44. 次なる神剣へ
C級昇格、そして次章開幕です。
ようやく次なる神剣探索へ動き出します。
一部休養とは呼び難い出来事もあったものの、
慰労旅行を終えた僕たちは、再び冒険者としての活動を再開していた。
もっとも、以前のような無茶な攻略ではない。
新調した装備の慣熟も兼ね、
依頼と迷宮探索を織り交ぜながら、
以前よりはよほど人間らしいペースで経験を積んでいる。
――そして。
「マコトさん。ギルドマスターがお呼びです」
ギルド受付でリディアさんにそう告げられ、
僕は思わず眉を上げた。
「またですか……?」
「はい。今回は悪い話ではないと思いますよ」
リディアさんが意味深に微笑む。
その笑みに若干の不安を覚えつつ、
僕たちは再び応接室へ通された。
しばらくして扉が開き、
白髭の老人――グランさんが入ってくる。
「待たせたのう」
「いえ」
席に着いたグランさんは、
開口一番、穏やかに笑った。
「単刀直入に言おう。
お主らのランクを本日付でC級へ昇格とする」
「……え?」
思わず間の抜けた声が漏れた。
「ほ、本当にですか?」
「うむ。
ここしばらくの依頼達成率、迷宮踏破速度、討伐実績。
どれを取っても十分基準を満たしておる」
グランさんは楽しげに髭を撫でる。
「正直、かなり異例の速度ではあるがの」
「……ありがとうございます」
いや本当に早いな?
ラビラリンズに来てまだそこまで経っていないはずだが。
「まあ、C級から先はそう簡単には上がらん。
ここからが本番と思うとよい」
「肝に銘じます」
「うむ」
グランさんは満足げに頷く。
「とはいえ、若手の中ではかなり有望株じゃ。
ラビラリンズでも噂になり始めておるぞ」
「やめてください怖いので」
「はっはっは」
勘弁してほしい。
悪目立ちはしたくない。
「もっとも」
そこでグランさんは少しだけ真顔になった。
「この街には、お主らより遥かに上の実力者もおる。
慢心はするでないぞ」
「……はい」
「例えば――蒼鱗旅団などは良い目標じゃな」
初めて聞く名だった。
「蒼鱗旅団?」
「ラビラリンズ上位ギルドの一角じゃ。
古参にして実力派。
この街でも一目置かれておる」
そこでグランさんは少し肩を竦めた。
「……まあ、少々難しい連中ではあるがの」
「難しい?」
「そのうち分かるじゃろう」
意味深な笑みだった。
なるほど。
そういう連中もいるのか。
「まあ、今はまだ縁はないじゃろうがな」
グランさんはそう締めくくった。
――この時は、
僕もそう思っていた。
◇
「C級だーっ!」
宿へ戻るなり、
リンが両手を上げて飛び跳ねた。
「やったなにーちゃん!」
「お前もだろ」
「いやーでもC級かぁ……
ちょっと実感ねーな!」
「通過点です」
レーヴァが真顔で言った。
「そういうとこだぞお前」
祝いムードを秒で消すな。
だが、レーヴァはそのまま居住まいを正す。
「……では、ちょうど良い機会ですので」
その声音に、
僕とリンは自然と姿勢を正した。
「今後の方針についてお話があります」
「方針?」
「はい」
レーヴァは静かに告げる。
「残る神剣の捜索を開始します」
「……」
「……」
「え?」
数秒遅れて声が出た。
「いや待て待て待て。
もうやるのか?」
「当然です」
「当然なのか?」
「はい」
レーヴァは平然としている。
「マスターの戦力は未だ完成には程遠い状態です」
「いやいやいや」
僕は即座に否定した。
「この前一割で地平線吹き飛ばしてたんだが?」
「あれでも不完全です」
「怖いこと言うなよ」
「四剣が揃って初めて、
マスターは真に私を扱えるようになります」
「……そこまで必要か?」
「必要です」
即答だった。
「今後、より強大な敵と相対する可能性。
あるいは他の神剣が第三者の手に渡る可能性。
どちらを取っても看過できません」
そこまで言われると、
反論しづらい。
「……で、次は?」
「水の神剣です」
レーヴァは迷いなく答えた。
「水の神剣ミスティルテイン。
通称ミスティ」
「へえ」
「包容力のある女性です」
「聞いてねえよそんな情報」
「重要な情報です」
そうか?
「所在地の目星は?」
「元・水都アクアリスです」
「元?」
その言い方に引っかかる。
レーヴァは僅かに目を細めた。
「……既に滅びています」
空気が変わった。
「現在は“死都アクアリス”と呼ばれているようです」
「死都……」
リンがごくりと喉を鳴らす。
「ただし、ここから先の情報は不足しています」
レーヴァは続けた。
「滅亡理由、現在の状況、詳細な内部構造――
いずれも断片的な情報しか得られませんでした」
「つまり?」
「詳しい者に話を聞くべきでしょう」
「詳しい者って?」
僕が問うと、
レーヴァは即答した。
「蒼鱗旅団です」
「……昼にグランさんが言ってた?」
「はい」
「なんでそいつらが?」
「元アクアリス出身のギルドだからです」
なるほど。
それなら確かに、
これ以上ない情報源だ。
リンが腕を組む。
「つまり――」
「次はその蒼鱗旅団ってのに会いに行くってことか」
「はい」
レーヴァは静かに告げた。
「次なる神剣への道は、
そこから始まります」
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
次章は蒼鱗旅団との接触編です。
死の街、そして水の神剣へ向けて、少しずつ物語が動き始めます。
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