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12_王都発ヴァインセン行普通馬車

朝起きるとメアがまだ地図を見ていた。ひょっとして、俺が寝てからずっと見ていたのか?


「メア、おはよう」


「眠れたか?」


「ああ、ぐっすりだ」


暫くベットの上で微睡んでいたら、メーメルが起こしに来た。


メーメルは顔を真っ赤にさせながら、メアを呼んで部屋を出て行った。男女が同じ部屋で一夜過ごしたら、誤解もされる・・・か?


まー、俺とメアとの間でそんなドキドキイベントが起きるわけないのにな。俺がメアに求愛しても「何だ、それは?」って返されるのがオチだぞ。


二人が戻ってきた後、朝食を食べた。その後、俺とメアは王都を出る準備の為に、買い出しに出た。昨日メーメルに案内された店で、服や食料など諸々を買った。


買い出しした物資は、登山バック位デカいリュックでメアが背負っている。俺が背負おうとしたらメアに「私は疲れないから、私が背負う・・・速く渡せ」と言われリュックを奪われたのだ。男として、大量の荷物を背負った女を隣に歩かせるのは、周囲の目線が痛かったが、メアにそれを言っても伝わらないと思って言うのは諦めた。


まー、周りにはメアの方が背も歳も上に見えるだろうから、甘やかされた弟と働き者の姉に見えてるかもしれないけど。


メーメルの家に戻ると、フランシスさんがいた。どうやら身分証、通行証等、各種書類が出来たみたいだ。親切にフランシスさんは、どの書類を何処で使うか俺に説明してくれた。


「それでは、今まで説明した内容は、この紙にまとめてあるので、わからない事があればこの紙を確認してください」


フランシスさんはなんて親切なんだ。彼はかなりのしごできみたいだ。メーメルもそうだが、この年齢で責任のある仕事を任せられバリバリ働くのは、キール商会の社風なのか?それともミュールズ公国の国柄なのか、どちらにしても素直に感心出来る事だ。


「ルーシア、ヴァインセンに着いたら、現地の商会にも顔を出して欲しい。何か新しい情報が入ったら、支店長にあなたに伝える様に言っておくから」


「ありがとう、メーメル」


「私が着いて行っても良いんだけど」


「流石にそれは遠慮しておくよ」


メーメルは行方不明から昨日帰ってきたばかり、その上、昨日、今日と俺達の世話で忙しかったはずだ。仕事とかやらないといけない事が、彼女も溜まっているだろう。


二人はわざわざ城門まで送ってくれた。そして、なんと馬車まで用意してくれていた。メアに馬を出して貰って移動しようかと思ってたのだけど、ここは彼女たちの好意に甘えるとしよう。


「ではベレト、失礼が無いように、二人を無事にヴァインセンまで頼むわね」


護衛の隊長らしい人にメーメルが念を押していた。


「任せてください!メーメルさんの仕事でヘマしたら、後が怖いんで、全力でやりまさぁ」


「ちょっと!その言い方じゃ私が普段怖い人だと、思われちゃうでしょ!」


彼の発言が、こちらに聞こえていなか気にしたのか、メーメルはこちらを振り向いて確認しながら小声でベレトに注意していた。俺は気を使って聞こえないふりをした。その位の気は使えるのだ。


ヴァインセン行の馬車には俺とメアが乗り、護衛が5人も着いてきた。厚遇を受けてしまった、いずれ何かの形で商会に報いる必要があるな。


護衛隊長のベレトから、ヴァインセンまでの旅程を説明された。途中、二つの街を経由するそうだ。街以外では、基本、夜は街道沿いに野営するそうだ。街道は道幅が狭く、ガタガタしていて、治安も良くないようだ・・・。まー、前世の道と比べては可哀想か。


最初の野営の夜、俺はメアを呼んで、馬車から少し離れた所に移動すると伝えると、ベレトからは何かあったら鳴らしてくれと笛を渡された。声も聞こえないくらいの距離を取った。


「メア、例の軽騎兵を1体出してくれないか?」


「いいぞ、少し待て」


メアは少しの間目を瞑ると、手をかざした。すると紫色の光が輝き、軽騎兵のメアが作られた。軽く体を叩いてみると、頑丈そうな金属音が出た、かなりの重量がありそうだ。


「どのくらいのスピードが出る?」


「時速60km、不整地で40kmくらいだ、前も言ったが、重いから沼地では埋まってしまうぞ」


馬だけに埋まってしまうんだな。なんてくだらない事を考えながら、ふと、この騎兵のデザインはメアが考えたのか気になった。


「なぁ、メア。このデザインはメアが考えたのか?」


「他に誰がいる」


「いや、そうならセンスが良いなと」


他の戦闘用のメアもそうなのだが、男の心に刺さる非常にカッコの良いデザインなんだ。無感情そうなメアがデザインしたとなるとメアの印象が変わってくるな。


「私は美醜にうるさいぞ。だからデザインにも拘る。お前が私の作った物をカッコよく思うのは当然だ」


メアはドヤ顔でこっちを見てきた。


「じゃあ300体作って、ゴブリンへの騎行作戦を開始してくれ」


「わかった。王国の地形は完全に頭に入っている、任せろ」


メアは自信満々にそう答えると、300体の軽騎兵を出した。これだけいると壮観だな。メア達は東に向かって駆けて行った。それにしても、昨日、一晩中地図を眺めていたのは、このための準備か?そうだったらメアは偉いな・・・。


その後、野営に戻り食事を取って寝た。


途中の街ではメアと散策に出たりした位で、特に特筆するような出来事は無かった。

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