23. 初護衛任務(3)
野営回です。
うちの従者に常識はありません。
野営の準備が始まった。
三台の荷馬車を広場の中央へ寄せて停め、
その傍らに焚き火が組まれていく。
なるほど、
こうやって野営地を作るのか。
などと感心していると――
「マスター、お待ちください」
レーヴァが一歩前に出た。
「野営の準備を行います」
「え?」
次の瞬間。
何もない空間が歪み、
そこから見慣れた家具が次々と現れた。
テーブル。
椅子。
天幕。
……しかも無駄に立派なやつ。
調理台。
ランタン。
食器一式。
さらには見たこともないほど豪華な食材まで。
「…………」
場が静まり返る。
「おい」
最初に口を開いたのはライルさんだった。
「なんだそれ」
「野営の準備ですが?」
「いや見りゃわかるわ!」
ですよね。
「いやいやいや、
なんでそんなもん持ち歩いてんだよ!?」
「マスターに不便を強いるわけには参りませんので」
真顔だった。
「いやいや、
野営って普通こういうもんじゃないから!」
「そうなのですか?」
逆に驚かれた。
お前の常識どうなってるんだ。
「……亜空間収納、ですかな?」
ぽつりと、
タインさんが呟いた。
「ご明察です」
「ご明察ですじゃねえよ!」
ライルさんがツッコむ。
止まらない。
「マスター、こちらへ」
当然のように椅子を引かれた。
「いや、みんな地べたなんだけど!?」
「マスターが地面に座られる必要などあり得ません」
「空気を読め!」
とはいえ、
もう出してしまったものは仕方ない。
結局――
「……座るか」
「はい」
観念して椅子に腰掛けた。
「おいおい……
なんだあれ……」
「あれどうなってるんだ……」
周囲がざわついている。
やめてくれ。
誤解が深まる。
その後。
レーヴァの手によって、
野営とは思えない豪華な食事まで振る舞われた。
「うっっっっま!?」
「なんだこれ!?」
「店より美味いんだが!?」
商隊一同、大騒ぎである。
レーヴァは当然のように胸を張った。
「マスターの食事ですので」
「なんで俺基準なんだよ……」
とはいえ、
皆が喜んでいるならまあいいか。
結果として、
商隊の空気は一気に和んだ。
「いやあ……
お前ら本当に何者なんだ?」
焚き火の向こうで、
ライルさんが呆れ半分に笑う。
「……ただの新人冒険者です」
「絶対嘘だろ」
即答だった。
……否定できないのがつらい。
こうして、
僕の初野営は――
想像していたものとはだいぶ違う形で、
幕を開けたのだった。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
快適すぎる野営となりました。
次回も護衛任務は続きます。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。
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