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最果ての機械技師ノア  作者: 楓まんじゅう
第二章 異界門編

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第一話 光の指す方へ

見て下さりありがとうございます!

これから第二章 異界門編です!

ノアたちが初めて未知の領域へ足を踏み入れます。

楽しんでいただけたら嬉しいです!

「ふぅ。ここまで来れば大丈夫だろ」


「そうだな。さすがに追っては来れねぇよ」


二人は荒い息を整えながら足を止めた。


異界門の内部は不気味なほど静かだった。

洞窟の奥から吹き抜ける風だけが、ゴォォ……と低い音を響かせている。


「にしてもやっぱり暗いな……」


「んじゃあれ出すか」


ノアはバッグの中をガサガサと漁る。


「あった! 生活級ギア・ランタン!」


カチリ


ノアが取り出したランタンのアークコアが辺りを淡く照らす。


「青か」


「生活級だからな、工房からパクってきた。」


「お前戻ったら怒鳴られるぞ」

ルフトはやれやれと肩を落とす。


「生活級なんてどこにでもあるしいいだろ」

ノアが軽く流すと、ゆっくり奥へと歩いていく。


「にしてもここも配管だらけだな」

ルフトが辺りを見渡しながら呟いた。


「まぁ、ここはまだ潜りたちも普通に来る場所だしな」


ノアが地面を指差す。

「ほら地面見てみろよここはまだレールが走ってるだろ?」


ランタンが照らす地面には錆び付いた二本の鉄の線が奥に続いていた。


「昔はここで発掘されてたってことか」


「うちの工房もここまで来てたみたいだぞ」


二人はしばらくの間いつものように談笑しながら洞窟を進んだ。


しばらくレールに沿って歩いているとノアの足が止まった。

「見ろ、この先からはレールがない。」


入口から続いていたレールは不自然にちぎれたように無くなっている。

ノアが地面を指さしながらルフトの方を振り返った。


「覚悟しろ。ここから先は何が起きてもおかしくない。」

いつもの気の抜けた表情は無く真剣そのものだった。


「そ、そんなに危険なのか?」


「さぁ俺はここまできたことないし。でもここに入って帰ってこなかったやつなんて山ほどいる。」

ノアは何処か暗く悲しげな面持ちのまま先に向かう。


二人はしばらく警戒したまま進んだ。

しかし何も起きない、不気味なほど静かだった。


ランタンの灯と二人の足音だけが静かな洞窟内に響き渡る。


「案外なんにもないもんなんだな...ハハ」

ルフトは緊張を誤魔化すように笑う。


「はぁ。無いなら無いでいいだろ。」

ノアは呆れて眉をひそめた。


―――その時だった。


カラン。

暗闇の中で何かが転がる音が聞こえ、二人は同時に足を止めた。


「.....聞こえたよな?」

「...ああ」


腰に差し込んだ赤牙をそっと抜き、音のした方へランタンを近づける。


しかし、そこにあったのは崩れ落ちて転げた小石だけだった。

「な、なんだただの石ころじゃねぇか...」

ルフトは誤魔化すように小石を蹴り飛ばす。


二人の間に張り詰めていた緊張が、わずかに緩んだ。


ギギギ―――


何処からか不気味な金属音が頭上から響く。


「……っ!?」

ノアが反射的に顔を上げた。


次の瞬間。


ガシャッ!!


謎の黒い影がルフトの顔面目掛けて飛んでくる。

「危ない!!!」

ノアが咄嗟にルフトを押しのける。


ガシャン!!地面に鋭い亀裂が走る。


「うぉっ!なんだ!」

ルフトは体勢を崩し尻もちをついて亀裂の入った地面を見つめる。


ガギィッ!


二人の目に映ったのは不気味に脚を蠢かせ、赤い複眼をギラギラと輝かせる蜘蛛型の機械生物だった。


で、でかい…大人ぐらいはあるな。それに鋭い脚に赤い複眼こんな化け物倒せるのか?


ノアは周囲を見渡す。


「大丈夫か!」

素早くルフトの方へ駆け寄ると蜘蛛に襲わないよう間に立って震える手で赤牙を構えた。


「す、すまん腰が抜けちまって…」

ルフトは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。


「情けねぇな!ったく、ここは俺に任せろ!」

と言いながらも、ノア額には冷や汗が流れている。


言ったはいいもののどうしたもんか…。

赤牙じゃ短すぎて届かない。

近づいたら爪で引き裂かれる。

逃げようにもルフトは動けない。

…あれ?詰んでないかこれ?


握った赤牙にじわりと汗が滲む。

仕方ねぇ……正面突破だ!


ノアは赤牙を強く握りしめると、大きく振りかぶって蜘蛛へ斬りかかった。


だが、蜘蛛は軽々と横へ跳び、天井へ張り付く。

赤い複眼が獲物を見定めるようにノアを見下ろしていた。


カラン。


天井から小石が一つ落ちてくる。

ノアは反射的に視線を上げた。


……いける!


ノアは素早くルフトの方へ駆け寄った。

「ルフト! 危ねぇからそのまましゃがんでろ!」

叫ぶと同時に足元の小石を拾い上げる。


そして全力で蜘蛛へ投げつけた。

蜘蛛は小石を避けるように天井から飛び降りる。


その瞬間。


ガラガラガラッ!!


