65. 決戦後半
水の神剣ミスティルテインの力が解放されてしまいました。
エミリーの周囲を漂っていた蒼い光が、
ゆっくりと収束していく。
その足元では、
水が意思を持つように渦巻いていた。
黒髪が、
水流に揺られるようにふわりと浮かぶ。
そして。
エミリーが静かに顔を上げた瞬間。
「っ――」
全身が軋んだ。
空気が重い。
立っているだけで、
押し潰されそうになる。
エミリーの右手には、
一振りの蒼い剣。
透き通る刀身の内部を、
水光がゆっくりと流れている。
「……これが」
リンが息を呑む。
「水の神剣ミスティルテイン……」
エミリーは答えない。
ただ静かに、
こちらを見つめていた。
「アクアリスは、
私が守る」
次の瞬間。
水剣の力が解放される。
「なっ――!?」
衝撃波に天井が吹き飛んだ。
巨大建造物の上部が、
内側から爆散する。
柱が砕け、
壁が弾け飛び、
瓦礫が暴風のように舞い上がった。
「レーヴァ!!」
「お任せください!!」
紅蓮の炎が渦を巻く。
迫る瓦礫を、
レーヴァの炎が次々と焼き砕いた。
その間にも、
天井が崩れ落ちていく。
戦場が、
強引に空へ開かれた。
その瞬間。
エミリーが消えた。
「っ!?」
速い。
次の瞬間には、
目の前まで踏み込まれていた。
振り下ろされる蒼い剣。
咄嗟にセトで受け止める。
「ぐっ……!!」
凄まじい衝撃が腕を貫いた。
身体ごと地面へ叩き込まれる。
重い。
ただの斬撃じゃない。
水圧そのものを叩き付けられているようだった。
『マスター!!
コレハキケンデス!!』
「マスター!!」
レーヴァが割って入る。
紅蓮の剣と蒼い剣が激突する。
超高熱で蒸発した水が、
一瞬で白い霧となって周囲へ広がった。
押し返せない。
レーヴァの炎が、
逆に水圧へ呑み込まれていく。
「……っ」
レーヴァの表情が初めて歪む。
押されている。
人化状態とはいえ、
あのレーヴァが。
その鍔迫り合いの最中。
リンが動いた。
足音すら消したまま、
瓦礫の影を駆け抜ける。
そして。
腰から短剣を抜き――
そのまま投げた。
銀光が、
エミリーの死角へ走る。
高速回転しながら迫る、
必殺の軌道。
だが。
エミリーは振り向きもしなかった。
蒼い剣が、
無造作に振られる。
次の瞬間。
「は――?」
リンが目を見開く。
リターナが、
空中で真っ二つになっていた。
「嘘だろ……!」
ありえない。
今の一撃は、
見えてから対応できる速度じゃない。
「この都市で、
その力を解放しますか」
レーヴァが低く呟く。
次の瞬間。
街中の水路が、
一斉に唸りを上げた。
「おい……嘘だろ」
リンの顔色が変わる。
水が。
集まっている。
街中から。
水路から。
湖から。
アクアリス全体から。
莫大な水が、
エミリーの周囲へ集束していた。
蒼い剣を構えながら、
エミリーが静かに告げる。
「この街は」
そして。
「私が守るって、
決めたの」
その瞬間。
水が奔流となって襲い掛かった。
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ここから決戦もさらに激しくなっていきます。
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