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最果ての機械技師ノア  作者: 楓まんじゅう
第一章ジェイル編

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2/14

第二話 工房の新入り

第二話です!


今回はルフトが工房に馴染んでいく日常回……と思いきや!

なんだか不穏な空気...。


ノアとルフトの掛け合いを楽しんでもらえたら嬉しいです!

「おーい!もう九時だぞ 起きろノア! 遅刻しちまうぞ!」


「うるさいなぁ……分かってるよぉ……」


毛布の中でノアは丸まっている。


「起きろって」


(毛布を引っ張る)


「おい、九時だぞ」


ノアは一瞬固まり、次の瞬間――


「......九時?!」


「なんでもっと早く言ってくれねぇーんだよ!」

ノアは急いでパンをほおばりながら、つなぎに着替える。


「あのなぁ...ま、いいか」


「ゴホォ......」


「飲み込んでから喋れって!」


「ゴクッ、ノエル言ってきます!」


二人はノエルに手を振ると、工房へと走り出した。


談笑しながら遅刻しないように小走りで向かう。

かつてスラム街だった場所は、今は天空軍の仮拠点になっていた。


「お前ほんと朝弱いよなぁ」


「うるせぇ間に合ってるからいいだろ」


「はいはい」


軽口をいいながら、二人はいつものように並んで歩く。

ノアは前を向いて、小さく言う。


「……なぁ」


「ん?」


「お前、なんでジェイルに来たんだ」


ルフトの足が一瞬だけ止まる。

しかしルフトは何も言わず、前を向いたまま歩き続ける。


「……そういや、ちゃんと話してなかったな」


そして、少し笑って言った。


「ま、いつか話すわ」


ノアは小さく息を吐く。


「引っ張るなよそういうの……」





―――半年前


「俺はルフト! 今日からお前の家で暮らす! よろしくなノア!」


「―――は?」


「いやいやいや! 待て! どういうことだよ!」


ノアは明らかに動揺し、手を横に振りながら後ずさる。

そんな反応など気にも留めず、ルフトは満面の笑みを浮かべた。


「いやぁ実はさ? 俺、本当は今回の作戦参加してなかったんだよね!」


「は?」


「でも今回の作戦裏がありそうな気がしてさ?飛行船に忍び込んだら意外とバレずに乗れちゃって、来ちゃった!」


「来ちゃった!じゃねーよ!」


ノアが鋭いツッコミを入れる。


「で、よく考えたら俺の入るテントも食料もないって気づいたわけ!だからお前ん家住ませて!」


「はぁ?!あのなぁ!だからってなんで家なんだよ!」


ノアは納得が行かない様子でルフトの顔を指さしながらズカズカと詰め寄っていく。


「まぁまぁ、減るもんじゃないしいいだろ?」

ルフトは軽く笑いながらノアの肩をポンッと叩いた。


「飯は減るんだよ!」


「あ、確かに。」


「今きずいたのかよ...」

ノアはジトッとした目でルフトを睨む。


ルフトはふむふむ...と考えこむと、何かを思いたように手をポンッと叩く。


「あっ!」


「なら、お前のとこで働かせてくれよ!」


「バカか!親方が許すわけねぇだろ!」

ノアは即座に吐き捨てる。


しかしルフトは深く考えてない様子で、ニッと笑うと。

「ま、とりあえず聞いてみようぜ!」


「え?お、おい!引っ張るな!」


ルフトはノアの襟を掴むとものすごい勢いで工房まで全速力で走りだした。


カンッ!カンッ!


キュィィンッ!


