66. セト
セトの活躍を目に焼き付けてください。
濁流が、
崩れた大広間を呑み込んだ。
「レーヴァ!!」
「お任せください!」
紅蓮の炎が奔る。
迫り来る濁流を蒸発させ、
押し返し、
強引に道を切り開く。
だが。
「……この都市での水剣は、
厄介ですね」
余裕はない。
レーヴァですら、
完全には捌き切れていなかった。
その炎を牽制するように、
無数の水刃が空中へ展開される。
「ちっ――!」
レーヴァが迎撃に回る。
その隙。
エミリーが踏み込んだ。
「っ!?」
速い。
蒼い斬撃が、
視界を裂く。
咄嗟にセトで受ける。
凄まじい衝撃。
「ぐっ……!!」
腕が痺れる。
押し込まれる。
先ほどまでとは違う。
今のエミリーには、
魔法使い故にあった隙が一切なくなっていた。
身体能力も、
剣速も、
踏み込みも、
技量すら。
すべてが完成されていた。
『マスター、
負荷ガ増大シテイマス』
「分かってる!」
受けるたび、
セトへかかる負荷が増していく。
ミスティルテインを握ったエミリーは、
もはや先ほどまでの相手ではなかった。
「まだだ!」
リンが横合いから斬り込む。
エミリーがでミスティルテイン受ける。
そこへ、
レーヴァの炎が迫る。
だが。
エミリーが笑った。
「っ――いけません!」
レーヴァが叫ぶ。
次の瞬間。
足元から、
巨大な水柱が噴き上がった。
「ぐっ――!?」
視界が回る。
身体が宙へ投げ出される。
瓦礫を突き破り、
崩れた壁へ叩きつけられた。
土煙の向こう。
一瞬だけ、
レーヴァが反対側へと吹き飛ばされるのが見えた。
「レーヴァ!?」
呼ぶ間もなく、
崩落した瓦礫がその姿を遮る。
「っ……!」
痛む身体を無理やり起こす。
その瞬間。
「――マコトにいちゃん……」
背後から、
弱々しい声。
振り返ると、
リンが瓦礫に埋もれるように倒れていた。
「リン!」
駆け寄る。
意識はある。
だが、
立てる状態じゃない。
正面では。
エミリーが、
ミスティルテインを静かに構えている。
その周囲へ、
莫大な水が集束していく。
逃げられない。
リンを抱えていては、
間に合わない。
『マスター』
セトの声が響く。
いつになく、
静かな声だった。
『ココハ、
ワタシニ任セテクダサイ』
エミリーから放たれた閃光のような水流を、
セトが展開した防御障壁が受けとめる。
「……セト?」
『ワタシハ、
ズット工房ニイマシタ』
脳裏へ景色が流れ込む。
炎の揺れる工房。
棚に飾られた自分を、
誇らしげに見上げるドワーフ達。
『見守ルダケデ、
楽シカッタ』
『デモ』
『少シダケ』
『思ッテイマシタ』
『イツカ、
振ルワレテミタイ』
水がさらに集まる。
空気が震える。
『意思ヲ持チ』
ぴしり、と。
小さな音が響く。
視線を落とすと、
セトの刀身に細い亀裂が走っていた。
『マスター二出会エタ』
『ソレダケデ』
亀裂が広がる。
「やめろ……セト……!」
『十分幸セデシタ』
刀身の輝きが、
さらに強まる。
まるで、
その身を削っているかのように。
『デモ』
『最後ニ一ツダケ』
輝きが増し、
防壁の厚みが一段と増していく。
『マスターは』
『絶対ニ』
『ワタシガ守リマス』
次の瞬間。
蒼き奔流が、
すべてを呑み込んだ。
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物語はクライマックスへ
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