16. 駆け出し冒険者の実情
冒険者生活、順調です。
順調すぎる気もします。
その日の夕方。
採集した薬草を抱えて、
僕たちは冒険者ギルドへとやってきた。
「お帰りなさい、マコトさん。初クエストお疲れさまでした」
受付にいたタニアさんが、
いつもの営業スマイルで迎えてくれる。
「これ、薬草です」
そう言ってカウンターへ薬草を置くと、
タニアさんの表情が固まった。
「……え?」
「え?」
「これ、全部ですか?」
「はい」
沈黙。
タニアさんは薬草の山と僕の顔を交互に見比べる。
「初回でこの量は……多いですね」
「そうなんですか?」
「普通は慣れないうちは半分も集まりません」
……あれ?
「しかも状態もかなり良いです……
根を傷つけず、葉もほぼ無傷……
採集の教本に載せたいレベルですね……」
……あれれ?
横を見る。
レーヴァが誇らしげに胸を張っていた。
お前か。
「と、とても優秀です。
追加報酬査定に回しますね」
そうして受け取った報酬は、
想定よりかなり多かった。
「薬草採集ってこんなに儲かるの?」
「いえ、普通はここまでいきません」
ですよね。
――――――
その日以降。
僕たちは順調にクエストをこなしていった。
薬草採集。
素材採取。
配達依頼。
荷運び補助。
そして――
「マスター、右です」
「はいっ!」
森狼との戦闘。
森狼の喉元へ、
セトを突き立てる。
『オミゴトデス、マスター』
「うおっ、急にしゃべるな!」
最初こそ驚いたが、
今ではだいぶ慣れてきた。
ドサリと倒れる魔物。
「お見事です、マスター」
……ちなみに、
脚はレーヴァが綺麗に斬り払って動きを止めていた。
ゴブリン討伐でも。
「マスター、今です」
「せいっ!」
レーヴァが吹き飛ばしたゴブリンに
とどめを刺すだけ。
僕の仕事、
最後だけでは?
とはいえ、
おかげで少しずつ戦いにも慣れてきた。
レベルも順調に上がっているらしい。
ギルドでの評価も上々だ。
……まあ、
半分以上はレーヴァのおかげな気しかしないが。
――――――
そんな日々を過ごすうち、
スタットの街にもだいぶ慣れてきた。
朝はレーヴァに起こされ。
着替えを用意され。
朝食を食べ。
クエストへ向かう。
帰れば湯の支度が済んでおり、
着替えや明日の準備まで整えられている。
「……これ、僕必要?」
「はい?」
「いや、なんでもない」
危ない。
口に出してはいけないやつだった。
後日、ガンツ工房へ受け取りに行った装備は、
どれも驚くほど身体に馴染んだ。
「やはりマスターには良い装備が似合います」
レーヴァが嬉しそうにそう言うので、
悪い気はしない。
……悪い気はしないのだが。
「このままだと、
僕、本格的にダメにならない?」
「ご安心ください。
マスターのお世話は私の喜びです」
満面の笑みで言われた。
ダメだこれ。
矯正する側がその気ゼロだ。
そんなある日、
クエスト帰りの宿で。
「マスター、
そろそろ次の段階へ進みましょう」
レーヴァが真剣な顔で言った。
「次の段階?」
「はい。
スタット周辺での経験は十分積めました。
次はより効率よく、
レベルを上げるべきです」
その目は、
どこか楽しそうに輝いていた。
……なんだろう。
ものすごく嫌な予感がする。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
冒険者としては順調です。
たぶん、人としては少し危ういです。
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明日も20時頃に更新予定です。




