第九話 金色のロケット
洞窟の奥へ進むノアとルフト。
洞窟の奥へと進むノアたち。
そこで見つけた”あるもの”が、物語を大きく動かします。
今回もよろしくお願いします!
「それにしても、この洞窟どこまで続いてるんだ?」
「さぁな。異界門の中だし、どこまで続いててもおかしくはない。」
ノアはランタンで周囲を照らしながら答えた。
「はぁ…だったら気楽に進むしかないか。」
「そういうこと。」
二人は他愛もない話を交わしながら、薄暗い洞窟をさらに奥へ進んでいく。
ザァァァァ……。
「ん?」
ルフトが足を止める。
「今、何か聞こえなかったか?」
ノアも耳を澄ませる。
「……水の音だ。」
ザァァァァ……。
「こっちから聞こえるな。」
「行ってみようぜ。」
音を頼りにしばらく進むと、洞窟の中とは思えないほど澄んだ水が岩の間を流れている。
「洞窟の中にこんな川があるなんてな。」
「入口の方もだいぶジメジメしてたからな地下水が流れ込んで川になったのかもな。」
ノアは川に手を伸ばし水を掬って一口啜った。
「冷たっ!」
「ふぅ、生き返るな。」
「水があるのは助かるが、あとは食べもんでもあれば完璧なんだけど。」
「ちょっとこの辺、散策してみるか。」
「あんまり遠くには行くなよ。」
「わかってるって。」
フンフフーン♪
「おっ、鉱石発見!」
ノアは岩陰に転がる透明な結晶を拾い上げる。
「水晶か。この前の武器の出力も、これなら安定させられるかもしれないな。」
そう言って袋へしまい込み、さらに周囲を見回す。
「次は何かないかな……。」
ピカッ。
「ん?」
視界の隅で、小さな金色の光がきらりと瞬いた。
「鉱石……じゃないな。」
ノアはしゃがみ込み、地面を掘り返す。
ガリ……ガリ……。
やがて土の中から姿を現したのは、金色の装飾が施された小さな首飾りだった。
「なんだこれ……。」
表面には細かな彫刻が刻まれ、中央には開閉できそうな継ぎ目がある。
「開くのか?」
カチッ。
恐る恐る蓋を開くと、中には一枚の小さな写真が収められていた。
「写真?なんでこんなもんがここに?それになんか写ってるやつら見たことあるような気が…」
そこには赤ん坊を抱え優しく微笑む白髪の女と女の肩にぶっきらぼうな顔で手を置く小さい男が写っていた。
「とりあえず持っとくか。」
ノアが首飾りを首にかけ服の中にしまった。
その時。――フフフフ。
「っ?!誰だ!」
突然背後から声がした。
ノアは慌てて声の方へ振り返ると、洞窟の先の方へ流れる白く長い髪が見えた。
「待て!」
女性は振り返ることなく、洞窟の奥へ歩いていく。
見失わないように急いで追いかけようとしたが。
「お前が待て。」
いつの間にか背後にいたルフトに頭をチョップされた。
「イテッ!何すんだよ!」
「はぁ、お前は何してんだ。遠くには行くなって言ったよな?」
「いや、でも!そこに白髪の女が!」
「はぁ?こんなとこに人がいるわけないだろ?」
「そりゃそうだけどよ…。ほんとに見たんだって!」
「あっちの方に走って行ったんだよ!」
ノアは興奮して暗闇が続く洞窟の先を指差した。
しかし先を見ても何も居ないし気配も感じない。
…ヒョコッ。
岩陰から白い髪がふわりと揺れ、女がこちらを見つめていた。
「あ!ほら今こっち見てた!追いかけるぞ!」
ノアは何かに取り憑かれたように一心不乱に走っていく。
「お、おい!待てよ!」
「たく、あいつ何言ってんだ…。こんな薄暗い場所で見えるわけないだろ…。」
少し先の暗闇。
白髪の女が立っていた。
「いた!!」
女は何も言わない。
ただ静かにこちらを見つめると、奥へ向かって歩き出した。
ノアは岩場を飛び越えながら白髪の女を追いかける。
女は一定の距離を保ったまま、振り返ることなく洞窟の奥へ進んでいった。
「待ってくれ!」
「だから誰もいねぇって!」
ルフトも渋々あとを追う。
洞窟は次第に狭くなり、湿った風が頬を撫でた。
ザァァァ……。
先ほど聞こえていた川の音が、再び近づいてくる。
女は川沿いの細い道へ入り込み、白い髪を揺らしながら奥へ消えていった。