工房の外ではリベット工房の作業員達が熱で歪んだ配管を、ハンマーや電動工具を使い器用に直していた。


ルフトに振り回されながら走ること20分。気がつけば、工房の前に着いていた。


初めて現場を見たルフトは立ち込める蒸気、複雑に絡み合う配管、鉄と油の独特だが、どこか癖になる匂いを目の当たりにしては子供らしい顔で目を輝かせた。


「すげぇ!これがお前の職場か!配管だらけだな!」

ルフトは周りのことなどお構い無しに工房の周りをぐるぐると回り始めた。


「あ?ノアと...誰だあいつ?」

周囲にいた作業員たちが一斉にノアとルフトを睨みつける。


「お、おまえ、今作業中なんだから静かにしろ!」


ノアは必死にルフトを止めるがルフトは今まで見たことの無い現場の景色に夢中で耳に入っていなかった。


すると奥で作業をしていたリベットが、ゆっくりとノアとルフトの方を振り返り叫び声を上げる。


「うるせぇぞテメェ!!ぶち殺されてぇのか!!」


怒鳴り声を上げたリベットは立ち上がると、ルフトの前で腕を組み見下げるように睨みつけた。


ルフトはその威圧感でピタリと動きを止め額に冷や汗を流す。


「誰だ?テメェ...」


リベットのドスの効いた声を聞いてルフトは震え上がりながら答える。


「て、天空国アルカディア所属、天空軍のルフトです!」

ビシッと勢いよく敬礼をとるが、顔は完全に引きつっていた。


「さっきの連中か...。」

リベットはルフトを睨んだまま続ける。


「で、その天空軍がここに何の用だ」


ルフトは勢いのまま大声で叫ぶ。

「俺を!ここで!働かせてください!!」


その勢いに作業員たちは一瞬たじろぐ。


「お、おまえ...っ、ぜぇ...ぜぇ...」

ノアは息をきらしながら膝に手をつく。


「よく親方を前にして堂々と言えるな...」


「あ?テメェ...」


ノアは「だから言っただろ……」と言いたげな顔で、ルフトに同情の視線を向ける。


「いいぞ」


「.....え?」


まさかの返答にノアを含めた全作業員たちが固まり、一瞬空気が止まる。


数秒遅れてルフトは勢いよく顔を上げた。


「え?!まじで!!」

「やった!!ノア!良いって!」

ルフトは、はしゃぎながら工房を走り回っていた。


ノアは慌てた様子でリベットに駆け寄る。

「お、おい親方!?まじでいいのかよ?!」


リベットは元いた場所に戻ると作業をしながら答える。

「ま、人手も足りてねぇからな。」


「ま、まじか...」


ノアは力が抜けたように肩を落とす。

まさかほんとに採用されるとは...。


「てことで!ノアこれからよろしくな!」

ルフトはニカッと笑いノアと肩を組んだ。


「はぁ...よろしく...。」

ノアは諦めたようにため息を着いた。


その日から、ルフトは工房で働くことになった。


最初は「軍人なんざにまともに仕事できんのか?」と思われていたが。


「うおっ!配管熱っ!」


「素手で触る奴があるか!」


ルフトの頭の上でボコッ!と鈍い音が鳴る。

「いててて...。すいません!」


頭を押さえながら謝るルフトに、周囲から呆れた笑い声が漏れた。


毎日のように怒鳴られ、失敗しながらも、ルフトは文句ひとつ言わず働き続けた。


そんな姿を見て、作業員たちも少しずつルフトを認め始めていた。


3ヶ月後―――


「おーい、ルフト〜昼飯、一緒にどうだ〜?」

作業員達がルフトに声をかける。


「ここだけやっちゃってから行きます!」

ルフトは壊れた配管を修理しながら元気よく答える。


「おう!なら先行ってるぞ!」

作業員達は笑いながら、休憩所へと向かう。


するとそこに後ろから誰かがゆっくりと近づいて来る。


「お前、結構馴染んできたよな。」


そこに居たのは工具を片手に、腰に手を当てたノアが立っていた。


「そうか?そうなら嬉しいな...。」

ルフトはへへと、笑うと照れたように頭をかく。


「俺も手伝うよ、さっさと終わらせて飯行こーぜ。」


ノアはそう言いながら、近くに置かれていたレンチを拾い上げ作業に取り掛かった。


キュッキュ


ギリギリ


「よし!おわり!飯行こうぜ!」


「行くか!」


二人は笑い合いながら休憩所へと向かう。


「おーい!お前らこっちこっち!」


「どうだ?仕事には慣れたか?」


「ウスッ!もうだいぶ慣れました!」


ルフトは作業員たちと笑いながら世間話を始めた。

