70. 託された想い
一応ハッピーエンドでしょうか?
蒼い光が、
静かに明滅していた。
ミスティは崩れゆくエミリーの身体へ、
なおも力を流し続けている。
炭化した肉が再生し、
崩れた皮膚が繋がる。
辛うじて、
人の形を保たせていた。
だが。
その維持が限界に近いことは、
誰の目にも明らかだった。
『……やはり、
駄目ですか』
ミスティが静かに呟く。
その声に、
取り乱した様子はない。
ただ、
分かりきっていた現実を確認するような響きだった。
レーヴァが口を開く。
「当然です」
「無理をしすぎました」
「……どういうことだ?」
マコトの問いに、
レーヴァはエミリーを見る。
「本来、
ミスティの出力は私より下です」
「ですが」
紅い瞳が細まる。
「この女は、
ミスティの七割近い力を強引に引き出していました」
「七割……!?」
「ちなみに、
先ほどマスターが扱った私の出力は三割程度です」
息を呑む。
あれで、
三割。
「本来であれば、
こちらが負けていたでしょう」
レーヴァの視線が、
エミリーの胸元へ向く。
「ですが彼女は最後、
自分を取り戻しました」
「首飾りを見た瞬間、
出力が落ちたのです」
だから勝てた。
マコトは自分の幸運について理解した。
『……分かっていました』
ミスティが静かに言う。
『こうなれば、
もう戻れないと』
『ですが』
蒼い光が、
わずかに揺れた。
『それでも、
少しでも長く……
エミリーをこの場に留めたかった』
エミリーが、
小さく笑う。
「ありがとう」
「でも、
もういいの」
『エミリー』
「十分よ」
エミリーは穏やかに微笑む。
『……はい』
ミスティの声が震える。
「彼が待ってるわ」
その言葉に、
ミスティは静かに沈黙した。
エミリーはゆっくりとマコトを見る。
「少し頼りないけど」
小さく笑う。
「……あとはこの人に任せるわ」
「ミスティ、
今までこんな私に付き合ってくれてありがとう」
『……友達でしょ』
『当たり前よ』
蒼い光が、
静かに揺れた。
その瞬間、
ミスティルテインから光が離れ、
エミリーとの繋がりが断たれる。
エミリーの身体が、
ゆっくりと崩れ始めた。
だがその顔に苦痛はない。
ただ、
穏やかだった。
「ああ……」
ふと、
誰かを見つけたように顔を上げる。
「ずっとそばにいてくれたのね……」
「待たせてしまってごめんなさい」
後ろを振り返ると、
そこには金髪の青年が立っていた。
その後ろには、
騎士団の面々。
誰もが笑っていた。
「なんだ」
エミリーが、
泣きそうな顔で笑う。
「みんな……
来てくれたんだ」
青年が手を差し伸べる。
エミリーはその手を取った。
立ち上がったそこにいたのは、
傷一つない、
かつてのエミリーその人だった。
二人は並び立ち。
騎士たちと共に、
こちらを振り返る。
そして。
穏やかに微笑んだ。
次の瞬間。
光となって、
全員の姿が消える。
エミリーがいた場所を見る。
そこには、
赤と青、
一対の首飾りだけが残されていた。
誰からも言葉は出ない。
その時、
静寂を破る声が聞こえる。
『……マスター』
「!?」
全員が振り返る。
地面に置かれた、
折れたセトの柄――そこから。
『勝ッタ、
トイウコトデ宜シイノデショウカ』
「お前空気読めよ!!」
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
これにて一部のストーリーはほぼ終了です。あとはエピローグなどを残すのみ
二部以降も構想はありますが、続きを読みたい方はブックマーク・評価等で応援をお願いします。
反響いただければそちらも執筆しようと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。




