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55. 死都の遭遇戦

アクアリス探索――


……の前に、いきなり戦闘です。


ボス戦開始。

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

 エミリーの背後に浮かんだ無数の水球が、

 一斉にこちらへと射出された。


「死んで」


 放たれた瞬間、

 それがただの水弾ではないとわかる。


 まるで砲弾。


 そう錯覚するほどの質量と速度を伴った水塊が、

 空気を裂いて迫ってくる。


「避けろ!!」


 叫ぶと同時に飛び退いた。

 直後、着弾した石畳が爆ぜる。


 轟音とともに地面が抉れ、

 破砕された石片が周囲へ弾け飛んだ。


 振り返れば、

 さっきまで自分たちがいた場所に、

 馬車すら丸ごと呑み込みそうな大穴が穿たれていた。


 直撃していれば、即死だった。


「……どうして避けるの?」


 エミリーが、

 心底不思議そうに首を傾げる。


「そのまま死ねばよかったのに」


 理屈ではない。

 価値観そのものが壊れている。


 その時、レーヴァと僕たちの間に激流が噴き上がった。


 奔流はそのまま壁となって立ち上がり、

 視界を完全に遮断する。


「レーヴァ、あなたはこちらへどうぞ」


 水壁の向こうから、

 ミスティの声が届く。


「……マスター。

 しばらくそちらは少し任せます」


「分かった!

 長くは持たないかもしれないから、

 早めに片付けてきてくれ!」


「お任せください」


 短い応答。


 その直後、

 水壁の向こうで凄まじい熱量が膨れ上がり、

 蒸気を伴った衝撃音が響いた。


――――――


 レーヴァを隔離されたことで、

 こちらの状況はさらに悪化した。


 エミリーの背後に、

 再び無数の水球が展開される。


「おい、嘘だろ……」


 先ほどの比ではない。


 視界を埋め尽くすほどの数だ。


「死んで」


 豪雨のように砲撃が降り注ぐ。


「セト!!」


『ワタシノミセバデス!!』


 全力で魔力を流し込み、

 セトを振るう。


 叩き落とす。

 逸らす。

 切り裂くが、

 一発受けるごとに腕が痺れた。


「ぐっ……!」


 重い。


 防いでなお、

 身体ごと押し込まれる。


「近づけねぇ!」


「このままじゃジリ貧だぞ!」


 リンが叫ぶ。


 そのとおりだ。


 近づきさえすれば勝機はある。


 だが、砲撃の密度が高すぎる。

 一歩踏み込むたび、

 その先を砲撃が塞ぐ。


 石畳が砕け、

 建物が崩れ、

 周囲の街並みが次々と破壊されていく。


「壊さないで」


 エミリーが眉をひそめた。


「これ以上、

 街を壊さないでよ」


 エミリーの慟哭が街に響き渡る。


――――――


「マコト!」


 リンが叫ぶ。


「オレに案がある!

 アイツまでの道を作ってやる!!」


 その言葉と同時に、

 リンが砲撃の雨の中へ飛び込んだ。


「おい!?」


 当然、エミリーの視線がリンへ向く。


「邪魔」


 砲撃の照準が一斉に切り替わる。


「とっておきだ――穿て、

 アルバ・ノクス!!」


 白と黒の双閃。


 交差した斬撃が、

 リンの正面に迫る砲撃群をまとめて切り裂いた。


 そこにほんの一瞬だけ、

 一直線の突破口が生まれる。


「っらぁ!!」


 その隙を逃さず、

 脚に魔力を集中させてエミリーへと飛び込んだ。


「なっ!?」


 エミリーの目が見開かれる。


 何かを魔術を行使しようとするのがわかるが、

 もう遅い。


 ここまで入れば――


 おれたちの勝ちだ。


 セトを振り抜く。


 鋭い斬撃が走り、

 エミリーの右腕が肩口から切り飛ばされた。


――――――


「――え?」


 理解の追いつかない顔で、

 エミリーが地面に落ちた自分の右腕を見た。


 次の瞬間、

 肩口から鮮血が噴き上がる。


「――汚れた」


 石畳を赤く染めながら、

 血が溢れ落ちていく。


「血が……」


 震える声で呟き、


「血が散ったじゃない……!!」


 絶叫。


「この街を汚すなって!!

 言ったでしょうがぁぁぁぁぁ!!」


「だから誰のせいだと思ってんだ!!」


 怒鳴り返す。


 エミリーは飛んだ腕を抱え込み、

 憎悪のこもった目でこちらを睨んだ。


「……殺す」


 低い声。


「次は、

 絶対に殺す」


 水飛沫が爆ぜ、

 その姿が掻き消える。


「逃げた!?」


「追うぞ!」


 走り出しかけたその時、

 背後の水壁が崩れ落ちた。


 現れたレーヴァが即座にこちらに駆け寄ってきた。


「マスター」


 その背後に、

 ミスティの姿はなかった。


「すみません、取り逃がしました」


 撤退したとはいえ、

 奴らが諦めたわけではない。


 次は、

 さらに苛烈な襲撃になるだろう。


 そんな予感だけが、

 不気味な静寂の中に残っていた。


now loading......

エミリーとの初戦でした。


まだ決着には至りませんが、

アクアリス攻略はここからさらに進んでいきます。


次回も引き続きお付き合いいただけますと幸いです。


面白いと思っていただけましたら、

ブックマーク・評価等で応援いただけると励みになります。


引き続きよろしくお願いいたします。

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