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3_我々は孤独では無かった

浜辺をぐるりと回っていると、倒れている人を見つけた。俺は慌ててて駆けつけて声をかけた。


「だっ大丈夫ですか?」


返事は無いが、手を触ってみると体温があるので、幸い生きていそうだ。


赤毛の10代後半位の女の子だったので、メアに運んで欲しいと頼んだ。訴えられたくは無いからね。


メアが彼女をベットに寝かした。どうやら俺はこの世界で唯一の人間では無かったみたいで安心した。それに、彼女の服装からある程度の文明が、どこかに栄えている事がわかる。


地球が生まれたのは56億年前、人類が生まれたのは20万年位前だったはずだ。今いるこの星が何年前に生まれたか知らないが、人間が生きている時代に俺がいるのは奇跡と大いに喜んで良いだろう。そもそもこの世界に人間がいるのは不思議だけど・・・。収斂進化的なあれか?生物学者でもないので理由はわからないな。


そうだ、彼女が起きた時の為に、メアと打ち合わせをしよう!


「メア、前いた島と、今いる島をなんて呼ぼうか?」


「ルーシアが決めれば良い」


「祭始島と鬼終島とかにするか?」


「わかった。で、ルーシア、この女はどうする?」


「そうだなー。取り敢えず起きたら、この世界について彼女から色々聞きたいと思ってる」


「その後は?」


「本人次第だけど・・・。元いた場所に送ってやりたいんだけど、メアはそれでいいかい?」


「いいぞ。外洋を超える船なら、3日もあれば作れるぞ」


「はは、相変わらずのスピードだな。メアと俺について彼女に聞かれたらどうする?」


「ルーシアに任せる」


そう言うとメアは、また切り株に座り目を瞑った。早速船を作り始めたのだろうか?


数時間経った後、彼女は目を覚ました。


「大丈夫ですか?」


「私は、、、。ここはどこ」


落ち着いた後に話を聞くと、彼女は商人で航海している時に、乗っていた船が嵐に会い沈没してしまったらしい。


「バレンのやつ、だから積みすぎだって言ったのに」


彼女はそう毒づいた。バレンって誰だ?


「バレン?」


「船団の責任者よ。そうだ、自己紹介が遅れたわね。私はメーメル。キール商会所属よ。あなた達は?」


「俺はルーシア。こっちはメアだ」


「ルーシアさんにメアさんね。助けてくれてありがとう。他に誰か流れ着いていなかったかしら?」


「いや、メーメルだけだな・・・」


彼女の顔が悲しげになった。沈んだ船がどの位のサイズの船かわからないけど、交易船なら、少なくとも何十人と乗っていただろう。彼女以外はもしかしたら亡くなってしまったかも知れないな。


「そう・・・。仕方ない・・・わね。所でここは何て島かしら?」


「俺たちはキシュウ島と呼んでる」


「聞いたことのない島ね。他に人はいるの?」


「俺とメアだけだ」


「あなた達も流れ着いたりしたの?」


「まー。そんな感じだ」


「ふ〜ん、じゃあ船なんて持っていないわよね」


「外洋を渡れる船は、今は無いけど作っている」


「ん?どう言う事、、、?」


話の流れを、聞いていたメアは、こちらに目配せすると歩き出した。俺とメーメルは、メアの後について行った。


そこには、乾ドックが作られ始めていた。多くの作業用のメア達が、スコップ等の道具を持ち、土を掘ったり、材木の加工をしたり、忙しなく作業をしていた。


「嘘!?なに・・・これ?」


「んー、メアの使い魔的な?」


「こんな数を扱えるなんて、大国の宮廷魔法使いでも難しいわよ!」


「メアは優秀だからできる」


メアはかなりのドヤ顔をしてきた。基本メアは無表情だったから、こういう表情も出来るんだと驚いた。いやマスコットの見た目の時も、俺が気づかないだけで、こんな風にドヤ顔をしていたのかも知れないな。


「メアが言うには、後2〜3日で船ができるみたいだ。もしよければ近くの街まで送ろうか?」


「ええ、それは助かるわ。お願いできるかしら、勿論、お礼はするわ」


俺はメーメルと握手を交わすと、またメアが俺たちに目配せをして歩き出した。まだ見せたい物でもあるというのだろうか。


そこにはログハウスが建っていた。祭始島のログハウスよりも2倍位でかい。メアは俺達に室内を案内してくれた。ダブルのベットに、大きなテーブルと椅子が2脚、他にも、各種調度品が用意されていた。