凄まじい轟音と共に天井が崩れ落ちた。

土煙が舞い上がり、周囲の景色は灰色の煙に包まれる。


「はぁ……はぁ……や、やったか?」


「げほっ……どうなってんだよ、ノア」

土煙の向こうからルフトの咳き込む声が聞こえる。


「待ってろ。今見てくる……」

土煙を払いながら瓦礫の山の方へと恐る恐る近づいていく。


これで終わりだといいけど…

そう願いながらランタンで辺りを照らす。


ギギギ、ギリッギリッ

崩れた岩の方から嫌な金属音がする。


ノアは息を飲んだ。


蜘蛛はまだ生きていた。しかし岩に身体を押しつぶされ鋭い爪は数本折れている。

必死にもがいているが岩に身体を挟まれて身動きが取れないらしい。


「まじか、これでもダメなのか」


赤い複眼がこちらを睨んでいる。しかし先程までの威圧感はどこにもない、必死にもがく姿はノアに恐怖しているようにも見えた。


「お前も必死に生きてるだけなんだよな…ごめん。」

ノアは蜘蛛の瞳から目を逸らさず、赤牙を振りかぶった。


ガシャン!


赤牙が蜘蛛の頭を貫く。

赤い複眼の光が徐々に薄まり坑道には静寂が戻る。


「どうだった?」

ようやく起き上がったルフトが歩いてきた。


ノアはしばらく蜘蛛を見つめた。

「ああ、終わったよ。」


「大丈夫か?」ルフトは心配そうにノアを覗き込んだ。

「大丈夫だ。」俯いたまま返事をした。


「そうか……ならいいんだけど。」

ルフトは頭を掻きながら辺りを見回した。

崩れた瓦礫の向こう。


「ん?」


「どうした?」


「いや……今、何か見えたような……」

ルフトはランタンを掲げながら瓦礫へ近づく。


そして次の瞬間、目を見開いた。


「おい、ノア!」


「なんだよ。」


「人が倒れてるぞ!」


「は?!」

慌てて振り返るとそこには洞窟には似合わない派手な服を着た少女が倒れていた。


「おい!大丈夫か!」ルフトは急いで少女の元へ駆け寄る。

「ふぅ…大丈夫みたいだ、怪我はないし気絶してるだけだな。」

安心したように息を漏らした。


「でもなんでこんなとこに人が?服装的に潜りには見えないしそれに…」

ルフトは少女の顔をまじまじと見る。


ランタンの光を反射する綺麗な白髪。尖った耳。

宝石で派手に装飾された美しい服。


「こりゃただもんじゃないな。お姫様だったり?ハハッ」

冗談を言いつつ、少女を抱えて振り返る。


「とりあえず先に進もうぜ!」


「そいつどうすんだよ!」

ノアは急いで駆け寄るとランタンでルフトの足元を照らす。


「まぁほっとくのもあれだし、連れてくしかないだろ?」


「いいけどよぉ。はぁ、また面倒事になりそうだなぁ」

見捨てるのも後味が悪いし…まぁいいか。


ノアは頭を掻きながら先に進む。


しばらく歩くとルフトが腹を指すって唸る。

「あぁ〜腹減った!」


食料も水も持ってきていない、早いとこ何か見つけないと。

ノアは辺りを見渡して食料がないか探して歩く。


カサカサカサ。


音のする方を見ると岩陰に一匹のうさぎがいた。


「お!食料発見!」

ノアの大声に驚いた兎は全速力で逃げていく。


「まて!うさぎ野郎!」ルフトが見えなくなるほど追いかけて、ようやく追いつこうとしたその時。


―――突然うさぎが姿を消した。


「あれ?どこに行った?」辺りを見渡すが姿が見えない。


ひゅうひゅう……


何処からか風の音がする。

洞窟の中で風?何処からだ?ノアは指を唾で濡らし風の方向を確かめる。


「んー…ここか?」岩の隙間から僅かに風が漏れる音がする。

「おーい!食料捕まえたか?」

ルフトがようやく追いついて来たが、ノアの様子を見て首を傾げる。


「ん?何やってんだ?」ノアが岩の前で腕を組み一人唸っていた。


「いや、ここから風の音がするんだけど岩が邪魔で確かめれなくて。」


「ちょっと待ってろ、こいつ下ろしたら二人で押してみるぞ。」

ルフトは少女を壁に下ろすと、腕をまくり気合を入れる。


「いくぞ、せぇーの!」息を合わせて岩を押す。


ゴゴゴゴ。


「お!行けそうだな!もう一回やるぞ!」

ノアが嬉しそうに身体を伸ばして再び岩に手を当てる。


「せぇーの!」「せぇーの!」


ゴゴゴゴゴゴ!


岩がズレると、大人一人がギリギリ通れるくらいの横穴が出てきた。


ひゅう!


先程とは違い強い風が吹き抜ける。

「なんだこの風。」

ノアは思わず目を細める。

その風には湿った土と青臭い草の匂いが混じっていた。


「おい……」


「ああ」

ノアとルフトは顔を見合わせた。


横穴の向こうから、微かに光が漏れていた。


第一話 終

ここまで読んでいただきありがとうございます!

今回はノアたちの初戦闘回でした。

戦闘描写はまだまだ試行錯誤中ですが、少しでもハラハラしてもらえたら嬉しいです。

そして最後には謎の少女と新たな発見も。

これからも投稿していきますので良かったらブックマークして貰えると嬉しいです!

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