11_メアの陰謀
私の不安はまったくの杞憂だった。彼の反応は完全に私に好意を持っていそうな反応だった。
安心した。危うく私のプライドがズタズタにされる所だった。
二人に王都の案内をするのに、自然と私は彼の隣を歩き、どこにどんな店があるか等を彼に説明し、メアが私達の後ろを着いてくる形になった。だけどメアさんに不満は無さそうだった。彼女は無表情であまり何を考えてるかわからないのだけど。
だから、ルーシアが酔い潰れてメアさんと二人になった時に、二人の関係を確認する事にした。
「メアさん、重く無いですか?」
「この位、全然余裕」
彼を担ぎながら、ドヤ顔でこちらを見てきた。彼女の無表情以外の唯一の表情だ。
「今日はごめんなさい。案内のためだけど、彼の隣をずっと歩いて喋ってしまって」
「ん?別に良いぞ」
「・・・えっと、お二人ってどういう関係なのかしら?」
「ルーシアは命の恩人」
「その関係はわかるのだけど、その・・・彼を好きだったりするの?」
はっきりと聞いてしまった。もっと遠回しに聞けば良かったと言ってから後悔した。アルコールのせいか少し冷静じゃなかったみたい。
「好きだぞ」
「それは異性としてかしら?」
「異性?」
「そう、恋愛対象としてどうかと」
「メーメルはルーシアと交尾したいのか?」
「はっ!?え?」
「違うのか?」
心臓が信じられない程バクバクする。なんて事を聞いてくるの。別に、そういう話に耐性が無い訳じゃないけど、聞き方ってものがあるでしょ・・・。突然でびっくりした、でも落ちついて確認しなきゃ。
「仮にそうだったら・・・。メアさんは嫌じゃないの?」
「なぜ?私が嫌がる必要がある?そういうものなのか?」
「いや・・・、彼を盗られる様な感覚とか?」
「別にルーシアが嫌がらなければお前の好きにすれば良い。私もルーシアが、私と交尾したいと言うならさせるつもりだ」
「え〜と、メアさんの故郷ではそれが普通なのかしら?」
「普通じゃ無い。私はルーシアがしたいことをするだけだ」
解決した様な、してない様な、文化の違いなのかしら?
帝国の南の砂漠の民の間では、夫一人に妻が何人も居るのが普通の国もあるし、北方でも貴族であれば血を残すのに側室を持つのが一般的だ。
「では、メアさんの好きって、どんな好きなんですか?」
「お前の好きな物はなんだ?」
「え〜と」
急に聞かれて困ってしまった。なぜか、いつもの商談の時の様な、当たり障りの無い回答をしてはいけない様な予感がする。
「昼間、ルーシアにあげた金貨はどうだ?」
「勿論、それは・・・好きだけど」
どちらかと言うと金自体よりは、金を稼ぐ為に働くのが好きなんだけど、ややこしくなりそうだからあえて言わないでおこう。
「なぜ好きなんだ?」
「働いた成果で、あれば殆どの物が買えるからかしら」
「それはお前が知恵を持ってからだ。最初はどうしてだ」
最初って何かしら?何か哲学的な話かしら、それとも宗教的な事?私が回答に困ると、メアが吸い込まれそうな瞳で私を見ながら言った。
「お前の親や家族、周りの者が金を好きじゃなかったか?」
なるほど、言われてみればそうかも知れない。
私も女として人並みに花が好きだったりする。だけど、なぜ最初に好きになったかといえば、母が好きだったからその影響だったかも知れない。
「確かに・・・そうかも」
「お前はルーシアと交尾したい様だから特別に教えてやる」
・・・否定すると後々面倒になりそうだから、ここは黙って聞こう。
「私がルーシアのため、世界が終わるまで尽くすのは命の恩人だからだけじゃない」
「では・・・なぜ?」
「宝物だからだ」
私が花や金貨を好きなように、ルーシアを宝物として好きって事・・・?
「ルーシアが?」
「だから大切にする。決して私から離れて行かないように、だからお前がルーシアと交尾するのも歓迎だ」
「それは何故?」
「最高の宝は単独であるより、周りを宝で囲われていた方が見栄えが良い。お前は特に見た目が良い!だからルーシアの隣に飾るのに相応しい。きっと生まれてくる子供も美しいだろう」
私も商人だから、蒐集家とは良く取引をする。
商談の為に、蒐集し逸品を飾る自慢の部屋を見せてもらう事も良くある。彼らはとても嬉しそうに、自分の集めた宝を自慢する。この絵画をここに飾ると、この花瓶が映えてとかなんとか。
メアから彼らの様な狂気を感じる。
でもそれなら、
「なら何でルーシアに尽くす為にここまで来たの?ルーシアが大事な宝なら、あの島に隠して、メアさんだけで他の宝を探しに行っても良いじゃ無い」
「それは悩んだ。けどルーシアがしたい事をした方が良い」
「メアさんの目的からしたら、それはリスクでしかないじゃない?」
「・・・これ以上はまだ教えてやらない。お前がルーシアの子を孕んだら教えてやる」
メアさんはそう言うと、これ以上話すことは無いと言わんばかりに正面を向いて歩き始めた。
彼女は独特の価値観を持って生きているのね・・・。私もたまに人から天才で変わっていると言われることがあるけど、彼女は天才魔法使いとして、私から見ても相当変わってる人にみえる。それにしても孕んだらって何よ・・・。
でも、殿方を籠絡しようとすれば、そういう行為も必要かしら・・・。私は何をするにも完璧な準備をしてから始めたいタイプなのだけど、そういった経験は今まで無い。必要になるとも思っていなかったし、でも、どうしましょう・・・。私が行為が下手で彼に嫌われたら・・・。
友達とはそう言う話も普通にするけど、男の人は行為の際に反応が悪い女を嫌うと聞いた事がある。私がそうだったら・・・。また経験した事が無い不安が押し寄せてきた。
そんな事を悶々と考えながら家に着いた。
まずはそういう行為の事は置いておいて、料理を作りましょう!料理は得意!殿方は料理が得意な女性を好きなはず、悩んでも仕方ないことは悩まず今出来ることをしましょう!
そう考えを振り切って私は調理を始めた。
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大量の死体の上に立っている。空は淀み、大地は穢れ、光は消えかけていた。あらゆる地上の生命の希望は断たれ、滅びは目前だった。
だが父は敗れた。私は戦い続けるべきだろうか?
散々、迷ったが、矛を収めた。
ついぞ戦い続ける理由が見つからなかったからだ。
父は・・・なんで戦っていたのだろうか・・・?
幸い時間だけは永遠にあった。なので考えた、自由になった時、何をしようか、何がしたいかを。
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