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14、薬師はちょっと大変

 楽しい日々は川のように早く流れて行ってしまう。従者の仕事も今日で終わりだ。そして、今日からは次の新しい仕事だ。今回もシルさんやエーリカさんみたいに優しい上司だと良いな。『薬師(くすし)・グレイク』と書かれた看板が入り口の上に付いていた店に入った。


「あの...。」


「どうしましたか?」


「先日、人手が欲しいと聞いて、ここで働こうと思いまして。」


「...この前の方ですね。エーリカ姫から伺っていますよ。それではどうぞ。」少し私の顔をまじまじと見てから、手をポンと打って言った。


「っ!」


「どうしましたか?」


「いえ、何でもないです。」まさかエーリカさんがここにも手を回してくれていたとは驚きだった。確か、次の仕事は薬師(くすし)だと言っただけなのだが。


「では、こちらへ。」


「はい。」




 お店の奥にある暖簾(のれん)のようなものをくぐると、倉庫のような部屋があった。両脇に棚がずらっと並んでいて、中央の奥に机がポツンとあった。何だか、お店の方とは違って寂しい部屋だった。ちょっと薄暗くて、夜はここに入りたくない。


「ここが調合室です。」


「調合室というと、薬を作るところですか?」後々のことも考えると、やっぱり新しい仕事を始めた時には、分からないことは片っ端から聞いた方が良い。


「そうです、試しにやってみます?」


「お願いします。」


「では、このザイレン草で試してみてください。上手くできれば、体力回復剤になりますよ。」店長さんは、はいと緑色の草を渡してくれた。少し変な青臭かったが、頑張っていればそのうち慣れるだろう。


「はい!」


「魔力を込めながら、このすり鉢で草を潰してみてください。」手慣れた手つきでザイレン草を小さく切り分けて、すり鉢の中に入れてくれた。


「分かりました。」


「私は店番があるので失礼します。」手についたザイレン草の汁を布でふき取ってから、この倉庫のような調合室から出て行った。




 私も薬を自分で作るのは分かっていた上で薬師になった訳だが、思っていたよりも過酷だった。すりこぎを持つ右手も、すり鉢を抑える左手もだんだんと痺れてきた。追い打ちをかけるように、ザイレン草の青臭い匂いがだんだんと強くなってきた。


「あぁ、もうダメだっ!」


「1回、この部屋から出ないと。」


「どうですか?」部屋のドアを開けると、店長さんが目の前にいた。


「いえ、ちょっと...。」


「うわっ、スゴいですね...。」


「すみません。」店長さんもこの驚き様、体が熱くなってきているのが分かった。恥ずかしすぎる、穴があったら入りたいとはこの事か。


「ところで、ジョブのランクを聞いても?」


「あぅ!」そうだ、私にはジョブがあったのだ。どうりで上手くいかない訳だ。今の私のジョブは従者のままだったのだから。


「何か?」


「いえ、ありがとうございます。頑張ってみます。」


しっかり調合室の扉を閉めて、2回戦の始まりだ。今回は前回のようにはいかない。何せジョブを薬師に変えたのだから、それなりのものができないと八方塞がりになってしまう。さっきまでのは脇に置いといて、新たに棚の袋からザイレン草を取り出して、すり鉢の中に入れた。


「よし、やるぞ。」


すり鉢で潰し始めると、さっきよりも早く表面が光ってきた。


手が疲れてくる頃合いになると、緑色の汁が少しずつ出てきた。さっきとは違って、匂いはあまりしない。


だんだんと緑色の汁の量が増えてきた。その水たまりの水面に、ザイレン草の欠片が所々浮かんでいた。


これ以上変わらないし、これで完成だろうか。薬というよりかは、ポーションとかに近い感じのようだ。


「あの...。」


「今回はどうしました?」


「良い感じにできたので、見ていただこうと思いまして。」今回は自分でも良い感じにできていると思う。何かこう、Aランクの勘のようなものだろうか。


「分かりました。」


「ありがとうございます。」




 店長さんは真っ直ぐ調合室に向かうのかと思ったが、そうではないようだ。レジのカウンターの下をごそごそして、何かを探していた。黙ってみていると、店長さんが立方体の何かを取り出した。1面だけ透明で、他の面は石みたいな色だった。


「それは何ですか?」


「これは鑑定装置だよ。この中に入れたものについて、詳しく知ることができるんだよ。」


「へぇ、初めて見ました。」


「使ってみようか。」


「はい。」


店長さんは私がザイレン草から作ったポーションを、その鑑定装置の中に入れた。そして、両手を鑑定装置のぴたっとくっ付けた。すると、透明だった面が青っぽく光りだした。


「さて、できたよ。」


「どうですか?」


「...。」店長さんは目をつむってから、鑑定装置を見たまま固まってしまった。


「どうしましたか?」


「いや...見てみな。」


「はい。」


私が鑑定装置を見ると、Aランク体力回復剤、と書いてあった。まあ、私は『ジョブ・薬師Aランク』だから、Aランク体力回復剤ができるはずである。うまく作れて本当に良かった。ジョブも変えたのにできなかったら、私にはどうしようもなかったから、余計に良かった。

さて、薬師の仕事はうまくできるのでしょうか?


まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。

もし面白いなと思っていただけたなら、ポイントやリアクションもお願いします。

今後とも八咫烏をよろしくお願いします。

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