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最果ての機械技師ノア  作者: 楓まんじゅう
第二章 異界門編

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第十話 意外な過去

洞窟で見つけた、一つのロケット。


そこに写っていたのは、一人の白髪の女性だった。

そしてノアは、その女性と瓜二つの女を、この洞窟で見ていた。

一体、あの女は何者なのか。


ノアたちは、その謎を追い始める。

お楽しみください!

「遅くなってすまんな。」

小屋の外から声がする。

「ん?この声、聞いたことある気が…」

ノアが窓からゆっくりと顔をのぞかせる。

「え?あいつ…アガメ!!」

声と同時にアガメの視線がこちらを向く。

「誰かいるのか!!」

「ばか!声がデケェよ!」

アガメが鋭い視線で小屋を睨みつける。

「やはり誰かいるな。」

「大人しく出て来い、事によっては命までは取らないでやろう。」

「どうするよ…。」

「どうするって言ったって出るしかねぇだろ!」

「……返事無しか。」

「…三数えるその間に出てこなければ殺す。」

「三……二……一。」

ギィィィィ。

「こ、こんにちは…。」

「はぁ、お前らか。」

「ここで何をしている。」

「いやぁ〜〜。なんと言いますか。」

「正直に話したほうが身のためだぞ。」

アガメは槍先をこちらへ向けたまま、一歩、また一歩と間合いを詰めてくる。

「分かった!話すから!その物騒なもん下げてくれ!」

「…よかろう、くれぐれも嘘はつかないことだ。」

「分かってるよ。」

「て言っても俺あんまり覚えてないんだよなぁ。」

「遺言はそれで良いんだな。」

そう言うとアガメは再び槍を構え直す。

「待てって!最後まで聞けって!」

「さっさと話せ。」

「ルフト頼む。」

「俺かよ!いいけどよ。」

「最初は森のことを調べるために、村で聞き込みをしてたんだ。」

「それで、ボンゴの実を売ってるおっちゃんに雑貨屋のお婆さんを紹介されてさ。そのお婆さんから、この森の割れ目について聞いた。」

アガメは深くため息をつき、二人を睨みつける。

「はぁ……あのお節介婆さんめ。余計なことを喋りおって。」

「話を聞いたなら、お前たちも知っているはずだ。この先は危険だ。」

「それなのに、なぜ入った。」

「ネイアのためだ。」

「巫女様のため……?」

「なぜだ。なぜお前たちが巫女様のために、ここまでする。」

「それは言えない。」

「だが、あいつを助けたいという気持ちに嘘はない。」

アガメは少し考えると再びこちらを見る。

「割れ目に入った理由は分かった。しかしここの事はどうやって見つけた。」

「ここに来るのにかなりの分かれ道があったはずだ。何も知らずにここに来れるとは思えん。」

「それなら俺よりノアに聞いてくれ。」

そう言うとルフトはノアを指さす。

「俺に聞かれてもなぁ…。」

「白髪の女を追いかけてたらここに着いたとしか。」

「白髪の女?!」

「まさか巫女様じゃないだろうな!詳しく話せ!」

アガメは声を荒げて、ノアの肩をブンブンと振り回す。

「ちょ、ちょっと、話、すから、落ち着け!」

「うぉっ!」

「ハァ…ハァ…。落ち着いたか?」

「あぁ…すまない。」

「話してくれ。」

「俺にも何が何だか分からない。」

「最初は、洞窟の川を調べてたんだ。」

「で、川を調べ終わって付近を調べていると道に埋もれた首飾り見つけた。」

ノアは懐から首飾りを取り出した。

「何となく気になって拾ったんだけど……。」

「その時、川の向こう岸に白い髪の女が立っているのが見えた。」

「呼びかけても返事はなくて、女が洞窟の先に進んでいったから。」

「気になって後を追ったんだ。」

「その後も女を追いかけていたら、いつの間にかこの小屋に辿り着いてた。」

「以上だ。」


「…………。」


「…………。」


「そうか……その首飾りを貸してもらえるか?」

「いいけど?」

アガメは首飾りを受け取ると震えているが慣れたような手つきで装飾を開けた。

「あぁ…お前はまだここに居たんだな…。」

