60. 騎士の眠る場所
一部のクライマックスが近づいてきました。
中央に据えられた墓碑は、
周囲のものより一回り大きかった。
白石で造られた墓碑には、
青い紋章が深く刻み込まれている。
水を象ったような意匠。
そしてその下に刻まれていた文字にはこう書かれていた。
『水の都アクアリス守護騎士団団長
アルフレッド・ルクス
ここに眠る』
「……守護騎士団長。エミリーの恋人」
小さく呟いた。
他の墓より、
少しだけ立派な造り。
けれど、豪奢という感じではなかった。
むしろ目につくのは、
墓前へ供えられた白花だった。
死都の地下。
誰もいないはずの場所。
それなのに、
その花だけが異様なほど瑞々しい。
「……誰か、
今もここ来てるよな」
リンが周囲へ視線を巡らせる。
「ああ」
墓所だというのに、
妙な薄気味悪さがない。
静かで。
澄んでいて。
どこか、大切に守られている空気があった。
その時、マコトの視線が墓碑の足元で止まる。
「……ん?」
花の傍。
白い布に包まれた小さな箱が置かれていた。
供物のようにも見える。
だが、妙に気になる。
マコトはゆっくりと布を外し、
箱を開く。
中に収められていたのは、
一つの首飾りだった。
「……綺麗だな」
リンが思わず声を漏らす。
銀細工で作られた首飾りは、
派手さこそないものの、
息を呑むほど繊細だった。
中央には淡い蒼石。
まるで静かな水面みたいに光を返している。
「騎士団長の持ち物……
って感じじゃねーな」
「ああ……」
武勲を示す装飾品ではない。
もっと個人的な。
誰か特別な相手へ贈るための品。
そんなように感じた。
「…………」
その時だった。
妙な感覚が胸を掠める。
理由は分からない。
けれど――
なぜか、ここへ置いていってはいけない気がした。
「マコト兄ちゃん?」
「ああ、いや……」
自分でも理由は分からない。
だが、これは持っていくべきだ。
そんな感覚だけが、
妙に強く残っていた。
マコトは静かに首飾りを手に取る。
まるで、誰かに導かれるように
――――――
墓所の奥には、
上へ向かう石階段が伸びていた。
「……出口か?」
「多分な」
ここに留まり続けても仕方がない。
マコトたちは階段を上り始める。
長い階段だった。
白石で造られた通路はところどころ崩れ、
天井には大きな亀裂も走っている。
やがて前方に微かな光が見え始めた。
「……外か?」
「っぽいな」
さらに階段を上る。
そして最後の段を越えた瞬間、
視界が開けた。
――――――
目の前に広がっていたのは、
アクアリス中心部だった。
巨大な白亜の建造物。
都市の中心に君臨するように建てられた、
圧倒的な威容。
「……ここに繋がるのか」
マコトが小さく呟く。
その時だった。
「……マスター」
不意に静かな声が響いた。
振り返った先。
そこに立っていたのは、
レーヴァだった。
「お待たせしました」
レーヴァが静かに歩み寄る。
「ワタシモイマスヨ」
少し遅れて、
セトがふよふよと横へ並ぶ。
「お前はさっきからいただろ」
「ム」
不満そうに刀身を揺らすセトを見て、
リンが小さく吹き出した。
だが、その空気も長くは続かない。
目の前にそびえる巨大建造物からは、
肌が粟立つような圧が静かに漏れ出していた。
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ようやくレーヴァとも再合流できました。
一部クライマックスに向けて突き進みます。
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