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14_バッサス団とヴァインセン伯爵

俺たちの仕事はあまり世間体の良いものじゃねぇ。だが、半分山賊みたいな不良傭兵団と比べれば、まだまだましな方だ。


ゴブリンの迎撃の為に、レバン平原に王国軍が向かったと聞いて、既に王国入りしていた、俺たちはヴァインセンに向かった。


ヴァインセンは俺の故郷だ。懐かしい顔とまた会えるかと思えば、ま〜悪い気分じゃなかった。だが、ヴァインセンに着いて間もなく、最悪の知らせが飛んできやがった。


王国がゴブリン軍に大敗した知らせだ。戦場跡の供養が出来ない程の大敗だったようだ。戦場漁りなら死体が多い方が、嬉しいんじゃないかだって?んな訳ねぇだろう・・・。故郷がこれから戦場になるかも知れないってのに、そんな感情出るかよ。


俺たちは急いで南に向かった。今回は儲けは無しだ。せめて戦死者の遺品を回収して、遺族に届けてやろう。部下達には儲けさせてやれなくて悪ぃが、今回は勘弁だ。


「親分、不気味な雰囲気なんすけど、全然アンデットが出てこないから、余裕っすね」


戦場跡は奇妙な静寂に包まれていた。敵味方合わせて4万近い死体が放置されてるっていうのに、スケルトンとゾンビしかいねぇ。最低でもスケルトン戦士、悪くすればリッチの様な上位種がポコポコ出てもおかしく無いはずなのに、・・・これはまずいぞ。


「まずい、急いで北に引き返すぞ!」


「え!?まだ、遺髪や遺品を積めますぜ?」


「この戦場跡はおかしすぎる。とんでも無く恐ろしいアンデットが生まれる前兆かも知れねぇ」


「え!?どういうことですか?」


「この戦場跡の規模じゃ、最低でもスケルトン戦士がわんさか出てこなきゃおかしい。なのに、ここは静かすぎる。戦場跡の死の力が、強大な何かを生み出そうと、蓄えられてるかもしれねぇ」


「まさか!?御伽話で出てくるような吸血鬼とか?」


「ああ、そのまさかだ」


「はっ、速く逃げねぇと」


俺たちは全力で北に逃げた。その判断が正しかったかわからんが、無事ヴァインセンに辿り着いた。疲れ切った俺たちは、馴染みの酒屋で休む事にした。


数時間後、他の傭兵団がどうなったか探らせていた部下の一人が、遅れて合流して来た。


「親分、ウェルド団がまだ帰って来てないみたいっす」


「そうか・・・・」


ウェルドは、傭兵兼戦場漁りをする、俺たちみたいな傭兵団では珍しく、信義に厚い良い奴だった。俺は気まずい沈黙の中、酒を一息に煽った。もう少し危険に気づくのが遅れれば、帰ってこれなかったのは俺達だったかも知れねぇな・・・。そう思うとゾッとする。


ずっと、奥の上客へ接客をしていたマスターがこっちに来た。


「バッサス団長、これを」


メモを受け取った。


「すまねぇ、ちょっと離れる」


部下達に離席を伝え、俺はメモに書かれた待ち合わせ場所に向かった。


「久しぶりだな、バッサス」


「ヴァインセン卿、お久しぶりです」


「硬いな、アレンで良い」


「・・・アレン、無事で良かった」


「レバン平原での戦いは激戦だった。この通り矢傷で片腕が動かん、情けない話だ」


「大敗したと聞いた」


「ああ、無念だ」


「それで、色々と忙しいのに、俺が帰郷したから会いに来たって訳でもないだろ?何が聞きたい」


「まず、息子の遺髪を届けてくれたのが君だと聞いた。・・・ありがとう」


「そのぐらい何でも無いさ・・・。その・・・、なんだ・・・俺もレバンの戦いに参戦すれば良かった」


「お前はもう王国の人間じゃ無い、気にする必要は無いさ」


俺は14の時に、貴族同士の政争に巻き込まれ、家族でミュールズ公国に移った。それまで我が家は代々ヴァインセン家に仕えてきた、俺も幼い事はアレンとヴァインセンの屋敷で遊び回っていた。懐かしい記憶だ。


「だけど、ここは俺の故郷だ」


「仕方ない事だ。公国が自国の傭兵達に、王国への参戦を禁じたのは聞いている」


俺がレバン平原の戦いに参戦出来なかった理由を、旧友が知ってくれているのにほっとしてしまった。そんな自分が情けなかった。俺が勝手に参戦すれば部下たちも連座で罰を受けるかもしれない。


「・・・すまない」


「いいんだ。お前にも立場があるだろう。所で戦場跡はどうだった?アンデットで溢れていたか?」


「取り繕わずに言う。最悪だ、気味が悪い程、弱いアンデットしかいねぇ」


「それは・・・、まずいな」


「レバン平原は蓄えらた死の力で、エルダーリッチ、フェラルグールが出てきてもおかしく無い状況だった。そうなればこの地方は終わりだ」


「バッカス、取り繕わず言うと言ったでは無いか、正直に聞きたい吸血鬼が出る可能性はあると思うか?」


アレンは俺が最悪な予想を、話していないと察してきた。彼はこの一点でも名君の素養があるのだろう。あくまで俺の経験でしかないが最悪の予想を話すべきだろう。クソ・・・べレトの奴がいれば俺が相談したい位だ。


「それは・・・そうだな・・・出るかもしれない」


「そうか・・・。王国は滅ぶのだな」


その言葉が俺の胸にグサリと突き刺さった。そうだな・・・王国は滅ぶ・・・公国も、帝国のかなりの地域も被害に遭うだろう。


「その・・・・ミュールズに逃げねぇか?お前とお前の一族位なら俺がなんとかできるぜ」


「民を守る為、誇り高く戦場で息子は命を落とした。なのに私だけ助かれと言うのか?」


「だが・・・死ぬとわかって友を置いてなんて行けないだろう」


「なら、家族を頼む、私は残る。先祖が多大な犠牲の上で、切り拓いた土地だ。当主の私が逃げては、あの世で先祖に顔向けできない」


「わかった・・・、家族は必ず無事にミュールズに送り届ける」


別れをすませて酒屋に戻った。


「親分、大丈夫ですか」


俺が血色の悪い、青い顔にでもなっていたのだろうか、部下が心配して声をかけてきた。


「ミュールズへの護衛の依頼を受けた、明日の昼にはこの地を立つ」


「・・・わかりやした、準備しやす」


団が解散した後も、俺は酒場で酒を飲み続けた。旧友を失うのだ、酒でも飲まなきゃやっていられないだろう。

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