そう言うとアガメの頬に一雫の涙が落ちた。

「お、おい、どうしたんだよ…。」

アガメは写真を親指で優しくなぞる。

懐かしむように目を細め、静かに息を吐いた。

「…これは妻の物だ。」

「妻?!どういうことだよ?!」

二人は目を丸くしてアガメと首飾りを交互に見つめる。

「言葉の通りだ。これは生前、妻がいつも身に付けていたロケットだ。」

「まさかこんなとこに奥さんの物があるなんて……ん?待て、生前ってどう言う事だ?」

「妻は何十年も前に亡くなっている。」

「そっか……。」

ノアは俯き、アガメの手の中にあるロケットを見つめた。

その時、ふと脳裏にあの光景が蘇る。

洞窟の川の向こう岸。

白い髪を揺らしながら、こちらを見つめていた女。

「……待て。」

ノアが顔を上げる。

「どうした?」

ルフトが尋ねると、ノアはアガメを見つめた。

「なぁ、そのロケット……もう一回よく見せてくれ。」

「あぁ……構わんが。」

アガメはノアの手の中へ、優しくロケットを置いた。

ノアはロケットを開き、中に収められた写真を見つめる。

「……やっぱり。」

「おい、ノア。どうしたんだよ?」

「さっき見た女と……アガメの奥さん、そっくりなんだ。」

「さっき見たって……ノアが人がいるって言って追いかけてたやつのことか?」

「そうだよ! ルフトも見ただろ?!」

「いや……俺は何度も言っただろ?」

ルフトの表情が曇る。

「お前が言ってた女なんて、俺には見えてない。」

「は?」

ノアの声が止まる。

「そんなわけないだろ。俺は確かに見たんだ!」

「でも、俺には見えなかった。」

「……。」

ノアは再びロケットの中の写真へ視線を落とす。

そこに写っているのは、白い髪の女性。

そして、ノアが洞窟で見た女と同じ顔だった。

「……じゃあ、俺が見たのは……誰なんだ?」

その呟きを聞いたアガメの顔から、血の気が引いていく。

「……お前。」

「ん?」

「その女を……どこで見た?」

「えっと、川の辺りから追いかけてきて、小屋の前に着いたら消えたんだ。」

「……おそらくその女と言うのは妻のことだろう。」

「でも……奥さんは何十年も前に亡くなったんだろ?」

「あぁ。」

アガメは静かに頷いた。

「妻は病を患っていた。少しずつ身体が弱っていってな……最後は家の中で、俺に看取られて亡くなった。」

「……。」

「だから、妻が生きているはずはない。」

アガメはそう言いながらも、ノアの手にあるロケットから目を離せずにいた。

「じゃあ……俺が見た女は?」

「分からん。」

アガメは首を横に振る。

「ただ……。」

「ただ?」

「そのロケットが、どうしてここにあるのか。それだけは気になる。」

ノアがロケットを見る。

「どういうこと?」

「妻が亡くなった時、ロケットは墓標にかけていたはずだった。

「じゃあ、なんで洞窟に?」

「……それが分からん。」

アガメの表情が険しくなる。

「妻の遺品は、今でも家に残してある。だが、このロケットだけは……いつの間にか無くなっていた。

「いつの間にか?」

「あぁ。妻が亡くなってから、しばらく経った頃だった。」

ノアはロケットを握りしめる。

「じゃあ……なんでこれがここに……。」

「わからん。」

アガメはそう呟くと、しばらくロケットを見つめていた。

「……だったら、調べよう。」

「よく分かんないけど、俺がここに来たことも何か意味がある気がする。」

「だから奥さんが何を伝えたかったのか俺らが見つけるんだ!」

「いいかアガメ?」

「わかった。俺も手伝う。」

「そうと決まれば早速中に入ろう!」

ルフトが扉に手をかける。


第十話 終

ここまで読んでいただきありがとうございます!


今回は、洞窟で出会った白髪の女の正体が少しだけ明らかになりました。


……とはいえ、まだまだ謎だらけです。


なぜノアにだけ見えたのか。

なぜロケットが洞窟にあったのか。

そして、彼女はいったい何を伝えようとしているのか。


次回は、さらにこの小屋を調べていきます。


果たして何が見つかるのか、お楽しみに!

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