20. 昇格試験
呼び出しの理由は、だいたい予想どおりです。
タニアさんに連れられてやってきたのは、冒険者ギルド三階の最奥。
昨日まで近づくことすらなかった扉の前で、僕は小さく息を呑んだ。
「こちらです」
ノックの後、入室を促されて部屋へ入る。
中にいたのは、大きな机の向こうに座る壮年の男だった。
筋骨隆々という言葉がそのまま人の形になったような体格。
短く刈り込まれた髪に、鋭い目つき。
いかにも“歴戦の猛者”といった風格を纏っている。
この人が――
「スタット冒険者ギルドのギルドマスター、バルドだ」
「マコトです」
「レーヴァです」
軽く名乗ると、ギルマスは腕を組んだままこちらを見据えた。
「昨日の討伐報告は聞いている」
うわ、やっぱりその話か。
「新人にしては、少々派手にやったな」
「すみません……?」
思わず謝ってしまった。
「褒めている」
即座に返された。
「実績だけ見れば、すでにE級の範疇は超えている」
おお。
それは素直に嬉しい。
「だが――」
やっぱり続きがあった。
「冒険者に求められるのは戦闘力だけではない」
ギルマスは指を組みながら続ける。
「護衛任務、採集任務、探索任務、依頼人との折衝、緊急時の判断。冒険者は強ければいいというものでもない」
……まあ、それは確かにそうだ。
「よって、お前たちには昇格審査を兼ねた依頼を受けてもらう」
そう言って机の上に一枚の依頼書を置いた。
「商隊護衛だ」
おお、冒険者っぽい。
ちょっとテンションが上がる。
「目的地は迷宮都市ラビラリンズだ」
ラビラリンズ。
いずれ向かうつもりだった街だ。
「本依頼を問題なく完遂した場合、D級昇格を認める」
D級。
一気に二段階昇格である。
「受けます」
即答だった。
断る理由がない。
ラビラリンズにも行けて、昇格もできる。
むしろ願ったり叶ったりだ。
「よし」
ギルマスが頷く。
「集合は明朝、東門だ。遅れるなよ」
――そして翌朝。
まだ朝靄の残る中、僕たちは東門へとやってきていた。
門の前には既に数台の荷馬車が並び、出立の準備が進められている。
護衛任務って、なんか一気に冒険者っぽくなってきたな。
少しだけ胸が高鳴る。
「今回、護衛を担当してくださる方々ですかな?」
商隊の男がこちらへ歩いてくる。
その顔を見た瞬間――
「あ」
「おや……! あなたは、あの時の」
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回、初の護衛任務開始です。
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