32. 普通じゃない奴ら
リン視点回です。
(リン視点)
迷宮に入ってしばらくして、
リンは早くも後悔し始めていた。
(……なんだこいつら)
初めて潜る迷宮のはずだ。
なのに、前を行く二人に迷いがない。
道を確かめることもなく、
罠を警戒して立ち止まることもなく、
まるで散歩でもするかのように
ずんずん進んでいく。
(いやいやいや、
素人丸出しじゃねえか……!)
リンだって、
迷宮に入ったことがないわけじゃない。
スラムのガキどもと組んで、
浅い階層で小遣い稼ぎをしたことくらいはある。
だからこそ分かる。
迷宮ってのは、
こんなふうに歩いていい場所じゃない。
「おい、
もうちょい慎重に――」
言いかけたその時。
物陰から、短剣を握った小柄な魔物が飛び出した。
犬にも狼にも見える
獣じみた顔立ち。
コボルトだ。
「ギィッ!」
リンが叫ぶより早く、
マコトが踏み込んだ。
一閃。
それだけで、コボルトの首が宙を舞った。
(は……?)
あまりにも速い。
あまりにも迷いがない。
コボルトの亡骸を見下ろし、
マコトがぽつりと呟く。
「……今のがコボルトってやつか」
(初見かよ)
そんなリンの内心など知る由もなく、
マコトは平然としていた。
しばらく進んだところで、
違和感に気づいた。
「待て」
「ん?」
前方の床。
石畳の継ぎ目に、
わずかな違和感。
「……罠だ」
しゃがみ込み、
慎重に確認する。
間違いない。
踏めば作動する類の罠だ。
「おお、マジか」
マコトが素直に感心した声を漏らした。
「すごいな」
「へっ……
これくらい当然だ」
胸を張る。
すると、横からレーヴァが頷いた。
「優秀ですね」
「……っ」
短い一言なのに、
妙に嬉しかった。
……が。
その後も。
魔物が出れば、
マコトが瞬殺。
危険な気配があれば、
レーヴァが即察知。
リンの出番は罠だけだった。
(なんだこれ……)
自分が役に立っていないわけじゃない。
だがそれ以上に――
(こいつら、強すぎねえか……?)
そんなことを考えていた時だった。
再び魔物が現れ、
マコトが難なく斬り伏せる。
そして。
『オミゴトデス、マスター』
「…………は?」
リンの動きが止まった。
今。
剣が。
喋った。
「あ、そういや紹介してなかったな」
マコトが軽い調子で言う。
「こいつはセト。 見てのとおり喋る剣だ」
「その情報を今出すなよ!!」
(なんだこのパーティ!?)
リンの叫びが、
迷宮に響いた。
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新メンバー(視点)の第一印象はだいたいこんな感じです。
次回も迷宮探索が続きます。
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