9_ルーシアの計画
「メア。これから俺がしたいことを言うから、可能かどうか教えてくれ」
「いいぞ」
「まず、俺達はヴァインセンに移動して情報収集をしようと思う。それと並行して、王都を出た後、人目がない場所で騎兵を用意して、ライン大森林のヨーグ族に騎行を行いたい」
ライン大森林、東のファラデン山脈とヴァインセンの間にある、大森林地帯。ゴブリン部族連合軍の最大兵数を誇る、ヨーグ族の縄張りだ。
「騎行?」
「鬼終島でメアがやった様な村への襲撃だ。目的はゴブリン連合を分散させることだ」
100年戦争で、イングランド軍がフランス軍に実施したのが有名なあれだ。
今、俺たちはゴブリンの大軍に困っている。なので、まず敵の大軍を分散させようと考えた。
ヨーグ族を選んだのは、数が多いというのも理由の一つだが、ゴブリン部族連合軍の部族の中で、一番北に住んでいて、ヴァルト山脈より南に本拠地を持つと言われる、ゴルドの部族と一番距離が離れているからだ。
ゴブリンも距離が離れれば離れるほど仲間意識が低くなるはずだ。人間だって、悲しいことに遠く離れた国が、戦争で被害にあったとしても、誰も自分事には考えないのだから。ゴルドがヨーグ族に援軍を送るにしろ、送らないにしろ揉めることになるだろう。
「連合軍から、ヨーグ族を分散させて引きつける?」
「そうなれば狙い通りだ。最大の部族の兵が抜ければ、ゴルグの北への進軍に影響があるだろう」
ヨーグ族から1万でも抜ければ、連合軍は6万になる。それに、ヨーグ族の故郷のライン大森林を守るために、援軍を送るかどうかを連合内で協議するだけでも、数日は潰れるだろう。
「守りに来なかったら?」
流石にヨーグ族が故郷を完全に見捨てるとは思えないけど・・・。
「その時は、ヨーグ族の村を襲って、魔石を手に入れて兵力を増強させる」
もし、軽騎兵のメアが一万まで増えれば、正面切ってゴブリン軍と戦う事も可能になってくるだろう。
「全軍で来たら?」
「そんな過剰な反応はしないと思うけど、もし血迷って全力でヨーグ族を守りにライン大森林にゴブリン軍が来たら、王国にかなりの時間的な余裕が出来て良いな。戦闘用のメア達は、補給が不要だし、ゴブリン軍が追ってきたら逃げて、ゴブリン軍が王国方面に侵攻しようとしたら追撃するを繰り返して時間を稼ごう」
「うん、メアは食べないし、飲まないし、寝ないし、休まない、働き者」
メアはドヤ顔でアピールしてきた。ブラック会社経営者でも、流石に部下から言われたらドン引きしそうな宣言だな。なんか、第三者から俺DVヒモ男に見えてない?大丈夫か・・・?
それにしても、メアのやりがいは何処から来るんだろう?
「・・・メア、助かるよ。それで軽騎兵のメアなんだけど、1000体以上にはしないで欲しい」
「なぜ?」
「誘引したいのは多くても1万位の規模だ。出来れば指揮するのも部族長とかじゃなく。ナンバー2、3の奴が率いて来て欲しい所だ」
「なぜ?」
「出来れば来た奴を調略したい」
「乗るか?」
「やってみないとわからないけど、相手が人間位の知能があるのであれば、ゴルグと部族長が死ねば、自分が新たな部族長になれるって感じで誘えないかと」
「もし援軍が来たら、指揮官は生け取りすれば良いか?」
「ああ、頼む」
「わかったぞ」
「後、気になるのは、戦場跡のアンデット問題だよな~」
「王国は死体の埋葬をしてないと言ってたな」
「そうなんだよ。ま~、その状況はヴァインセンで調べるとしよう。俺たちが街に着く頃には、レバン平原で戦場漁りをしてた奴らが街に帰ってきてる頃合いだろう」
戦があった場所に、戦場漁りが出るのは、この世界でも普通だとメーメルに聞いた。
前世と違うのは、アンデットが戦場跡に出ることだ。餅は餅屋だ。戦場跡のアンデットの発生状況は彼らに聞くに限る。
「王国と関係無いルーシアが、兵士たちの埋葬まで考える必要があるのか?」
ん?メアは俺が王国の死者を悼んで何かしてやりたいと、考えていると思っているのか?俺ってそんなに良い人に見えるか・・・。メアは俺に対してバイアスがかかっているのかもな。
「いや、別に故人を悼んでたりが目的じゃない。突然沸いたアンデットの大軍に、計画をぐちゃぐちゃにされたくない」
俺は準備が出来たら、王国とゴブリンの決戦に、王国側で援軍に行くつもりだが、その際に、王国軍にアンデットの大軍が襲い掛かってきて敗北されたら困る。
「計画?」
「最終的にゴルドのゴブリン軍は全滅させる」
俺がそう言うと沈黙が流れた。メアはその吸い込まれになる瞳で、俺の目を見てきた。
ちょっと過激な発言だったかな?それともメアは俺がこんな発言をすると思わなかったかな?カエル化されたらどうしよう?
でも、敵対する存在を生かして置くほど、俺は度胸が無いのだ。なので、禍根は残さない。
「ああ、その・・・、調略に応じたゴブリンは生かすつもりだ」
「ルーシアがそうしたいなら、そうすれば良い」
「すまない、メアに頼り切りの計画だし、メアが嫌なら」
「楽しくなりそう。だからそのままで良い」
そう言ったメアは恐ろしい笑みを浮かべた。悪魔が人を陥れて、破滅しているのを見ている様な、凶悪な笑みだった。
メアの表情の3パターン目が解禁されたな。スクショでも撮っておくか?何て現実逃避した考えが俺の脳裏を巡った。やっぱりメアはかなりやばい存在なのかもしれない。だが今は、
「当面はその方針で動きたい。・・・俺は睡眠が必要だから寝る」
「わかったぞ。私は地図を見てる」
部屋に居続ける気か?寝顔とか、寝言とかメアに聞かれたらやだな~と思いつつも、俺はベットで寝ることにした。
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歴史にIFを考えてもせんなき事だが、それでもあの時止めていればと、今になって思ってしまう。
勿論、当時そうしなかったのは、私に止める余裕がなかったからだが後悔はやまない。
考えても見て欲しい。属性とはその物の本質を現すものだ。例えば闇の属性を持った者が強大な力を手に入れようとしていれば、我々の様な心ありし者は止めようとするだろう。
本質が闇の者が世界に何を齎すか、容易に想像ができるからだ。
しかし、もうあの化け物を私には、止めることが出来ない・・・無念だ。
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