「メアさん。これも、使い魔達に作らせたの?」


「そうだ」


作業用のメアが、急造っぽい椅子を運んできたので、テーブルを囲うように3人で座った。せっかくだから、俺はこの世界の事を色々とメーメルから聞き出す事にした。


彼女の予想では、この島は大陸の北にある可能性が高いようだ。彼女の所属するキール商会は、ミュールズ公国とザンクランド王国で主に商売をしていて、本店はミュールズ公国にあり、彼女もミュールズ公国の生まれみたいだ。


ザンクランド王国は、南東から侵入してくるゴブリンの侵攻で相当疲弊しているらしく、ミュールズ公国は王国の支援のために、キール商会に支援品の運搬を依頼していたそうだ。その航海中に彼女が乗った船が沈没してしまった。


「なるほど、それは王国は大変な状況だな」


「えー、王国が滅びれば、次は私の故郷が被害にあうかもしれないの」


そう考えると、バレンって船団長が、積荷を積みすぎたのも、しょうがないことなのかもしれないな。王国を助けたい気持ちのあまりに、荷を積みすぎたのだろう。この世界より技術が進んでいるだろう旧軍時代ですら、危険を軽視して軍艦を重武装化して嵐で転覆させたのだから。


それにしても戦争か・・・、戦闘用メアを使えば、大陸で傭兵業をして、生計を立てれるかもしれないな。


「この島にも昔ゴブリンがいたんだが、幸い大した武器を持っていなかったんだ。そっちのゴブリンはどんな武器を持っているんだ?」


「粗末なものよ。せいぜい、錆びた剣や槍を持っている位よ。ただ王の部族は王国の正規軍並の武装ね」


「王?」


「にっくきゴブリン王ゴルグよ。本当か嘘かわからないけど東の地でフェンリルを倒したと豪語してるらしいわ、まー、それが嘘でも強いのは間違いないだろうけど」


「敵と味方は、どの位の兵力差なんだ?」


「ゴブリン共は8万位で、王国は3万位だったはずよ。ただ、ゴブリンと王国正規兵では、装備と練度に差があるから、数字程の劣勢ではないはずよ」


「どの位の数がいれば勝てそうだ?」


「私は軍事が専門じゃないから、正確じゃないと思うけど、5万は欲しいところかしら」


王国は侵略を受けている側なので、地の利もあるだろうが、厳しそうな状況にみえる。


取り合えず、疲労が溜まっているだろう彼女に、ベッドで休むよう伝えて俺とメアは外に出た。


「メア、さっきの話どう思う?」


「どうって何?」


「鬼終島は、祭始島に比べて何倍も大きいけど、それでも島だ、資源的な限界はいつか来るだろう?」


「ルーシア1人なら十分養えるぞ」


「まぁ、一生メアとここで暮らすのも良いかもだけど、俺は外の世界を見てみたい気もする」


「ルーシアがそうしたいなら手伝うぞ」


「何通りかプランを考えたんだけど、聞いてもらえるか?」


「いいぞ」


「1つ目は、争ってるどちらかに完全に味方して報酬を得る。2つ目は、傭兵として限定的にどちらかに味方して報酬を得る。3つ目は、メアが作る商品をメーメル経由で、キール商会に販売して儲ける。4つ目は野心なく2人で旅をする。とか4パターン考えてみた」


「どちらかに味方するなら人間に味方した方が得だ。ゴブリンを殺せば魔石が手に入る、人間からは金銭や土地を報酬で貰えば良い。物を作って売るのも可能だ。魔石があれば商品は作れる。商品を売って金を得て、魔石を買ってまた作るという流れで、良い暮らしが出来そう。あてなく旅をするのも楽しそう。でも、最終的にはルーシアがやりたい事に合わせる」


かなり迷うところだが、王国に味方してゴブリンと戦う方向で考えようかな。


「最終的な判断はメーメルを送った後に、街で情報収集してからだけど、ゴブリンと戦う方向で考えたい」


俺がそういうとメアは準備するとだけ言って、また切り株に座って目を瞑った。俺はメーメルがログハウスで眠っているから、ログハウスで眠れないので、メアの隣で野宿する事にした。

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