「あそこだ!」
ノアが指差した瞬間。
ふっと白い影が岩陰へ消える。
「消えた……?」
二人は息を切らしながら岩陰へ駆け寄った。
そこには誰の姿もない。
代わりに、岩壁を利用した石造りの小屋が静かに佇んでいた。
「……家?」
「まさかこんな場所に、人が住んでんのか……?」
「ノア、どうするよ。」
声をかけるが何も答えない。
「おい、聞いてんのか?」
再び声をかけるとゆっくりと振り返り静かに答える。
「おいで。」
穏やかで優しい声。
だが、それはノアの声なのにノアの声ではないように聞こえる。
ノアの顔には今までに見たこともない優しい笑顔があった。
「お前何言って…。」
「大丈夫、大丈夫だから。」
「お前本当にノアか?」
ノアの笑顔がゆっくりと消えていく。
力が抜けるように膝をつき、バタリッとそのまま前のめりに倒れ込んだ。
ノアは地面に倒れ込み動かなくなった。
「ノア!大丈夫か!」
スッースッー。
「良かった。寝てるだけか。」
ルフトはノアを抱き抱えるとゆっくりと視線を小屋へと向けた。
「はぁ…しょうがねぇ、入るしかないか。」
ルフトは重い足取りで目の前の小屋の方へと歩いていく。
ふぅ〜よしっ。コンッコンッ。
「こんにちは〜誰かいませんか〜」
「やっぱり誰もいないのか?」
ギイィィィ。
意を決しゆっくりと扉を開けた。
「お邪魔しま〜す。」
扉を開けた途端、舞い込んだ風で部屋の中の埃が舞い上がる。
「ゴホッゴホッ、埃っぽいな。」
とりあえずベッドは使えそうだな…。
「今日はここで休ませるしかねぇか。」
ルフトはノアをベッドに下ろすと周囲を調べ始めた。
棚には木彫りの食器が整然と並び、壁には手作りの布が飾られている。
暖炉には灰が残っていたが、火が灯った形跡は何年も前で止まっていた。
「誰かが確かにここで暮らしてたんだな……。」
「でもなんでこんなとこで…。」
「ん…ここは…?」
「ノア!起きたのか!」
ノアはゆっくりと体を起こすと、辺りを見回した。
「あぁ…あの女はどこに行ったんだ?」
「さっきからあの女って誰のことだよ?」
「お前、誰もいない所へ走っていったんだぞ。」
ノアは胸元のロケットを握りしめながら、
「そんなわけない!確かにいたんだ!」
「そう言われてもなぁ…。お前どこまで覚えてる?」
ノアは顎に手を当て記憶を辿る。
「ん〜。あの女を見つけて。」
「ルフトが来て…それからは思い出せない。」
ノアは考え込みながら胸元へ手をやる。
「……あ。」
「そういえば、この首飾りつけてからの記憶が曖昧な気がする。」
「首飾り?そんなのどうしたんだよ。」
「いや、川の近くを探索してたら見つけたんだ。」
「ここを押したら開くんだ。」
そう言って首飾りを開けてみせた。
「へぇ〜ロケットか。」
「ん?写真入ってるじゃんか。」
「そうそう確か三人家族が…。」
「ああ!!こいつだ!!」
「びっくりした!なんだよいきなり!」
「俺が見た女だよ!この写真の女だ!」
「……待て。」
「この写真、後ろに写ってる棚……。」
ノアも視線を向ける。
写真の奥には、壁際に置かれた本棚と小さな暖炉が写っていた。
そして目の前にも、同じ位置に本棚と暖炉がある。
「まさか……。」
二人は同時に部屋を見回した。
「ここ……。」
「この人たちの家なのか……?」
コツッ……。
「っ!?」
小屋の外から小さな足音が聞こえた。
「誰かいる……。」
ノアとルフトは息を潜め、ゆっくりと扉へ視線を向ける。
足音は、一歩、また一歩と近づいて来る。
コツ……コツ……。
足音は、小屋の前で止まった。
ギィ……。
「やばい…入ってくる!」
第九話 終
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
洞窟の奥で見つけた謎の小屋。
そして、写真に写っていた白髪の女性。
次回はいよいよ、この小屋の秘密が明らかに。
ぜひ楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!




