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6_ザンクランド王国、王都フレンベルグ

出向から3日、船から遠方に陸地が見えてきた。


「あれは・・・、おそらく飛龍の角ね。あの半島の海岸沿いを、南に行けば王国に着くはずよ」


メーメルは羅針盤と手帳を見ながら俺に説明してくれた。彼女の手帳には、何らかの複雑な計算が書かれていた。


ちなみに飛竜の角とは、王国や公国がある大陸と海を挟んで北側にあるヘルゲン半島の西にあり、王国、公国間の交易をする船乗りには、有名な目印になっている岬らしい。


「メーメル、王国までは後何日位だ?」


「そうね後2、3日って所ね。そうだ!メアさん、筆記具と紙を十枚程頂けないかしら?」


「何故だ?」


「あなた達、入港に必要な書類って持ってる?船舶、積荷、乗員、検疫記録とか他諸々」


「あ!?そうか・・・持っていないな。入港にはそういう書類が必要なのか・・・。まずい何も考えていなかった。書類をメーメルは作れるのか?」


「勿論、遭難してからは、あまり役立って無かったけど、私、書類の作成は得意なのよ」


彼女を助けて本当に良かった・・・。何処か文明的な国の港に入港するなら、当然、書類は必要だよな。こんなことを思いつかないなんてな・・・。


メーメルはメアに、海岸沿いをこのまま進めば大丈夫だからと伝えた後、筆記具と紙を受け取ると、船室に入り書類作成を始めた。俺たちは邪魔にならないように、外で海を眺めながら待つことにする。くじらやイルカでも出ればテンションが上がるのにな~。


その後、日が暮れるまで作業を続けた彼女は、伸びをしながら甲板に出て来た。


「ん~。流石に疲れたわね。でも、この調子なら明日中にはすべて揃いそう」


「お疲れ様。メーメルがいてくれて助かったよ」


「助けてもらった上に、街まで送ってもらっているのよ。これ位は当然するわよ」


メーメルはつり目で怒ると怖そうだが、達成感の笑顔をこちらに向ける彼女は、とても綺麗に見えた。夕暮れだったせいもあるだろうけど。


「メーメル、港に着いたら、それからどうするんだ?」


「王都かハーゼンなら、うちの人間が港に、常に詰めているから話が早いのだけど」


ハーゼンは王国の北西にある港町で、王都と公都の中間にあるそうだ。


「なんの話だ?」


「あなた達へのお礼の話よ。私は受けた恩は、倍で必ず返すのが信条なの」


「書類を作ってくれただけで、十分助かっているけど」


この世界の情報をかなり頂いたしね。


「それだけじゃ足りないわよ。遠慮しないで、ルーシアお金っていうのはね、いくらあっても困らないものよ」


「ハハ、確かにそうだな。それじゃ、ありがたく頂くことにするよ」


そう俺が笑顔で感謝を告げると、彼女は小悪魔な笑みを浮かべ、


「ちなみに恨みも倍返しだからね」


と忠告してきた。うん、これから彼女には恨みを買わない様に気をつけよう。


水平線に都市が見えて来た。遠くからでもかなりの規模に見える。近づくと、港には多くの船が停泊していた。


「あれは、王都フレンブルグね」


「王都か、かなりデカい都市だな」


「ええ、北方では珍しい10万都市よ。ミュールズから運ばれた石材で、2重の城壁で街が囲まれているのが特徴ね」


「堅牢そうだな。包囲されても何年も持ちそうだ」


「そうね。海側が封鎖されなければ、ミュールズが海上支援出来るし、3年は持つんじゃ無いかしら」


いきなり王国が滅亡するという事態は起きなそうだ。ただ、王都だけ無事でも、それ以外の土地がすべてゴブリンに占領されたら、事実上の滅亡だろうけど。


別に混沌の神々からの報酬を重視していないけど、どのような状態で混沌の神々に王国が滅亡と判定されるかわからないし、その点は留意しないといけないな。


港に近づくと役人っぽい人間が、船の誘導を始めた。メーメルが誘導された内容をメアに伝え、船は指定の桟橋に接舷出来た。


「初めて見る船だがどこの船だ」


役人が桟橋から見上げて、そう確認してきた。それに答えるのに、メーメルは船の端のブルワークから上半身を乗り出した。


「キール商会のメーメルよ。商会のフランシスを呼んでくれないかしら」


「メーメル無事だったか!乗ってた船が沈んだと聞いていたが、助かって良かったな!」


「ありがとう、他の船は王都に着いたのかしら?」


「沈んだのは君の船だけだ、他の船は無事王都に着いたぞ。待ってろ、すぐ商会の者を呼んでこよう」


そう言うと役人は、建物がたくさん並んでいる方に走っていった。あの役人は無愛想に見えたが、走って伝えに行ってる所を見ると良い人そうだ。それともこの国が商人を大切にしているのか?


「知り合いか?」


「北方の主要な港の役人には、顔を覚えられている自信があるわ。自慢じゃないけど、この歳の女で商会の幹部なのは、実力主義のミュールズ商人の世界でも珍しいのよ」


「幹部だったのか」


「言って無かったわね。だからお礼は期待して良いわよ」


しばらくすると、役人と眼鏡をかけた男が、建物の方から、こちらに駆け寄って来た。


「メーメルさん、よくご無事で」


「ありがとうフランシス、こちらの方々に助けて貰ったのよ」


船を降りた俺たちは、フランシスの案内で、港にある商会の建物の応接室に案内された。俺とメアが先に入室した。メーメルとフランシスは外で相談してから来るのだろう、部屋で少し待っていて欲しいとメーメルに頼まれた。


ちょうどメアと二人きりになったし、二人じゃないと話せないことを話しておくか。


「そういえば、メアって人間が食べる食べ物を食べれるか?」


「必要ないけど食べれるし飲める」


「眠ったりは?」


「眠れないけど、眠ってるふりなら出来る」


「そうか・・・。戦闘用のメアは今何体位作れる?」


「800体位作れるぞ」


「その数で8万のゴブリンには勝てそうか?」


「不可能じゃないけど、難しいぞ」


「そりゃ、そうだよな〜」


いくら相性が良くても多勢に無勢か。戦闘用のメアを作るには、魔石が必要と言う話だったな。魔石を手に入れにはゴブリンを倒さなきゃと思ったが、メーメルから貰えるお礼で、魔石を買うという手もあるか?それはこれからの話し合いの後で考えるか。


机の上に茶菓子が置いてあるのに気付いた。なんとなく一つ手に取って、メアの口に近づけてみた。メアは俺の手を見た後、俺の顔をじっと見つめ、ぱくりと食べた。


「本当に食べれるんだな。味はわかるか?」


「わかるぞ」

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