19. スタットでの日常
久々の平和回です。
なお、平和は長く続かない模様。
翌日は流石に休ませてほしいと懇願したところ、
レーヴァも「仕方ありません、休養も鍛錬のうちです」と渋々認めてくれた。
そんなわけで今日は久々の休日である。
とはいえ、
異世界に来てからというもの、
まともに街を見て回る余裕などほとんどなかった。
「せっかくだし、
今日はスタットの街を見て回ろうか」
「承知しました、マスター。
本日の護衛もお任せください」
休みなのに護衛は通常営業らしい。
宿を出て大通りへ出ると、今日は市が立つ日だったらしく、
朝から多くの人で賑わっていた。
露店では焼いた肉の匂いが漂い、
商人たちが威勢よく客を呼び込んでいる。
石造りの建物が並ぶ街並みも、
こうして改めて見ると中々に異世界らしくて楽しい。
「おお……」
思わず声が漏れる。
完全に観光客である。
「マスター、
あまりきょろきょろすると田舎者だと思われますよ」
「こうしてゆっくり見て回る余裕なんてなかったんだから仕方ないだろ」
「否定はできませんね」
そんな軽口を叩きながら歩いていると、
ふと周囲の視線に気づいた。
……見られている。
やけに見られている。
しかも、
視線が合うと皆さっと逸らしていく。
「なんか……めっちゃ見られてない?」
「はい」
「はい?」
「有名ですから」
レーヴァが当然のように頷いた。
「昨日の件でもう完全に噂になっています」
「早くない!?」
「冒険者の情報網を甘く見てはいけません」
そんなものがあるのか。
いや、
あるんだろうな。
ギルドとか絶対そういうの早いし。
「……ちょっと恥ずかしいな」
「私は誇らしいですが」
「お前はそうだろうな」
むしろ胸を張っていた。
そのまま露店を見て回り、
串焼きを買って食べ、
雑貨屋を冷やかし、
防具屋では新しい装備を眺める。
完全に休日だ。
「平和だなあ……」
思わずそんな言葉が漏れる。
すると腰から声がした。
『ヘイワハタイセツデスネ』
「お前急に喋るなって!」
店主がぎょっとこちらを見る。
しまった。
慌ててセトを押さえる。
『ムググ』
「今の剣……喋ったか?」
「気のせいでは?」
「気のせいか……?」
ギリギリ誤魔化せた。
危ない。
本当に危ない。
その後も街をぶらつき、
昼過ぎには広場の噴水近くで一息ついていた。
「こうしてると普通の旅人みたいだな」
「マスターは普通ではありませんが」
「一言多いな?」
「事実です」
即答だった。
そんな他愛ないやり取りをしていると――
「マコトさん!」
聞き慣れた声が飛んできた。
振り向くと、
そこにはタニアさんが立っていた。
「探しましたよ!
ギルマスがお呼びです!」
……休み、終わったな。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回、ギルマスとのご対面です。
明日も更新予定ですが、更新時間はお昼にするか夜にするか検討中です。更新情報はxで@Noa_Works
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