7. 彼女の正体
ついにヒロイン(?)登場です。
なお、剣です。
思わずパタリとドアを閉める。
そしてもう一度部屋番号を確認した。
三階の一番角部屋。
間違っていない。
何より、
自分の鍵でちゃんと開けて入ったのだ。
……気のせいか?
いや、だとしても随分と強烈な幻だ。
そう思いながら恐る恐るドアを開けると――
やはり、
見覚えのない超美人が部屋の中で待っていた。
相変わらず綺麗な笑顔だ。
……だが、
心なしか眉が上がっている気がする。
「っと」
次の瞬間、
その美人に手を掴まれ、
部屋の中へ引きずり込まれた。
「えっと……」
僕がまごついていると、
「座ってください」
そう言われたので床に座ろうとすると、
「そこではありません」
違ったらしい。
部屋を見回しても、
あるのはベッドとサイドデスク、
据え置きのクローゼットくらいだ。
仕方なく、
促されるままベッドに腰掛けた。
……それにしても。
すごい美女である。
年齢は十八歳くらいだろうか。
大人になりきる直前の、
少女と女性の境目にあるような美しさ。
肩まで伸びた真っ赤な髪。
同じく真紅の瞳。
色だけ見れば活発そうなのに、
全体の印象はむしろ清楚でおとなしい。
肌は透き通るように白く、
絵画から天使が抜け出してきたようだった。
絶世の美少女。
そう呼ぶしかない。
しかも、
顔だけではない。
白地に赤の意匠が施された、
金属とも革ともつかぬ不思議なワンピース状の鎧。
引き締まった腰。
白に包まれたしなやかな脚。
胸元は――
少し心許ないかな?
などと上半身へ視線を向けたところで、
「コホンッ」
可愛らしい咳払いで意識を引き戻された。
「はじめまして、マスター」
彼女は優雅に一礼した。
「私が貴方のしもべにして、
神々の黄昏を穿つ神剣レーヴァテイン。
レーヴァとお呼びください、マスター」
「えっ」
……そう来たか。
心の中でそう呟くのが精一杯だった。
「じゃあ、本当に君は剣だっていうの?」
「はい、マスター」
レーヴァはベッドの上、
僕のすぐ隣に腰掛けながら答えた。
近い。
近い近い近い。
なんだこの距離感。
しかもいい匂いがする。
やばい。
僕がそっと距離を取ると、
間髪入れずレーヴァも距離を詰めてきた。
……逃がす気がないらしい。
顔が熱くなるのを感じながら、
僕は質問を続けた。
「証拠みたいなものってある?
例えば剣の姿に戻るとか」
「可愛くありませんので」
「え?」
「可愛くありませんので」
淡々と繰り返された。
「えっと……」
僕が困っていると、
「では、こういうのはいかがでしょう」
そう言って、
彼女の右手が紅く輝く。
次の瞬間。
その右手は、
真紅の剣へと変化していた。
「切れ味をお見せしますか?
この建物くらいならすぐに真っ二つにできますよ」
「やめてくれ」
「そうですか?
良い機会だと思いましたのに」
怖いことを平然と言うな。
というか、
この建物ごと切ったら僕も危ないだろ。
「私がお守りしますので大丈夫ですよ、マスター」
……なんで考えてることが分かった?
「ふふっ。
マスターは分かりやすいですね」
そう言って彼女は微笑んだ。
普通じゃない。
腕が剣になる少女など、
どう考えても普通ではない。
……信じるしかないのか。
目の前のこの子が、
レーヴァテインなのだと。
「そういえば、
人の姿になれるならなんで今まで出てこなかったの?
もっと早く姿を見せてくれてもよかったのに」
「それは……」
レーヴァはそこで口ごもった。
珍しく、ほんのわずかに目を逸らす。
「それは?」
「……マスターが全裸でしたので」
「あっ」
そうだった。
そんな変態がいたわ。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
どれだけ美少女でも、
正体が神剣だと情報量が多すぎます。
レーヴァとの初デート(?)先は、まさかの武器屋。彼女がマコトに突きつけた『ある条件』とは……?
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明日は第8話・第9話を投稿します。
更新は毎日20時頃を予定しています。




