25. 初護衛任務(5)
オーガ戦です。
「全員聞け!」
オーガを前に、
ライルさんが鋭く叫んだ。
「勝てる相手じゃねえ!
御者は馬をまとめろ!
タインさんは積荷を捨てる準備!
最悪、荷車ごと置いて逃げるぞ!」
その判断に、
誰も異を唱えなかった。
それほどまでに、
目の前の魔物は危険なのだ。
だが――
「ライルさんは?」
僕が問うと、
ライルさんは口元を歪めた。
「……俺が足止めする」
「なっ――」
「護衛の頭張ってる以上、
最後まで残るのは俺の役目だ」
重い言葉だった。
冗談でも格好つけでもない。
本気で、
ここに命を置くつもりなのだ。
「……俺も戦います」
気づけば、
そう口にしていた。
ライルさんが目を見開く。
「馬鹿言え!
新人が相手できる格じゃねえ!」
「でも――」
「マスター」
その時、
レーヴァが一歩前に出た。
「露払いは済ませます」
言うが早いか、
彼女の姿が掻き消える。
次の瞬間――
レーヴァの手には、
いつの間にか一振りの剣が握られていた。
その姿がぶれる。
「グガァァァァッ!?」
オーガの絶叫が夜を裂いた。
視線が追いついた時には、
棍棒を握っていた右腕が宙を舞っていた。
「な――」
誰も状況を理解できていない。
その間にも、
レーヴァは止まらない。
紅閃。
オーガの片目が潰れる。
さらに足元を一閃。
巨体が膝から崩れ落ちた。
「グ、ガァ……ッ!」
片腕を失い、
片目を潰され、
脚を断たれた巨体が、
地面を這いずる。
たった一瞬。
本当に、
一瞬だった。
レーヴァは血振りすらなく、
静かに振り返る。
「マスター」
その声は、
いつも通り穏やかだった。
「このエリアには出ないほどの強敵です。
お気をつけてどうぞ」
「いやもう瀕死だろこれ!?」
「経験値です」
「ゲームじゃないんだぞ!?」
理不尽だった。
だが、ここで躊躇う理由もない。
セトを握り直し、
這いずるオーガへ駆ける。
「――っ!」
渾身の一撃を首へ叩き込む。
思った以上に抵抗なく、
セトの刃はオーガの首を断ち切った。
静寂。
誰も何も言えない。
ただ、オーガの死体と、
平然と立つレーヴァを見比べている。
やがて。
「…………は?」
最初に声を出したのは、
ライルさんだった。
うん。
その反応になるよね。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
商隊一同の困惑はしばらく続きそうです。
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護衛任務もあと1話で、迷宮都市に到着予定です。




