17. 次の段階
効率的なレベル上げ回です。
なお、効率の定義については諸説あります。
「次の段階へ進みましょう」
レーヴァのその一言で、
僕の嫌な予感は確信に変わった。
「次って、何するんだ?」
「効率的なレベル上げです」
さらっと言うが、
この子の“効率的”は大抵ろくなことにならない。
――翌日。
僕たちはスタットの街を離れ、
近郊の森を抜けて、さらに奥地へと足を踏み入れていた。
「この辺りから先は、
通常の冒険者はあまり近づきませんね」
「なんでそんなところに……」
「その方が効率的ですから」
……出た。
レーヴァの効率論。
しかもその手は当然のように、
僕の腕を握ったままだ。
いや、正確には“引っ張られている”。
「マスター、右です」
「はいはい」
もう慣れた。
セトを腰から抜く。
『キョウモ イイテンキデスネ、マスター』
「天気の話とかいいから」
街の近くとは明らかに違い、
周囲に漂う空気そのものが重い。
魔力の濃度――というらしい。
僕にはまだよく分からないが、
ただ“危ない場所”だということだけは本能で理解できた。
「ここからが本番です」
レーヴァの声が少しだけ低くなる。
その瞬間。
ガサッ。
草むらが揺れた。
「マスター」
「わかってる!」
飛び出してきたのは、フォレストウルフが三体。
普通の新人なら、
まず逃げ出す数だ。
「マスター、右側二体は私が止めます」
「え、全部じゃないのかよ」
「訓練ですので」
訓練って何だ。
レーヴァが一歩踏み出すと、
視界から消えた。
次の瞬間。
ズン。
二体のフォレストウルフが同時に崩れ落ちる。
何が起きた。
いや見えなかった。
「残り一体です」
「はいっ!」
セトを構える。
『マスター、イキマスヨ』
「だから急に喋るな!」
踏み込み。
喉元へ。
セトを振り抜く。
『オミゴトデス、マスター』
「だからそれ!」
最初こそ驚いたその声にも、ツッコミはすれど
もう体は冷静に反応するようになっていた。
ドサリ、と倒れる魔物。
「……終わったか」
「いいえ、まだです」
「まだ!?」
レーヴァが森の奥を見ている。
そこにはさらに、
複数の気配があった。
「マスター」
「うん」
「ここからが“効率的なレベル上げ”です」
……どうやら、
僕の平穏な冒険者生活は終わったらしい。
――――――
その日から数時間。
僕はようやく理解した。
レーヴァの言う“効率的”とは、
- 魔物を見つける
- 戦闘不能寸前まで削られる
- 最後だけ僕が仕留める
その繰り返しだった。
「マスター、次です」
「休憩って概念ある?」
「ありません」
即答だった。
セトがぽつりと呟く。
『マスター、コレハチョット……キビシイデスネ』
「お前もそう思うのか」
『ハイ、ワタシモスコシツカレマシタ』
剣に同情される状況って何だ。
そして夕方。
ギルドの記録ではありえない量の魔物を討伐し、
僕たちは街へ戻った。
「……これ、普通の新人がやる量じゃないよな?」
「効率的です」
レーヴァは満足そうだった。
僕は何も言えなかった。
ただ一つだけわかったことがある。
この先、
絶対に楽にはならない。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
効率よく強くはなっています。
効率よく心も折れそうです。
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色々間違えて次話を先に投稿してしまったので、こちらも投稿。




