41. 祭りの日
休養回です。
晴れの日のいつもと違う衣装に身を包んだ女の子ってよいですよね。
「よく頑張りました」
レーヴァのその言葉に、
僕とリンは思わず顔を見ん合わせた。
「……今なんて?」
「褒めました」
「レーヴァが!?」
「失礼ですね」
失礼ではないと思う。
「装備も整いましたし、
今後の進路を決めるためにも情報収集が必要です」
レーヴァは淡々と言った。
「よって、これからしばらくは休養にあてようと思います」
「「やったー!!」」
僕とリンの声が綺麗に重なった。
――――――
翌日の休養日初日。
聞けば今日は、
ラビリンズで年に一度の祭りがあるらしい。
周回続きで気づいていなかったが、
そういえば街の空気がどこか浮き立っていた気もする。
通りには色とりどりの旗や飾り布が渡され、
街全体が祝祭の装いに染まっていた。
「夜のメインイベントには戻りますが、
昼間は別行動とします」
「え、レーヴァも祭り回るんじゃないの?」
「少し用事がありますので」
そう言って、
彼女はどこかへ去っていった。
「……珍しいな」
「ほら、にーちゃん行くよ!」
振り返ったリンを見て、
思わず目を瞬いた。
「……スカートなんて珍しいじゃないか」
いつもの軽装ではなく、
今日は薄手の上着に膝丈のスカートという、
随分と女の子らしい格好をしていた。
「レーヴァに見立ててもらったんだよ。
祭りなんだからこれくらい着るでしょ!」
少し照れたように言って、
リンは先に歩き出した。
――――――
祭りの露店は、
予想以上に賑やかだった。
串焼き、
焼き菓子、
果実飴、
香辛料の効いた謎肉。
「次あれ食べたい!」
「まだ食うのかよ」
「祭りは別腹!」
意味が分からない。
まだまだ花より団子だな、と思いながらその背を追う。
「おい、あんまり急ぐと逸れるぞ」
そんなふうに歩いていると、
リンがふと足を止めた。
視線の先には、
装飾品を並べた露店。
その中の一つ――
小さな青い宝石のついた髪留めを、
リンがじっと見ていた。
「欲しいのか?」
「えっ?
……いや、別に」
分かりやすすぎる。
「ほら」
代金を払って、
髪留めを受け取る。
「えっ、ちょ、にーちゃん!?」
「いつも助けられてる礼だ」
「……っ」
珍しくリンが言葉に詰まった。
「ありがと……」
小さく呟き、
彼女はその髪留めを大事そうに胸元へ抱えた。
こうして見ると、
リンもちゃんと年頃の女の子なんだなと思った。
――――――
夕刻。
「お待たせしました」
広場で待っていると、
戻ってきたレーヴァを見て、
今度は言葉を失った。
普段の戦闘装束ではなく、
黒を基調に深紅の差し色をあしらった外出着。
加えていつもは下ろしている赤髪も、
今日は後ろで軽くまとめられている。
装飾こそ控えめだが、
余計な飾りがないぶん、その整った容姿がより際立って見えた。
「……どうしました?」
「いや、その……」
不意打ちすぎて、
言葉が出ない。
「似合ってる」
ようやく絞り出した一言に、
レーヴァがわずかに目を見開いた。
「……ありがとうございます」
ほんの少しだけ、
彼女が柔らかく笑った気がした。
そのまま三人で祭りを回る。
大道芸、
楽団の演奏、
仮装行列。
昼とはまた違う賑わいに、
街は熱気を増していた。
そして――
夜空に、
大輪の花火が咲いた。
「わあ……」
リンが目を輝かせる。
隣では、
レーヴァが静かに花火を見上げていた。
「綺麗ですね」
「……だな」
ふと視線が合う。
花火の光に照らされたその横顔に、
妙に胸がざわついた。
その横で。
「…………」
リンは昼に買ってもらった髪留めをそっと撫でながら、
どこか少しだけ不満げな顔をしていた。
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祭り回でした。
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