43. リンケージ
ついに説明回です。
レーヴァがだいたい全部しゃべります。
やけに身体が重かった。
腰にも妙な疲労が残っている。
寝返りを打とうとして、
そこで違和感に気づいた。
すぐ隣に、
柔らかな温もりがある。
目を開いてそちらに視線を向ければ――
一糸まとわぬ姿のレーヴァが、
静かな寝息を立てていた。
「…………」
昨夜の記憶が一気によみがえる。
薬膳。
熱。
深紅のドレス。
その後――
「……なんでこうなった」
思わず漏れた呟きに、
レーヴァがゆっくりと目を開けた。
「おはようございます、マスター」
「……おはよう」
あまりにも平然としている。
その温度差に、
逆にこちらの勢いが削がれてしまった。
「おはようのキスはしないのですか?」
そう言って、
レーヴァが小さく首をかしげる。
ちくしょう。
かわいいじゃないか。
――――――
着替えを済ませて食堂へ向かうと、
リンが先に料理を山ほど確保していた。
「お、寝坊助ども、やっと起きたのか」
「戻ってきてたのか」
「こんな宿の朝飯逃すわけねーだろ」
まあそれはそうだ。
だがリンは、
席に着いた僕とレーヴァを見比べると、
すぐに察したような顔をした。
「……やっぱそうなったか」
「何がだよ」
「オレの前で盛るなよ、にーちゃん」
「盛らねえよ!!」
「ふーん?」
完全に面白がっている顔だった。
――――――
朝食後。
レーヴァが紅茶を一口飲んでから、
さらりと言った。
「昨夜のリンケージは問題なく成立しました」
「リンケージ?」
聞き慣れない単語に、
僕は思わず聞き返した。
リンも眉をひそめる。
「……なんの話してんだ?」
「マスターと私の連結方式です」
「いや、それで分かると思うか?」
「そうですね。
順を追って説明しましょう」
そう言ってから、
レーヴァはリンへ向き直った。
「まずは前提知識からです」
すっと胸に手を当てる。
「神々の黄昏を穿つ神剣レーヴァテイン。
それが私の本質です」
「…………」
「…………は?」
数拍遅れてリンが固まった。
「いや待て待て待て待て。
何言ってんだ姉ちゃん?」
「申し上げたとおりですが」
「え、マジで?」
「マジですよ」
そう言うと、
レーヴァの右手が赤い刀身へと変化した。
「うおっ!?」
リンが飛び退く。
「これで信じましたか?」
驚愕の表情を浮かべたリンが、
僕の方を見る。
黙って頷いておいた。
「……なんで今まで黙ってたんだよ……」
その問いに。
僕とレーヴァは顔を見合わせ――
「「聞かれなかった(ませんでした)ので」」
「知らねーことは聞けねーよ!!」
リンの絶叫が食堂に響いた。
――――――
「改めて説明します」
レーヴァは姿勢を正した。
「マスターは私の力を真に引き出せる適格者です」
「その方法がリンケージか?」
「はい」
レーヴァは頷く。
「マスターと私が肉体的・魔力的に深く結びつくことで、
封印された出力制限を段階的に解除できます」
数秒の沈黙。
リンの顔がみるみる赤くなった。
「……おい。
それってつまり」
「つまりセックスですね」
「言い方!!」
リンが机を叩いた。
レーヴァは気にせず続ける。
「ただし、私単独とのリンケージでは
すべての力を解放することはできません」
「どういうことだ?」
「四剣全てと交わる必要があります」
「……四剣?」
「私を筆頭とする神剣群です。
残る三振りとのリンケージを経て、
マスターは真の出力へ到達します」
「……つまり」
僕も頭が痛くなってきた。
「あと三人いるのか」
「はい。
ただし私より格は落ちます」
そこは譲れないらしい。
「で、
そいつらとも同じことをする必要があると」
「はい」
「…………」
情報量が多すぎる。
「なお」
レーヴァがさらりと言った。
「リンが相手でも問題ありませんよ」
「ぶっ!?」
リンが盛大に吹いた。
「な、何をだよ!?」
「マスターとの子を成していただいても構いません」
「はぁぁぁ!?」
「さすがに私では子供は望めませんので。
ただし正妻の座は譲りません」
「誰も狙ってねえよ!!」
真っ赤になったリンが叫ぶ。
――――――
「さて」
レーヴァが立ち上がった。
「今回この慰労地を選んだ理由ですが」
「まだ続くのか」
「近隣に、
迷宮崩壊跡地があります」
「迷宮崩壊?」
「スタンピードのさらに先。
迷宮そのものが暴走・崩壊した末に生じる災害です」
「そんなもんまであるのかよ……」
「はい。
そしてその跡地は、出力試験に最適です」
「最初からそれ目的だったな?」
「慰労も本心です」
“も”だった。
――――――
案内された先は、
草木一本生えぬ不毛の荒野だった。
大地はひび割れ、
岩肌が剥き出しになっている。
「なお」
レーヴァが淡々と言う。
「この土地は私が購入済みです」
「は?」
「どう使っても問題ありません」
「いつ買ったんだよ!?」
「必要と判断した時点で」
怖い。
――――――
「ではマスター」
レーヴァが僕の前へ立ち、
差し出した手を左手でそっと握る。
「一割の出力で試してください」
「一割でいいのか?」
「十分です」
その手を取る。
触れた瞬間、
昨夜よりも明確な繋がりを感じた。
深く息を吸う。
その繋がりを意識し、
力を流し込む。
瞬間。
右手に収束した炎が刀身を形作り、
世界が赤く染まった。
「――レーヴァテイン」
振り下ろす。
次の瞬間。
閃光。
轟音。
爆風。
そして――
遥か地平線まで、
大地が消し飛んだ。
「…………」
「…………」
「……は?」
リンが呆然と呟く。
僕も同意見だ。
「一割だよな今の!?」
「はい」
「一割でこれ!?」
レーヴァは当然のように頷いた。
「全力使用時は、
世界は滅ぼせます」
「使うなよ絶対に!!」
僕とリンの声が重なった。
「ですので」
レーヴァは満足げに告げる。
「今後は出力調整訓練を開始します」
「慰労とは何だったんだよ……」
「必要な工程でした」
「慰労ですらなくなってるじゃねえか……」
こうして。
僕の規格外訓練は、
また一つ増えたのだった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
ようやくリンケージ周りの設定開示回でした。
慰労旅行のはずだったんですが、案の定訓練に繋がりました。
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