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68. 神剣ミスティルテイン

決着まで突き進みます。

 紅蓮の斬撃をまともに受けたエミリーの身体は、

 瓦礫を砕きながら大広間の壁へ叩きつけられた。


 崩れた石材の中に膝をつき、

 荒い息を吐く。


 全身が焼けるように痛む。


 だが、それ以上に胸を支配していたのは、

 理解できないという感情だった。


 どうして。


 どうして私たちが押し負けるの。


 私とミスティは、

 最強のはずなのに。


『エミリー』


 意識の奥底で、

 ミスティの声が響く。


 気付けば、

 蒼い光に満たされた心象空間に立っていた。


『これ以上は無理よ』


 ミスティが静かに告げる。


『限界を超えているわ。

 このままではあなたの身体が持たない』


「駄目よ」


 エミリーは即座に首を振った。


「ここで止まったら、

 全部終わる」


『でも――』


「アルフレッドに続いて、

 あなたまで失うわけにはいかない」


 ミスティの表情が揺れる。


 エミリーはその手を強く握った。


「限界を超えるわよ」


 その言葉に呼応するように、

 蒼き光がさらに膨れ上がった。


――――――


「おい……

 まだ立つのかよ」


 マコトが息を呑む。


 吹き飛ばされたはずのエミリーが、

 再び立ち上がっていた。


 その全身から噴き出す蒼き魔力は、

 先ほどまでとは比較にならない密度に達していた。


「……無茶をしていますね」


 レーヴァが低く呟く。


「完全に限界を超えています」


「ってことは」


「待てば自滅します。

 ですが――」


 レーヴァの言葉が途切れる。


 その視線の先で、

 エミリーが迷いなくミスティルテインを構えていた。


「……待つ気はねぇってことか」


 蒼き力が収束する。


 空間そのものが軋み、

 大広間の瓦礫が浮き上がり始める。


 その圧は、

 迷宮崩壊跡地でレーヴァの力を試した時を遥かに上回っていた。


「……ミスティ。

 そこまでやりますか」


 レーヴァが険しい声を漏らす。


 マコトは一瞬だけ背後へ目をやった。


 瓦礫の中で倒れたままのリン。


 そして、

 その傍らに置いた折れたセト。


 再び前を向く。


「……こっちも限界までやるぞ」


「仰せのままに」


 紅蓮の炎が噴き上がる。


 蒼と紅。


 二つの神威が大広間を二分した。


――――――


 身体は悲鳴を上げている。


 今にも壊れそうだった。


 それでも、

 エミリーの心に迷いはなかった。


 負けるわけにはいかない。


 この街を守るために。


 ミスティを守るために。


「大丈夫」


 ミスティルテインを握る手に、

 さらに力を込める。


「あなたは私が守るわ」


 蒼き力が臨界へ達する。


 レーヴァテインの力は圧倒的だが、

 限界を超えた私たちの力の方が上だ。


 勝利を確信したその瞬間。


 からん、と。


 乾いた音が響く。


 マコトの懐から零れ落ちたものが、

 床を転がった。


 小さな青い宝石があしらわれた首飾り。


 それを見た瞬間、

 エミリーの思考が止まる。


「――え」


 不意に脳裏に懐かしい笑顔が蘇る。


 傷つきながらなお、

 倒れた少女を守ろうと私の前に立ちふさがる男にその姿が重なる。


 アルフレッド。


「――ぁ」


 だが、

 もう止まれない。


 紅蓮と蒼穹。


 二つの極光が、

 同時に解き放たれた。


 激突した力が、

 世界そのものを白く染め上げた。


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ここまで読んでいただきありがとうございます。


次回、決着です。


面白いと思っていただけましたら、ブックマーク・評価等で応援いただけると励みになります。


引き続きよろしくお願いいたします。

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