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71. エピローグ

マコト達の戦いはまだ始まったばかりだ!

 長い沈黙のあと。


 最初に口を開いたのは、

 折れた剣だった。


『……マスター』


「生きてたのかお前」


『ハイ』


 地面に転がった柄から、

 いつもの声が返ってくる。


『勝手ニ殺サナイデクダサイ』


「いや折れてたろ」


『折レテマス』


 セトはどこか誇らしげにそう言った。


『本体ノ

 オリハルコンコアハ柄部分ニアリマス』


「……なるほど?」


『刀身ハ損傷シマシタガ、

 ワタシ自体ハ生存シテオリマス』


「おお……」


 リンが感心したように呟く。


「じゃあ治るのか?」


『修理ハ必要デス』


「へー」


『修理、

 オ願イシマス』


「……ハイハイ」


 マコトは苦笑した。


 目的地が一つ増えた。


 ガンツ工房行きは確定だ。


――――――


 ふと、

 大広間に差し込む光が強くなった。


 見上げれば、

 厚く空を覆っていた暗雲が、

 ゆっくりと割れていくところだった。


 雲間から差し込む陽光が、

 崩れた都市を静かに照らしていく。


「……終わったんだな」


 マコトの呟きに、

 人の姿となったミスティが静かに頷いた。


「はい」


「長い、

 長い時間でした」


 その声音には、

 安堵と、どこか寂しさが混じっていた。


「マコト様」


「ん?」


「契約の前に、

 一つお願いがあります」


――――――


 ミスティに案内され、

 マコトたちは騎士団墓地へ戻ってきていた。


 その最奥。


 一際大きな墓標の前で、

 ミスティは立ち止まった。


「ここが、

 アルフレッドの墓です」


 マコトは静かに頷く。


 赤と青、

 二つの首飾りを取り出し、

 墓前へそっと供えた。


 地下なのに、

 どこからか一筋の風が吹く。


 それだけで、

 どこか二人が笑っている気がした。


「……ありがとうございます」


 ミスティが深く頭を下げた。


「二人とも、

 またどこかで……」


――――――


 墓地を後にし、

 アクアリスの外縁まで戻ってきた。


 眼下には、

 滅びてなお威容を誇る水都の全景が広がっている。


「では改めて」


 そう言うと、

 ミスティの身体を蒼い光が包む。


 次の瞬間、

 その姿は一振りの剣へと変わり、

 静かにマコトの前へ浮かび上がった。


『どうか、

 私をあなたの剣にしてください』


 マコトは迷わずその柄を握る。


 瞬間。


 蒼き奔流のような力が、

 腕から全身へ流れ込んだ。


 身体の内側を奔る魔力に、

 思わず息を呑む。


『契約、

 完了しました』


「よろしくな、ミスティ」


「はい。

 以後よろしくお願いいたします」


 人の姿へ戻ったミスティが、

 蠱惑的な笑みを浮かべる。


「ふん」


 レーヴァが鼻を鳴らす。


「言っておきますが」


「マスターの一番は、

 私ですからね」


 牽制するような声音。


 ミスティは柔らかく微笑んだ。


「ええ、もちろん」


「そんなこと、

 今さら言われなくても分かっていますよ」


「……ならいいです」


 少しだけ不満げに、

 レーヴァが視線を逸らす。


 増え続ける剣たちに、

 マコトは苦笑するしかなかった。


――――――


 ミスティが、

 眼下の都市へ静かに目を向ける。


「このまま残せば、

 いずれ誰かがまたここへ辿り着くでしょう」


「だから――」


 蒼き光が、

 彼女の身体から溢れ出した。


「この都市を、

 眠らせます」


 都市全体を包み込む蒼光。


 次の瞬間。


 大地が震える。


 崩れた城壁が、

 石畳が、

 街並みが。


 ゆっくりと、

 湖の底へ沈んでいく。


 すべてが終わった時、

 透き通る湖面の下には、

 静かに眠る都市の影が揺れていた。


 まるで、

 この街の記憶そのものを

 湖底へ封じたかのように。


「これで……

 終わりました」


 ミスティが静かに告げる。


「ミスティ」


 不意に、レーヴァが声をかけた。


「ええ」


 言葉少なに頷き合い、

 二人は同時に空へ目を向ける。


「……無粋ですね」


「本当に」


「どうしたんだ?」


 不思議に思って問うと、

 ミスティがさらりと答えた。


「覗きです」


「――まあ、

 次はもうありませんが」 


「……深く聞かない方がよさそうだな」


――――――


 ようやくアクアリスを離れ、

 帰路についたところで、

 リンが思い出したように言う。


「そういや馬、回収しねーとな」


「そうだったな……」


 足取りを早めて移動する一行。


 幸い、

 繋いでいた馬は無事で、

 呑気に道草を食っていた。


 馬車にも異常はない。


「よし、頼む」


「おう!

 マコト兄ちゃんも早く馬くらい扱えるようになれよ?」


「うるせえ」


 リンが御者台へ飛び乗る。


 その時。


「リン、

 そういえば」


 レーヴァがふと思い出したように口を開いた。


「マスターの呼び方が変わっていますね」


「私がいない間に、

 何かありましたか?」


 リンの脳裏に、

 至近距離のマコトの顔が蘇る。


「っ!?」


 リンの顔が一瞬で真っ赤になる。


「な、なんもねーよ!」


「私も気になりますね」


 ミスティが楽しげに微笑む。


「リンさん、

 ぜひ教えていただけますか?」


「だから何もねーって!!」


 騒がしいやり取りに、

 マコトは思わず笑った。


 ――戻ってきた。


 そんな気がした。


 マコトは最後に振り返る。


 遠く、

 水都が沈んだ湖の方角へ。


 あの底で眠る二人の安らぎを、

 ただ静かに願った。


「さて、行くか!」


「おう!」


「はい」


「ええ」


『了解シマシタ』


 一人と三本の剣が応える。


 目指す先は――


 迷宮都市ラビラリンズ。


 新たな旅路が、

 始まる。


now loading......

これにて一部は終了となります。

あとは次回予告みたいなものを1話用意しており、そちらでこのお話は一旦終了です。


マコト達の旅が打ち切りエンドにならないためにも、ブックマーク・評価などで応援いただけると幸いです。


ここまでお付き合いいただきましてありがとうございます。

望むべくは皆様との付き合いが続くことを期待しています。

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