8. 冒険者登録その前に
美女との同居生活が始まりました。
なお、相手は剣です。
ううん……
窓から差し込む光で意識が浮上する。
久しぶりのベッドだったが、
どうにもあまりぐっすり眠れなかった。
「おはようございます、マスター。昨日はよく眠れましたか?」
ベッドのすぐ隣から声が聞こえる。
……これが原因だ。
服装は自由に変えられるのか、
レーヴァは白く薄手で丈の短いネグリジェのようなものを身にまとっていた。
男としては目のやり場に困る。
「今日中に二人部屋に移るからな」
「そうですか?
私はこのままでも構いませんが。
私はマスターの剣として、
常に肌身離さずお側にお仕えする義務がありますので」
そう言って柔らかく微笑む。
惚れてまうやろ!?
……いや違う。
この子は剣だ。
剣なんだ。
そう自分に言い聞かせる。
「大丈夫ですよ」
何が大丈夫なのか教えてほしい。
「さあ、着替えるから向こう向いてて」
「はい、分かりました」
レーヴァが素直に壁の方を向いたのを確認し、
僕はため息をつきながら服を着替える。
服もそのうち買わないとな。
そんなことを考えていると――
(……焦らず、ゆっくり私の魅力を分かってもらいましょう……)
後ろからそんな声が聞こえた気がした。
……。
…………。
「おい兄ちゃん、連れ込みは勘弁してくれよー」
宿の主人――若くしてこの宿を継いだマットさんにそう言われ、
僕は平謝りした。
「すみません、代金は払いますので。
というか連れ込んだんじゃなくて押しかけられたんです」
「おいおい、
こんな美人に押しかけられるなんてありえないだろ」
「はい、押しかけ女房なんです」
「女房じゃないから」
「……事情は分かった。
タインさんの紹介でも、金は払ってもらうぞ」
レーヴァが剣の姿ならそもそも料金はかからないのだが、
ちらりと見ると知らん顔をしている。
絶対わざとだ。
「もちろんです。
二人部屋に移れますか?」
「おう。金さえ払えば構わんが、
部屋は汚すなよ?」
「……汚す?」
「うちはそういう宿じゃねえからな」
意味を理解して顔が熱くなる。
「汚しません!!」
その日の夜から、
少し広い二人部屋へ移れることになった。
……これで少なくとも、
今夜は安心して眠れるだろう。
たぶん。
「さて、これからの方針なんだけど……
やっぱり冒険者になるのがいいかなと思ってる」
宿に併設された食堂で朝食をとりながら、
僕はレーヴァに相談した。
今日の献立は、
硬めのパンと野菜のごった煮スープ。
レーヴァは向かいの席で、
慣れた手つきでパンを切り分け、
スープをつけて上品に口へ運んでいる。
……普通に食べるんだな。
本当に剣なのかこの子。
「よろしいかと思います。
私がいればどんな外敵からもお守りできますし、
マスターには才能があると思います」
「じゃ、じゃあ食べ終わったら早速向かうか」
レーヴァの声で我に返り、
慌ててそう返した。
「それで、マスターはどういった職業で登録されるのですか?」
「職業?
魔法使いとか戦士とか、そういう?」
「はい」
「うーん……
魔法は使えないし、
戦士とかになるのかな」
「そうですね。
やはりマスターは、
私のマスターとして剣士になるべきです。
間違いありません」
やたら推してくるな。
……でも、
言われてみればその通りかもしれない。
こんな剣を持つなら、
剣の腕も磨くべきだろう。
「そうだな、いいかもしれない」
「はいっ。
それは良い決断です、マスター」
レーヴァは満面の笑みで頷き――
「では、まずは剣を買いに行きましょう」
「……えっ?」
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最強の剣と剣を買いに行くとはこれいかに?
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