7_キール商会フレンベルグ支店での交渉
「ルーシアさん、お待たせしました」
メーメルとフランシスが、部屋に入って来て、対面のソファーに座った。
「先に、お礼の話をしたいのだけど、こちらをどうぞ」
1枚の紙を渡された。なんだろう?証文、割符のような物だろうか?1万帝国銀貨と書いてある。
・・・深く考えていなかったが、そういえば、これは日本語なのか?それとも日本語と俺が認識しているのか、・・・いずれ検証が必要だな。
「これはどこかに持ち込めば、お金と引き換えれる紙かな?」
「え〜そうよ。殆どの商会で1万帝国銀貨と交換できるわ」
「1万帝国銀貨って、どの位の価値なんだ?」
「そうねぇ。3000枚で普通の家庭が、1年暮らせる位かしら」
前世換算だと、1000万位か?結構貰えたな。
「そんなに貰って良いのか?」
「気にしないで、貴方へのお礼が少ないと、他の人も商会を助けたいと思わなくなる」
「商会は信用第一って事だな。悪い噂はすぐ広まってしまうからな」
「そういう事。それでルーシア、今日の宿とかってどうするつもり?」
「王都を散策しながら適当に探そうと思っていたけど」
「・・・それは厳しいわね」
「異国の人間が泊まるには何か問題があるのか?」
「いえ、王国の事情よ。この前、王国とゴブリンが戦ってるって話をしたわね」
「ああ、劣勢なんだっけ」
「そう。それで南から中央までの王国民が、北に避難して来てるみたいなの」
「なるほど。それで王都の宿屋が埋まっているのか」
「ええ。宿屋に入れなかった人は、城壁の内壁沿いに、バラックを建てて勝手に住み着いてる位よ」
「それは・・・、困ったな」
「それで、良かったら私の家に泊まらない?」
えっモテ期か?
そんな馬鹿な考えが一瞬頭をよぎったが、メアも一緒だし、メーメルは純粋に俺達を助けてくれる気なんだろうと冷静になった。だけど、動揺するのも仕方ないだろう。メーメルは前世で言うと、1000年に1人のアイドル位、容姿が良いからな。そんな子に家に誘われるなんて経験なかなか出来ない。
「助かる・・・、で見返りは?」
「何も無いわよ。あなた達だって、私をログハウスに泊めてくれたじゃない」
相手は紹介の幹部、何の見返りもなしに手を貸してくれるだろうか?まあ、疑った所でしょうがないか。
「・・・それじゃ世話になる」
「後で案内するわね。その前に話したいことがあるの」
「なんだい」
「先日、レバン平原で王国軍とゴブリン軍の決戦があったみたいなの。結果は王国の惨敗、王国軍は2万の兵士を失って、ゴブリン軍を1万ちょっとしか倒せなかったみたいなの」
「よくわかったもんだな。王国は敗北を隠さなかったのか?」
「いいえ隠してるわよ。だけど、商人にとって、情報は命と等価の大事なものなの。当然、独自で手に入れているわよ。王国の敗北を、まだ大多数の民衆は知らないわ」
「知ったらパニックになりそうだな」
「そうね。さらに最悪な事に、王や王子達、主要な貴族もみんな戦死してしまったの」
これは結構まずい状況みたいだな。王国は崩壊待ったなしなんじゃ無いか?
「ただ、幸いな事にリーニャ王女が指導力を発揮して、今、軍を再建しようとしてるみたい」
「実際、彼女はどうなんだ?」
「男に生まれていたら、間違いなく王太子に選ばれていた程優秀よ。ただ、状況が悪すぎるわ。本来なら戦場跡はアンデットが出ないように、戦いの後、埋葬とかの処理するのだけど、王国軍はそれも出来ない位に追い詰められているわ」
逆に考えれば、そこまで追い込まれた王国を助ければ、相当の見返りが期待できるな。
「それでね・・・こんな状況だから、2人も公国に避難した方が良いかなと思ったの。公国には商会の本店があるから、色々融通が聞くわ」
「いや、俺たちは出来る限り、ゴブリンと戦いたいと思ってる」
「えっ、貴方達がゴブリンと戦う理由は無いじゃない?」
「俺のいた国では、判官贔屓って言葉があってな、負けている方を応援したくなるんだ。それに負けてる方に加勢した方が、見返りも多そうだ」
「なら私が王国に紹介しましょうか?良い待遇を得れる様に、出来ると思うわ」
「気を使ってくれてありがとう。ただ、俺たちは独自で動くつもりだ。今日はご厚意に甘えて、メーメルの家に泊めさせて貰って、明日には王都を出て南に向かいたいと思ってる」
「わかったは、船の停泊の手続きと・・・。それと貴方達の身分証と、南への通行証も用意するわね」
そう言ってメーメルは、顔の前で人差し指を伸ばして、前後に腕を振りながら、これからすべきことの考えをまとめると、フランシスに指示を出した。聞き終わったフランシスは失礼しますと頭を下げ退室した。もしかして、書類の準備をしに行ったのだろうか?明日出たいってのは無茶な発言だったかも知れない。
フランシスさんに申し訳無いなと思いつつ、メーメルに頼まないといけない事を話す。
「メーメル、後、地図が欲しいんだけど」
「地図ね・・・。わかった、後で家に持って行くわ」
少し間があったのは、やはり、この時代の地図は貴重な物なのかな?
「二人はこれから何かするつもり?何も無ければ王都を案内しても?」
夜には、メアとゴブリン対策を考えるとして、それまでは、この世界の文化を知るのに、元々、王都を散策するつもりだった。現地人に案内して貰える方が助かるな。渡りに船だお願いしよう。
「助かる。頼めるか」
「じゃあ準備するから、少し待っててね」
言われるがまま部屋で待つ事にした。
「な〜、メア」
「なんだ?」
「あの戦闘用のメアって、どんな形にも出来るのか?」
「どんなって何?」
「例えば騎兵や、巨人みたいにして戦うとか」
「出来る。ただ、戦闘用の私は金属で出来ていて重い、地盤が弱いと埋まるぞ」
「そっか・・・、なら沼地とか、泥濘期とかは気をつけないとだな」
北の地域だから、春は泥濘期があるだろう、それに砂漠とかも大変そうだ、季節と地形には気を付けよう。
「今ある魔石を使ったら機動力のある、軽騎兵は何体位作れる?」
「用途は?」
「ゴブリンの村を、襲撃したいと思ってる」
「島でやった様にか、騎兵である意味は?」
「王国にはあまり時間が無さそうだからな。出来るだけ早く、広範囲で襲撃したい」
「わかった、作れるのは300体だ」
「明日、王都を出たら試しに一体作ってくれ」
「船の他の私はどうする?」
「俺とメアの護衛として、遠方から目立たず、ついてこれるか?王都を出たらゴブリンの領域近くの街で情報収集したい」
「わかった」
一段落着いたので、また、茶菓子をメアの口に運んでみた。メアはまたパクっとそれを食べた。前世では子供もいなく、ペットも飼っていなかったが、可愛い子に食べ物をあげると癒されるんだな。
「嫌なら嫌って言ってね」
「なんの話だ?まあ、わかったぞ」




