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4_キール商会のメーメル

私は、今、任されている南への隊商隊の積荷を、目録を見ながらチェックしている。積荷のチェックは本来、部下の商会員の仕事ではあるけど、私は直接自分で確かめないと気が済まない性分なの、悪癖だとはわかっているけど。


「この馬車は・・・、防具ね・・・。うん、数量はあっているわ」


私が目録にチェックマークを書いていると、若い商会員が慌てた様子で走ってきた。


「メーメルさん、商会長が緊急でお呼びです」


何事かしら・・・?


商会長からの緊急の招集に応じて、私はミュールズ公国のキール商会本店に向かった。本店に入ると、中にいる者達には、いつもと違う緊張感が出ていた。これは、ただ事ではないわね。


商会員から案内された会議室にノックして入ると、険しい顔のお偉方が地図を睨みつながら、議論を交わしていた。


「よく来たメーメル」


「お待たせしました商会長。ただならぬ雰囲気ですが、何かあったのですか?」


「まずい事に、ゴブリンが王国に大進攻を始めたようだ。それで、公爵は王国への援軍は断ったそうだが、王国を支援をするため、我らに武具の調達と運搬を頼んできた」


「なるほど。それで、私が呼ばれたわけですね」


「そうだ、確かメーメルの隊商隊は、南方に武具を持っていく予定だったな」


「はい、緊急の荷では無いので、500人分の武具が王国支援用に転用可能です」


「よし。では、バレン。急だが王国に向かう船は準備出来るか?」


「緊急用に待機している船の数では、運べそうにない量です・・・。船のスケジュール的に、少し、厳しいんですが・・・。なんとか支援品運搬に船を回せるよう調整してみます。いつまでに運べばよろしいんで?」


「公爵は大至急で、運べるだけ運べだそうだ。人使いの荒い男よ」


「それだけ、王国は切迫した状況という訳ですな」


「そうだ。荷が届き次第、王国軍はゴブリンの迎撃に南に出陣するそうだ」


「ですが、500人分で足りるのですか?王国軍は3万程の兵力だと思うのですが、それが大慌てということは、ゴブリンはかなりの数でしょう?」


「公爵は敵の数を濁していたが、ゴブリン王ゴルドの軍だ。10万弱はいるだろうな」


「10万!?そんな大軍相手では・・・、公爵が王国への援軍を躊躇うのも、仕方ありませんな」


私は商会長とバレン船長の話を聞きながら、広げられている大陸地図を見た。公国と王国の間にはズーラン山脈がそびえ立っている。この峻峰のせいで、公国と王国間での陸路の移動は山越えが必須。


軍隊が、あの山脈を越えるのは、とてもじゃないが不可能だと聞いたことがある。隊商でさえ、山を越えるのが危険すぎて、採算が合わないので、どこの商会もこの山脈を通らない。


なので、王国に向かうには船を使うしか無いが、そうなると公国が援軍を送っても、公国軍は、容易に帰ってこれないかも知れない。ゴブリンが港に迫ってきても、悪天候で船が出発できなければ、港で援軍が全滅してしまう。公爵が援軍を躊躇してしてしまうのも仕方がない事だ。


とは言え、王国が滅びれば、次は公国の番だ。平地に住む我らにとって山脈は障害でしかないが、山に住むゴブリンにとって山脈は我が家のようなものだ。王国が征服されれば、山越で公国に侵攻してくる可能性は十分ありえる。それに対する公国はどう頑張っても8000程度しか兵を集めれない。王国が滅ぶ前に何か対策を考えなければ・・・。起死回生の一手を・・・。


あっという間に出港の日が来た。私では王国を助ける術を思いつかなかった。それも絶望的だが武具は予想より集まったけど、武具を運ぶ船の調達が上手くいかなかったらしい。バレンのやつ4隻であれだけの武具を運ぶのは正気じゃない、嵐に会えば転覆するぞと忠告したが、バレンは私の意見を聞き入れなかった。


出港から3日、私の船は嵐に遭い転覆した。海への転落の衝撃で、私は意識を失った。


どれだけ気を失っていただろう、私が目覚めた時、目の前に男?がいた。中性的な見た目と声で、最初性別がわからなかったが、話しているうちに男だと分かった。黒髪に黒目、背は165あるかどうか、歳は私より下に見える15歳位かしら。


次に横にいる女に気づいた。こちらも中性的な見た目だけど、服装と仕草から女と判断出来た。背は男より高く、歳は私と同じくらいに見える。表情が少なく、何を考えているのか読みにくい印象ね。


話をするなら男の方が良さそうだった。


その後、色々と案内されて驚いた。メアさんは、大陸でも上から数えれる程の大魔法使いかもしれない、大魔法使いは、1000人の兵に匹敵すると聞いたことがある。彼女を味方につければ、王国を滅亡の危機から救えるかもしれない。


しかし、王国の状況を伝えても、彼らどこか他人事の様な反応だった。勿論、表面上は同情している風を装っているけど、特にメアさんの方は、王国の悲劇に何の感情も揺らいでいない様に見えた。その瞳は、まるで庭先で虫同士が喧嘩しているのを、見ている様だった。


こんな風に二人を見てしまうのは、自分が遭難してナイーブになっているだけかも知れないけど、2人が得体の知れない化け物に見えてきた。


その後、彼らとしばらく話した後、ルーシアからベットで休む様に言われた私はベットで横になり、それを確認した彼らはログハウスの外に出ていった。


私は彼らの会話が聞くために、ベットから扉に移動して耳を押し付けた。所々聞こえない所もあったけど、話が王国の味方をしてくれるという方向になって嬉しかった。


だけど、魔石があれば商品を作れるとか、魔石が戦う事に役立つとは何だろう?私が知ってる魔法使いとは、何か系統が違う魔法なのかも知れない。


これから、私がすべき事は、彼らを王国の味方になる様に誘導して、王国と彼らの仲介役として働くことかしら、そうすれば個人的にも双方に恩を売れるだろう。


それにしても、二人は一体どういう関係なのかしら?最初は主従関係かとも思ったのだけど、それにしてはメアさんのルーシアさんへの物言いに違和感を感じるし、恋仲って感じでもない。姉弟関係が一番しっくりするのだけれど、もしそうなら、「こっちは、メア」では無く、「こっちは、姉のメア」って紹介してこないとおかしいわよね?タイミングを見てその辺も聞いてみようかしら。


方針を考えている内に、私は強烈な睡魔に襲われた。流石にまだ体が疲れているのかしら、ベットで眠ることにする。


船旅の時と違い、揺れない地面の上で寝れる幸せを噛み締めながら眠りについた。

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