8_王都観光をした。所でゴブリンは滅ぶべきであると考える
「お待たせしたわね」
俺は固まってしまった。
いや、メーメルは美人だとわかっていたけど、仕事着からおしゃれな私服に着替えた威力は、俺に抜群に効いてる。何だろうこの感覚は、ソシャゲの推しキャラが急に目の前に現れた様な非現実的な光景だ。
俺はファッションに詳しくないので、彼女が何て服を着ているか、誰それに説明は出来ないが、おめかししている事はわかる。
「あっ!?ああ、行こうか」
冷静を装っているつもりだが、動揺を彼女に悟られていないか不安になる。まー・・・。十中八九悟られているだろう。
彼女の案内で王都を巡りを始めた。大通りには2、3階建ての建物も立ち並んでいた。建物は西洋っぽい石作りで、建物と建物の間に隙間が無く、連なって建っているのが、異国感を出しているのだろう。やはり近代くらいの文明度の様だ。最も田舎の方では発展度は違ってくるだろうけど。
昼時になったので、食事をするのに店に入った。屋内はカウンター席とテーブル席がある。カウンターの中にはビール樽があるので、夜は酒場になるのだろう。テーブルの一角には、傭兵達が険しい顔で話をしているのが見える。
「お二人に好き嫌いはあるかしら?」
「特に無いと思うが、発酵した特殊な郷土料理とかは勘弁だ」
「わかったわ。・・・心配しなくても、そんな意地悪しないわよ!まったく・・・。じゃあ、注文してくるわね。二人ともテーブル席に座っていて」
そうか、そりゃ前世の様に各席にメニューがあって、店員が聞きに来るわけじゃないよな。軽いカルチャーショックを感じた。俺が座るとメアは隣に座ってきた。
「ルーシア、食事が届いたら、私も食べた方がいいか?」
「ああ、頼むメア」
メアは意思疎通が困難な時もあるが、こういう時に気が使える所が偉い。多分、常に俺に気を使ってくれているのだろうが、彼女と、普通の人間との間の常識にずれがあって、たまに意思疎通が難しくなっているだけなのかも知れない。メアと話していると、AIと話している様な感覚になるのはそのせいだろう。
「肉料理とエールを頼んで置いたわ」
「ありがとう」
酒か、俺もメアもまだ肉体的には、あまりよろしく無いのかもしれない。だが、この時代、この国だと、この歳で水を飲む方がおかしい目で見られるかも知れない。そもそもこの世界に前世の法や常識を持ち込む方が、無作法と言うものだろう。郷に行っては郷に従えだ。
・・・決して酒が飲みたいわけでは無い。俺は自分の欲望を制御できるんだ。
五杯目までは記憶があった。
うん、違うんだ、言い訳をさせてくれ。俺は日常的に飲酒したりしない人間だ。だから、こういう機会飲酒の時は、ほんの少し、はっちゃけてしまうんだ。
それに、メアとメーメルという美人2人に囲まれて、キャバクラみたいな雰囲気で、良い気分になったせいもある。気がついたらベットに寝かされていた。朧げながらメアが背負って運んでくれた様な記憶だけが残っている。
窓の外を見ると、もう暗くなっている。
暫くするとメーメルが部屋に入ってきた。
「あら、ルーシア起きたのね」
「すまない、情けない所を見せてしまった」
「いいのよ。私が飲ませてしまった所もあるし、それより夕食の準備が出来たのだけど食べれそう?」
「メーメルが作ったのか?」
「そうよ」
「料理も出来るのか・・・」
「ま〜ね」
彼女の案内で食卓に向かった。ビーフシチュー、マッシュポテト、サラダ、パンなど色々と並んでいた。
「お酒もあるけど?」
メーメルは意地悪な所があるな~。まあ、不思議と嫌な気分では無いけど。ただ、いつかささやかな意趣返しをしてやろう。そんな悪だくみを思いついた。
「いや流石に自重する。水かミルクがあれば頂きたい」
「わかったわ」
彼女は奥の部屋に飲み物を取りに行った。
「大丈夫か?」
気がついたらメアが後ろに立っていた。俺の体調を気にしてくれたのか?
「大丈夫だ。メアが運んでくれたのか?」
「そうだ」
「ありがとう」
メアは特に反応せず、椅子に座って待機モードになった。本当ロボットみたいな奴だな。
メーメルが戻ってきて、みんなで食事を始めた。
「そういえば良い報告があるの」
「ん?」
「レバン平原の戦いの後、ゴブリン軍の動向を探らせていたのだけど」
「それは周到だな・・・」
「まあね。それでゴブリン軍は、南に下がったみたいなの、勝ったのに・・・変よね?」
「兵糧問題か、故郷で政変でもあったか・・・」
「・・・兵糧問題は考えれられるわね。奴らの規模なら、略奪だけじゃ到底軍を維持できないわ」
「王国はゴブリン軍1万を倒したというが、まだ、7万いるゴブリンの腹を満たすとなると、兵糧調達には常に悩んでいるはずだな」
「そうね。政変の方についてはどうかしらね?ゴルグが健在の内は起きなそうな気もするけど。ただ、奴らはザンクランドみたいな統一された王国って訳じゃない。元々、それぞれ対等な部族の寄り合い所帯だから、内紛の火種は常にありそうね」
「例えば、先の戦いでゴルグが負傷していたりしていればどうだろうか?」
「確かに・・・。その線も含めてもっと情報を集めてみるわ」
食事を終えた後、メーメルが用意してくれた、地図をテーブルに広げた。
「王国の地図よ」
成程、王国は北の海以外の3方を山脈に囲われた国なんだな。それぞれの山脈の麓には大森林地帯があり、材木を王国にもたらしてくれるが、ゴブリンの住処にもなっている様だ。
「ゴルグの領土はどのあたりなんだ?」
「正確な情報かわからないけど、南のレプス山脈を超えた先に本拠地があると言われているわ」
「王国側の森林地帯じゃ無いのか?」
「王国側の森林に住んでいるゴブリンは、体表に緑の部分が多いの。ゴルグの部族は灰色が多いから、レプス山脈の南側から来たんじゃ無いかと考えられるわ」
「東のファルデン山脈の先とも、考えられるんじゃ無いか?」
「え~と、ゴブリンは北に行けば行くほど体表の緑が濃くなる傾向があるの。さらに北に行くと、また灰色が多くなるけど」
「そうか。なら北海を超えて来た可能性は低いから、南から来た事になるな」
「そうよ。知らない数万体のゴブリンを乗せた大艦隊が北海を通れば、流石に商会が見つけるわよ」
「住んでる地域が違うんじゃ、団結は弱そうだな。ファラデン山脈側のゴブリンの部族について何か知っているか?」
「ファラデン山脈の麓のライン大森林には、確か・・・ヨーグ族って部族が住んでいたはずよ。ゴルグが来るまで王国最大の敵だったはず」
「その部族はどれくらいの数がいるんだ?」
「6万はいるんじゃ無いかしら?戦えるの2万位だと思うけど」
「なるほど。その部族から1番近い街は、このヴァインセンという所か?」
俺はレバン平原の北、ライン大森林の西にある。地図上の大きな街のマークを指差した。
「そうね。そこが1番近いわ。ヴァインセンは王国中央最大の都市で、今は王国の最前線よ」
その後も暫く、メーメルに王国の地理について聞いた後、地図を借りてメアと、先ほど俺が寝てた部屋に移動した。