そんな中、一人の作業員がふと疑問を口にする。


「そういえばお前らって何しにジェイルに来たんだ?」


ルフトの表情が一瞬固まる。


「わ、悪い!聞いちゃまずかったか?」


申し訳なさそうにルフトに手を合わせて謝罪する。

ルフトは慌てて首を横に振る。


「いや!全然大丈夫ですよ!そんな謝らないでください!」


それから困ったように笑いながら答える。

「実は俺、勝手に忍び込んでここまで来たから何も知らないんですよね!ハハッ!」


「はぁ?!まじかお前!」

「ま、お前らしいといえばお前らしいか!」


作業員達は一斉に笑うと納得した様子で世間話を続けた。

重かった雰囲気はいつの間にかいつもの騒がしい昼休みに戻っていた。


―――そして現在


「おい!ルフトそっちの配管抑えてろ!」


「はい!押さえました!」


「ノア!そろそろ潜りたちが帰ってくる!トロッコ止める準備しとけ!」


「わかったよ親方!」


工房内には怒号と金属音が響く。

すると近くで作業していた先輩作業員がノアに話しかける。


「親方、最近機嫌わりぃよな...」


「まぁ確かに...最近発掘上手くいってないし、それじゃね?」


ノアがワイヤーを巻きながら答える。

「...だろうな、ウォーカー共も最近やたらと活発になってきたからな、また潜りが何人かやられたらしいぞ。」


その言葉に、ノアの顔が少しだけ曇る。


二人がヒソヒソ話していると――


「おいノア!さっさとしねぇか!」


「わかってるよ!」

ノアは慌てて作業に戻る。


すると洞窟入口付近から騒がしい声がする。

「おい!さっさと運び出さんか!」


天空軍がアークコアを運び出していた。


しかし妙に張り詰めた表情を見て隣で作業していたルフトが、ノアに小声で話しかける。


「...なぁノア、なんか軍のヤツら妙な違和感ないか?」


「確かに...違和感?はあるかな?」


ルフトの言葉にノアは一瞬黙り込むが気にしてない様子で、「ま、気にしすぎじゃないか?」と軽く受け流す。


しかしルフトは険しい表情のまま、小さく呟いた。


「いや……そもそもあいつらが危険を犯してまで発掘しに行く意味ってあるのか?」


ルフトはノアに再び問いかける。


「...というと?」


ノアは不思議そうに聞き返す。


「だって俺らだって発掘してるんだぜ?」

ルフトは作業をしながら続ける。


「軍なら、俺たちから安く買い取った方が早いだろ」


「確かに...」


ノアとルフトが話していると。


「おい!そこの箱には触るな!」


「は、はい!すみません!」

軍隊長が隊員に怒鳴り声を上げていた。


隊員が捲り上げた布の隙間からチラリと一瞬アークギアらしきものが見えた。


そこにあったのは―――ライフルだった。


黒く光沢のある銃身は金の細工で複雑な模様が刻まれており、銃身の根元にある穴にはアークコアがはめ込まれていて脈打つように赤く光り輝いていた。


ノアは一目見ただけでそれが普通のものではないことはわかった。


「え?...銃?」と思わず呟く。


「あれ軍の正式装備じゃないな...」


ルフトが険しい表情で荷物を見つめる。


「少なくとも俺はあんなの一回も見た事ない。」


――そう言った直後。


「おい貴様ら!!何を見ている!!」

軍隊長の怒鳴り声が工房内に響く。


二人は慌てて視線を戻し何事も無かったように作業を続ける。


隊員たちは箱に厳重に布を被せて軍の拠点へと運び込んでいく。


「やっぱり、あいつら何か隠してる」


その異様な光景を見てルフトは確信したように呟く。


ノアは気になりながらも見ないように作業に集中する。


――少しの沈黙が流れ、ルフトが口を開く。


「...今夜、俺たちで調べてみるか?」


ルフトはニヤッと笑う。


ノアは大きなため息を吐いた。


「はぁ...絶対ロクな事にならねぇぞ」


「やらねぇの?」


「...やる」


金属音と作業員の怒号が響く中、二人は静かに顔を見合わせた――。


第二話 終

読んで頂きありがとうございました!

今回はルフトとノアの生活を中心に書いてみました!

最後は何やら軍に動きがあったようです。

次回も是非読んで頂けたら嬉しいです!

ゆっくりと投稿していきますので良かったブックマークをつけていただけると励みになります!

ではまた次回!

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