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10、仕事は従者になりました

 お馬さんが歩くままに進むと、気付いたら目的地のフォルティアに着いていた。本当に頭の良いお馬さんだった。何せ、道をしっかりと覚えているんだから。そんなお馬さんとも、これでお別れだ。


「今回はありがとうございました。」


「いえ、お気になさらず。」


「少し今からお時間がありますかね?」


「?」


「実は、依頼主の方がぜひ会いたいと言っていまして。」


「良いですよ。」見ず知らずの私に会いたいと言ってくれたんだ。断る理由なんて無い。


「それは良かった。では。」


「あ、少し待っててください。」大切なことを忘れるところだった。私もお礼を言われる前に、お礼を言わなければ。


「お馬さん、ここまでありがとね。」


ヒヒーン


「じゃあ、またね。」


ヒヒーンと、歩いていく私に向かってもう1度鳴いてくれた。いつもより鳴いている時間が少し長かった。きっと私を応援してくれているのだろう。




 商人さんに連れられ歩いていくと、立派なお屋敷に着いた。さすが商人に直接ものを運ばせるだけのことはあった。前世のとは違って、ただ建物が大きいだけじゃない。建物の何倍もの大きさの庭が広がっていた。映画の中で見たヨーロッパの貴族屋敷みたいな感じだった。


「スゴいお屋敷ですね。」


「そうだろ、いつ見ても美しいんだよな。」商人さんも溜め息を付きながら、色とりどりの花が咲いている庭を見ていた。


「そうですね。季節によって庭の顔が変わりそうですね。」


「ここに来るのは楽しみだったんだよ。君のおかげで、今回も見ることができた。本当に、ありがとう。」


「頭を上げてください。依頼主さんに会うのでしょう?」


「ああ、そうだったな。こっちだ。」


商人さんについていくと、庭の一角にあるバラ園が見えてきた。きれいな色とりどりのバラが咲いていた。いい匂いもするし、人生で1回くらいはこんな所に住んでみたい。バラを見ながら歩いていると、バラに負けず劣らず美しいものがあった。


「あの女性が?」


「そう、依頼主の方だよ。私はここまでだから、あとは楽しんできな。」


「はい。」


「こんにちは。」小鳥がさえずっているのかと思うくらい、きれいな声だった。何か、とんでもない良家のお嬢様とお茶を飲むことになったようだった。


「はい、こちらこそ。今回はお招きいただきありがとうございました。」


「いえいえ、私からお誘いしたので、お気になさらず。では、どうぞ。」お嬢様が向かいの席に手を差しのべた。何か美味しそうなお菓子もあるけど、こんな状況じゃ楽しめないなぁ。


「では、失礼します。」




 何か居心地が悪かった。前を向くと、可愛いお嬢様がふっと笑いかけてくるし。横を向いても、何か失礼な気がしてくるし。結果的には、紅茶の液面に映った自分とにらめっこすることになった。


「お名前を伺っても?」


「ハルヒです。その...今日はどんなご用で?」


「御者の件、本当にありがとうございました。今日中に必要だったので、とても助かりました。あっ、申し遅れました、私はエーリカです。」


「よろしくお願いします。」


「肩の力を抜いてください。今はティータイムを楽しみましょう。」エーリカさんの優しい声が私を包みこんできた。頭がフワァとなる感じがした。


「そうですね。」


「では、敬語も止めてくださいね。」


「分かりま...分かったわ。」


エーリカさんがフフッと笑い始めた。普通に恥ずかしいけど、何か可愛い笑顔が見られて、それもそれで悪くない気がした。


「どうしましたか?」


「いえいえ、ちょっと可愛いなって。」


「そうでしたか...。」


「はい、とても。さて、本題に入りますが、これからのご予定は決まってますか?」


「まずは、仕事を探そうかなと。」


「私の従者になりませんか?やはり、同性の方が色々と話しやすかったりもしますし。もちろん、おイヤでなければで良いんですが。」


「では、仕事が見つかるまでの期間で良ければ。」こんな可愛い顔で見つめられて断れる訳が無い。まったく、反則技の使いすぎだと思う。


「まあ、私嬉しいです!」


「それなら良かったです。」


「では、早速参りましょう。」サッと椅子から立ち上がって、私の手を掴んで引っ張ってきた。私がどぎまぎしている間に、気付いたらお屋敷の前に着いていた。




 エーリカさんにお屋敷を案内してもらった。キッチンから大広間やエーリカさんの部屋に至るまで、この家を隅々まで案内してもらった。私は広すぎて、この屋敷の中で迷子になりそうだったが。


「ここがハルヒさんの部屋です。仕事は明日からということで。」


「はい、分かりました。」


「では、明日を楽しみにしてますね。私は学問をする時間なので。」


「頑張ってくださいね。」


「はい。」


エーリカさんに手を振ると、彼女は私に手を振り返しながら歩いていった。彼女の背中が見えなくなると、自分の部屋がどんな感じか確認することにした。ここに数週間は住むんだから、ちょっとした小物とかが必要になるだろう。


「スゴいな...。」


私は従者なのに、部屋が普通にきれいだった。


(このベッド、ふかふかで大きいし)


(棚には、何気なく小さな気の彫刻があるし)


(机の上にも、立派な時計があるし)


何かとんでもない家に来てしまったということだけは分かった。そして、そのスゴいお金持ちのお嬢様がエーリカさんという訳だ。従者の仕事は全く分からないが、折角誘ってもらったので頑張らなければ。

さて、従者の仕事は何をするのでしょうか?


まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。

もし面白いなと思っていただけたなら、ポイントやリアクションもお願いします。

今後とも八咫烏をよろしくお願いします。

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