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11、従者は忙しい

 夕食を食べ終わった後に、メイド長の人から、エーリカさんの従者としてやるべき事を書いた紙をもらった。メイド長さんは終始ぶっきらぼうだった。色々と部下に指示する役職の人は、ちょっと畏怖されているくらいがちょうど良いのだろう。その紙の第一項は『メイドは健康的な生活を送るべし』だった。前世からの習慣通り、職場のルールは守ることにした。


「おはようございます、エーリカさん。」


「あら早いわね、ハルヒ。」


「エーリカさんこそ、お早いですね。」


「私は小鳥に起こされただけですから。あなたは?」


「昔からの習慣です。」私は前世からの習慣で、夏も冬も関係なく、どうしても5時に起きてしまうのだ。


「中々珍しい習慣ですね。冬もそうなの?」


「はい。」


「へぇー、冬は暗くて寒いので、普通は6時半くらいまで寝るのが一般的なんですよ。」こんなちょっとした話題にスゴい食いつき様だった。そんなに珍しいのかな。


「でも、ホットレモンがあれば。」冬の時の私の相棒は、体も心も温めてくれるホットレモンだ。これを飲めると思うと、体が勝手に布団から出ている。


「...ホットレモン?」


「そうです。」


「詳しく聞いても?」エーリカさんは机から身を乗り出して、目をきらきらとさせていた。


「ええっと、ホットレモンというのは。」


「はい。」


「簡単に言うと、レモン汁とハチミツと水を混ぜて加熱するだけです。スゴい美味しいんですよ。」まだ春過ぎだけど、冬になるのが楽しみになってきた。


「今日、作れます?」


「ホットレモンは作れますけど、本物のは作れません。冬になるまではですが。」


「冬じゃないといけないのね。」さっきまで私の顔を見ていたエーリカさんが、机に視線を移した。心なしか、目の輝きが収まった気がした。


「そうですね。」


「朝食に行こうかしら。ハルヒも一緒にどう?」


「私は従者としての━━」誘ってくれたのは嬉しいけど、初日から仕事をこなし切れないのはマズい。


「私の従者ですよね?」エーリカさんがふっと笑った気がした。


「そうですけど。」


「それなら、私の言うことは聞けるのよね?では、命令します。ハルヒは私と一緒に朝食を食べること。」


「分かりました。では、行きましょうか。」


ここで悔しそうな顔をするのは失礼だし、私も彼女と一緒に食べたかったから、何の不満も無かった。でも仕事関係だと、ちょっと気持ちにストッパーがかかってしまう。こればかりは癖だから何とも言い難い。




 朝食を食べ終えると、私は暇になってしまった。エーリカさんは勉強を始めてしまったし、従者といっても大してするべき仕事が多い訳じゃない。エーリカさんの近くにいるのが仕事なのだから、彼女が勉強している時はもちろん暇になる。


「いらっしゃい、新鮮な野菜だよ!」


「こっちは魚、活きの良い魚だよ!」


「ちょっと見ていたらどうだい。女性に大人気な宝石だよ!」


「切れる、頑丈、安い武器が欲しいなら、うちの武器屋一択だよ!」


「仕事に行くなら、うちの弁当を買っていきな!」


商店街に入った瞬間、また異世界に転移したと錯覚しかけた。それくらい、サンディさんが村長をしていた村とは一変して、それぞれの店がお客さんを集めようと、声を張り上げていた。


「少しでも具合が悪いなら、この『薬師(くすし)・グレイク』だよ!」この声が私の体にしっかり届いた。


「あの...すみません。」


「ん、どうした?」


「ここの商店街は人手不足で、人手を探しているんですよね?」朝食を食べている時に、エーリカさんが私に教えてくれた情報だ。この代償に、従者を2週間すると約束することになったが。


「そうだな、どこの店も欲しがってるよ。」


「では、この店も?」


「ああ、そうだよ。」


「ありがとうございました。また2週間後に来ると思います。その時はよろしくお願いします。」


「分かったよ。」


私の次の雇用先は決まったとみて良いだろう。この商店街が人手不足で助かった。おかげで、ここにいるだけで色々な仕事を体験できる。




 それから商店街をぶらりと回っていると、何となく10時になった気がした。エーリカさんの勉強が終わる時間である。従者なら、勉強し終わったエーリカさんと一緒にいるべきだろう。


「エーリカさん、待ちましたか?」


「いえいえ、今終わったところですよ。」読んでいた本に枝折(しおり)を挟んで、昔側の席に手を差しのべながら、私に目を移した。


「失礼します。それで、勉強はいかかでしたか?」


「そうね、まずまずといったところね。」読んでいた本を一瞥(いちべつ)してから答えた。


「何を学んでいるんですか?」


「今は魔法学かしらね。その中でも、魔力制御や魔法詠唱のあたりですね。」


「スゴそうですね。私なんて、聞いただけで寒気がしてきましたよ。」やっぱり良家のお嬢様はスゴいことを学んでいるらしい。きっと将来を見据えた布石なのだろう。


「では、ハルヒ。私に昼食を作ってくれませんか?」


「分かりました。」あんな笑顔で頼み事をされて断れるはずがない。それに、私は彼女の従者だし。


キッチンに入ってみると、私に割り当てられた部屋からも想像はできたが、立派なキッチンだった。広いだけでなく、料理道具がずらりと並んでいるし、使いやすそうな配置だった。まずは冷蔵庫を見てから、何を作るか決めることにした。

さて、従者の仕事は何をするのでしょうか?


まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。

もし面白いなと思っていただけたなら、ポイントやリアクションもお願いします。

今後とも八咫烏をよろしくお願いします。

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