけど森の植物たちはこの水分で成長したんだろうな。」
まぁ、飲み水に困らない点はいいんだがこの寒さは体に堪える…。
「はぁ、寒いのは慣れないな。」
「ジェイルは暖かかったからな!」
「そうだな…。」
「ノエルと親方、無事にやってるかなぁ…。」
「親方に任せたんだ大丈夫だろ。あの人はちょっとやそっとの事じゃ死にはしねぇよ。」
「それもそうだな!」
「そうそう!大体ノアは機械とノエル以外は集中出来ないんだから今は自分のことを考えないと!」
「うるせぇ!分かってるよ!」
前を向き直しランタンを高く掲げ、ゆっくりと進んでいく。
暗いせいでランタンの灯りの届かないところは全く見えない……気をつけて進まないと。
注意を払いながら辺りを見渡し一歩ずつ慎重に進んでいた。その時だった。
────ガシャン。
どこからか金属がぶつかるような音が響く。
「っ!?」
どうやら足元で何かを踏んでしまったらしい。
恐る恐る視線を落とすと……。
「うわぁ!」
足元に転がっていたのは錆びつき、朽ち果てた機械生物の腕だった。
驚いて飛び退くと、今度は視界の端に別の何かが映る。
「な、なんだよ……これ。」
ランタンで周囲を照らすと、その異様な光景が浮かび上がってきた。
壁際には胴体だけが転がり、天井からは脚だけになった機械生物がぶら下がっている。
頭部、腕、脚、砕け散った装甲。
錆び付いた機械生物の死骸が、まるで墓場のように洞窟中に無数に散乱していた。
ここで一体、何があったんだ……。
「これ……全部、機械生物か?」
ルフトが息をのむ。
ノアはしゃがみ込み、錆び付いた装甲を指でなぞった。
「そこそこ古いな。数年……いや、もっと前かもしれない。」
「戦った跡、というより……一方的に壊されたように見える。」
ノアの言葉に、二人の間へ重苦しい沈黙が落ちた。
これほどの機械生物を破壊できる存在…。
二人の脳裏に浮かんだものは、一つしかなかった。
「なぁ…これって…」
「お前も思ったか。」
ノアは転がる機械生物の残骸へ視線を向けたまま、小さく呟く。
「おそらくだが…婆さんの話に出てきた白い腕のバケモンだろうな。」
「この死骸白い腕のバケモンの手がかりになるかも…。少し調べてみないか?」
「そうだな。少し調べてみるか。」
ノアは近くに転がる機械生物の死骸へ歩み寄り、その損傷を確かめた。
「……これは。」
胴体には大きく抉られた跡が残り、分厚い鋼板が紙のようにひしゃげている。
腕は根元から無理やり引き千切られたように外れ、切断面には鋭い刃ではなく、力任せに破壊された痕跡が残っていた。
「切られたと言うより…引き裂かれた感じか?」
こいつだけじゃなんとも言えないな、他のも見てみるか。
ノアが周囲を見渡すと頭から壁にめり込んだ機械生物の死骸を見つけた。
「これは…」
めり込んでるにしては足が綺麗に残ってる…。
「投げ飛ばされて頭から叩きつけられたのか。」
「ルフト!そっちはどうだ?」
「そっちとあんまり変わんねぇんじゃないか!」
「抉られた、握りつぶされた、ちぎられたって感じだな!」
「どれも一緒か、やっぱりこいつらは一体の機械生物にやられた可能性が高いな。」
「……ん?」
ルフトが一体の死骸の前でしゃがみ込む。
「おいノア。こっち来てみろ。」
「どうした?」
「こいつだけ、他の奴らとは傷が違う。」
ノアはルフトの隣にしゃがみ込み、死骸を覗き込んだ。
「これは……。」
胴体の装甲には、半円状に並んだ傷跡が深々と刻まれている。
抉られた跡でも、握り潰された跡でもない。
まるで巨大な牙で食いちぎられたような傷だった。
「……噛み跡?」
「機械生物を……食ったのか?」
その瞬間だった。
ガリッ……ゴリッ……。
洞窟の奥から、金属を噛み砕くような不気味な音が響いた。
音を立てないよう慎重に近づく二人。
岩陰からそっと覗き込むと、一体の機械生物が機械生物の死骸へ噛みつき、装甲を噛み砕いていた。
機械生物界の掃除屋、ハイエナ型機械生物スカベンジャーだ。
「……共食い?」
「いや……死骸を食ってる。」
金属を噛み砕くたび、火花が散る。
その時だった。
ガリッ……。
機械生物の動きが止まる。
ゆっくりと首だけがこちらを向いた。
真っ赤な両眼が、ノアたちを捉える。
「……見つかった。」
一瞬、静寂流れた…。
———次の瞬間。
ギャギャアアアアアッ!!
金属音にも似た咆哮を上げ、機械生物が一直線に飛び掛かってきた。
「うぉっ!」
服一枚を掠めたが、間一髪でかわした。
しかし、その一撃で二人は分断されてしまった。
「まずいな。」
「くそ…ルフトは戦えないのに…。」
ノアは何かを思いついたように目を見開く。
「そうだ!ルフト!少し時間を稼いでくれ!」
「は?!俺武器なんて持ってないぞ?!」
「背中に担いでるのはなんのためだ!使えんだろ?」
「ここじゃ狭くて危ねぇよ!」
「お前なら大丈夫だろ!頼む!」
「わかったよ…やけくそだ!」
ルフトは機械生物を挑発するように叫ぶ。
「おい!このやろう!こっちに来いよ!」
ルフトが叫ぶと同時に、背中の飛行型アークギアが唸りを上げる。
「ギャギャァァァッ!!」
機械生物は咆哮を上げ、一直線にルフトへ飛び掛かった。
「よし、乗ってきた!」
ブシュッ!!
アークギアが蒸気を噴き出し、ルフトの身体が宙へ舞う。
機械生物は壁を蹴り、天井を這うように追い掛ける。
「速っ!?」
洞窟内を縦横無尽に飛び回りながら、ルフトは必死に距離を保つ。
「ノア! 今のうちだ!」
「できるだけ時間を稼ぐ!」
「頼むぞ!落ちるなよ!」
ノアは振り返ることなく、持ってきた荷物を広げ作業を始める。
「赤牙だけじゃ火力が足りない……。」
「だったら、この場で作る。」
ノアは荷物から装甲板や鋭い爪、砕けた関節部品を手早く見極め、使えそうなものだけを集めた。
カンッ。
カンッ。
カンッ。
ノアの視界に赤い火花が飛び散り、洞窟中には激しい金属音が鳴り響く。
その背後から轟音が響き渡る。飛行型アークギアから青白い蒸気が勢いよく噴き出し、ルフトの身体が一気に宙へ躍り出た。
「頼むぞ……ノア!」
第七話 終
第七話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は探索回……と思いきや、最後は戦闘へ突入しました。
機械生物の墓場や共食いなど、これまでとは少し違う不気味な雰囲気を意識して書いてみました。あの洞窟で何が起きたのか、そして白い腕の化け物の正体とは何なのか。そのあたりも少しずつ明かしていく予定です。
そして次回は、ノアの本領発揮です!
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それでは、また次回!




